神戸市は、先進的な技術の活用で社会課題を解決する「Be Smart KOBE」で採択された「ARを利用した新しい情報インフラの実証実験」に向けた最初の取り組みとして、ARグラスを利用した地図情報共有サービスを体験するデモを市職員向けに実施した。近い将来、ARグラスが一般で利用される時代を見越して、市役所の業務で新しい情報インフラを活用する方法について、アイデアや意見を検討してもらうことが目的だ。
デモの内容は、神戸市の三宮駅周辺の3Dマップを俯瞰しながら歩いてみたり、建築予定の建物を重ねてみたり、屋外広告を実物と同じサイズで確認したりする体験ができるもの。モードを切り替えて、同じ3Dマップ上に災害時の避難情報や被災状況を表示したり、リアルタイムで情報を更新したりできることなどが説明された。
Be Smart KOBEにアイデアが採択され、今回のデモを実施したU.代表取締役の瀧大輔氏は「ARにはさまざまな活用の可能性があり、実用化に向けては行政の協力が不可欠になる」と語る。
「ARは実社会のデータを利用するため、情報インフラとして活用するには使用する場合のルールづくりなどがこれから必要になる。実際、今回のデモに使用した3Dマップは神戸市が公開しているオープンデータを元に作成している。海外ではシンガポールやフィンランドが政府主導で都市のバーチャルデータ化を進めているが、市が最初のバーチャル都市を目指して動いてもらいたい。そのためにも職員が最新の技術を体験する機会が大事だと考えている」(瀧氏)
デモには、Nrealが開発するスマートグラス「NrealLight」が使用された。2020年内に市販が予定されているデバイスで、見た目はまるでサングラスのようだ。「Oculus Rift 」などのVRゴーグルやマイクロソフトの「Hololens」に比べてもはるかに軽量で、使いやすい。「簡単に装着できて業務で使用しても違和感がないと感じてもらうのも、今回の体験会の狙いの1つ」と瀧氏は語る。
デモ会場には次々と職員が体験に訪れていた。ほとんどの参加者がARを体験するのは初めてで、メガネをかけるだけですぐに使えることに驚く声が多く聞かれた。中にはどのような機能があるかを熱心に質問したり、使い方のアイデアを提案したりする人もいた。
神戸市では以前にも「078kobe」という市民イベントの中で、AR空間を共有できるARクラウドの技術によって、タブレットを使ってバーチャルな神戸の街を参加者たちが一緒に作り上げる「AR City in Kobe」プログラムを実施している。現時点では神戸市が業務でARを活用するかどうかは決まっていないが、デジタル技術の積極的な活用を進めているだけに、今後の動きにも注目したいところだ。
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