オフィスやマンションのエントランスなどで最近見かけるようになった顔認証を、交通系決済や買い物などの代金決済までに広げる構想が動き出している。手掛けるのは、8月に設立したばかりの「DXYZ(ディクシーズ)株式会社」。DX推進支援や関連システム受託開発事業を担う一方、重点事業に顔認証を位置づけている。
DXYZは、不動産事業で知られるプロパティエージェントのグループ会社。社内のデジタルトランスフォーメーション(DX)に注力し、売上高年間ベースで20~30億円規模に結びついたほか、年間想定1億円規模のコスト削減効果が見られたことを受け、ここで培った知見やノウハウを企業(Company)、マンション(Condominium)、街(City)の「3つのC」に活かすために立ち上げた。
「顔認証については、自社オフィスに導入してみて、格段に便利になったと実感している。これは前のシステムには戻れないなという感覚。周りを見ても、駅の改札や宅配ボックスなど、顔認証を採用するケースが増えてきた。しかし、いずれもオフィスやマンションなど、使い勝手は限定的。一度顔を登録してしまえば、オフィスでもマンションでも同じ認証で通れるような仕組みにならなければいけない」とプロパティエージェント 代表取締役社長兼DXYZ 代表取締役の中西聖氏は話す。
DXYZが推進する顔認証IDプラットフォーム「FreeiDプラットフォーム」は、スマホアプリから登録した顔を、顔認証IDとしてクラウド上で登録管理。オフィスの入退館管理はもちろん、将来的には、交通系決済や買い物などの代金決済にまで広げ、最終的にはMaaSインフラとなるべく事業展開を進める。
現在、顔認証にはいくつかの企業が参入しており、それぞれが個別のエンジンを用いて認証、登録をしている。FreeiDプラットフォームではこれらのエンジンを集約し、いずれのエンジンで登録したデータも扱えることが特長。「顔認証のエンジンを持っていないことが私たちの最大の強み。導入先を探すのではなく、プラットフォームになる」(中西氏)と違う視点から顔認証ビジネスを捉える。
目の前の課題は、アライアンスの強化だ。すでに小売店、飲食店、交通などの企業と水面下での協業を進める。「不動産と移動を結びつけるのが目標。移動関連の企業とは積極的に協業していきたい」と積極的にパートナー探しを続ける。
一方で、監視カメラシステムや入退室システム等のセキュリティソリューションを提供するセキュアは、DXYZへの出資も検討しており、セキュアが運営する未来型無人化店舗「SECURE AI STORE LAB」では、実証実験という形で顔認証による決済システムも導入済みだ。「実証実験ということもあり、使える人は限られているが、顔認証で入店し、そのまま商品を手にとって、出てくる買い物を体験できる」(中西氏)と未来の店舗を先取りする。
「小売店やレストラン、交通などが顔認証でつながることによって、将来的にはレストランに入ると外食の履歴からその日の料理をおすすめしてくれたり、食事が終わるころには帰宅用のタクシーが店の前まできていたりと、データビジネスにもつながる。ただし、プライバシーの問題からどこまでをつなげるのかは、実際にやってみながら探っていく感じになると思う。お客様が『いやだな』という感情を抱かないようにデータビジネスにつなげたい」(中西氏)とする。
社名のDXYZとは、デジタルトランスフォーメーションをさらに先まで見据えるという思いが込められているとのこと。中西氏は「顔認証については賛否両論があるが、5年後には顔認証が一般的になる世の中を目指したい」とした。
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