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「マンガボックス」TBS出資と合弁会社化の狙い--映像制作の知見も入ったマンガ作り

佐藤和也 (編集部)2020年07月30日 09時00分
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 ディー・エヌ・エー(DeNA)が展開していたマンガアプリ「マンガボックス」。7月に入って事業を法人化し、さらに東京放送ホールディングス(TBS)が出資。DeNAが株式の51%、TBSが49%を持つ合弁会社として新たなスタートを切った。その経緯と狙いについて、マンガボックス 代表取締役社長の安江亮太氏ならびに、東京放送ホールディングス 事業投資戦略局 事業投資戦略部 兼 赤坂エンタテインメント・シティ準備室の森田博人氏に聞いた。

 マンガボックスは無料マンガ雑誌アプリとして、2013年12月にDeNAが創刊。人気作家の連載作品を読むことができるのをはじめ、独自に編集部を持ちオリジナル作品も展開。アニメ化した「恋と嘘」や、ドラマ化した「ホリデイラブ」など人気作品も創出。2019年9月時点で累計1500万ダウンロード、1週間の閲読数は1000万となっている。

「マンガボックス」
「マンガボックス」

DeNAが求めた「マンガIPのメディア展開」、TBSが求めた「コンテンツの強化」

 安江氏はアプリ開発とともに、創刊時の編集長だった樹林伸氏から引き継ぎ2代目編集長となり、マンガボックスに関わる責任者として従事。今回の法人化、そしてTBSとの合弁事業として展開する背景として、「これまで6年以上運営するなかで、DeNAだけでできることはやってきた。マンガにおける『作る』『販売する』『拡大させる』というバリューチェーンの流れを考えるなかで、DeNA単体において、拡大させるというメディア展開については、知見とノウハウに乏しいところがある。そこを補えるパートナーを探していた」と語る。

 森田氏は、TBSにおける事業投資や業務提携を手掛けている部署の担当部長として従事。森田氏は出資の背景について、TBSグループの戦略として、2020年中期経営計画にコンテンツ強化を掲げていることを踏まえ「メディアが多様化していくなかで、オリジナルIPを開発し、それを海外も含めて幅広くビジネス展開をしていくことが事業投資戦略上で重要と考えている。それを踏まえると、IPに対して主体的に関わっていくことが必要になってくると考えた」と語る。2019年の秋ごろに雑談ベースで話しをしたところから始まり、後にマンガボックス法人化の話があったことから具体的に検討を開始したとしている。

東京放送ホールディングス 事業投資戦略局 事業投資戦略部 兼 赤坂エンタテインメント・シティ準備室の森田博人氏
東京放送ホールディングス 事業投資戦略局 事業投資戦略部 兼 赤坂エンタテインメント・シティ準備室の森田博人氏

 森田氏は、電子書籍市場において約8割をマンガが占めている状況にあること、そのシェア8割という状況が続いていくものと推察していることを踏まえ、電子書籍市場の拡大にあわせて、電子マンガ市場も右肩上がりの状態が続くという考えを示す。一方で、プレイヤー(参入事業社)が多数存在し、競争が激化している市場でもあると、必ずしもブルーオーシャンの世界ではないという見方も付け加えた。

 TBSとしてマンガボックスに感じているポテンシャルについて、森田氏は「コンテンツIPの創出や開発には、ITスキルを持ちながら行っていくことも重要な時代に差し掛かっている。マンガボックスは出版社との協調しながらアプリ事業を展開しているだけではなく、編集部を持ってIPを開発しているということや、ITスキルを駆使してデータベースマーケティングを行っていることが魅力的。そしてオリジナルIPの開発力は、海外に展開できるだけの力も秘めている。それができる編集部を自前で持っていることが強み」と語った。

新会社でできる映像化に長けた知見も踏まえてのマンガ作り

 安江氏は、電子マンガ市場の環境として、2013年から2014年にかけて、無料で読めるマンガアプリが勃興したのを発端に、スマートフォンで漫画を読む文化が定着。さらに歴史ある出版社が独自にマンガアプリを立ち上げ参入している。また、マンガを単行本単位ではなく1話単位で購入するという、新しい売り方の流れもできたと振り返る。そして現状は群雄割拠の状態にあるとしている。

マンガボックス 代表取締役社長の安江亮太氏
マンガボックス 代表取締役社長の安江亮太氏

 そんな電子マンガの課題としてバリューチェーンの源流となる「作り方の革命」が必要になってきていると指摘。マンガ制作の過程においてはまだまだアナログな部分が多くあるとし「デジタルの活用で一気通貫に、もっと制作がやりやすい環境にしていくのも大事。さらには、マンガ作家さんにより良い環境を整えていくことも求められていく」と語る。

 安江氏は「マンガアプリの最終的な差別化要因は、そのアプリだけで、あるいはそのアプリ先行で読むことができる面白い作品があることに尽きる。今回の法人化ならびに合弁会社化によってコンテンツの強化ができる。これからの時代に受け入れられる作品を届けられるかどうか。それが最終的な読者さんの満足度を上げることにつながる。その可能性が上がったと言える」と話す。その可能性を上げるポイントとなるのは、TBSのドラマやアニメのプロデューサーやディレクターなどと、コミュニケーションを取りながら作品作りをできることにあるという。

 これまでもマンガ作品が、アニメやドラマなどの映像化によって単行本の売り上げが激増したなど、認知度向上に寄与した事例は少なくない。安江氏は「今はマルチメディア展開を前提にIP開発をすることも求められる」と話す。そして作家と編集者だけではなく、映像化に長けたスタッフが見据えるターゲット層やテーマなどの知見も踏まえ、ゼロから議論しながら創出していくことが新しいマンガボックスの強みにもなるという。森田氏も、映像制作サイドがマンガ作りに関与していくことは、新しい刺激にもなり、クリエイティビティに対してプラスになるとしている。

 なお、両者ともに口をそろえていたのは、既存の出版社の存在を否定するものではなく、市場拡大に寄与するということ。安江氏は「作品をお預かりして販売している立場であり、文化を作り上げてきたことに対してのリスペクトが根底にある。歴史ある出版社だと変えにくいところもあるなかで、新しいプレイヤーが取り組みなどを提案してよりよくしていきたい。そういった気持ちで出版にかかわっている」と話す。

 また森田氏も「TBSがマンガ業界、出版業界に乗り込むというスタンスではない。電子マンガビジネスに参加することで、どういうマンガが流行っているのか、出版社さんのどの作品が支持されているかを、よりアンテナ高く知ることができるいい機会。そうすれば出版社さんとも、映像化や新しい企画を相談させていく機会も増えていく可能性が高くなる。より協調してマンガ市場を盛り上げていくことができれば」と語った。

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