日本電気(NEC)と共同商事 コエドブルワリーは7月15日、クラフトビール「人生醸造 craft」を開発したと発表した。
人とAIの協調による世代間コミュニケーションの促進を目的に、トレンドを反映する雑誌記事をAIで分析し、20代、30代、40代、50代の世代の特徴を表現した。ビールの各パラメーターを提示してビール職人がレシピを開発し醸造したもの。各350ml缶を4本セットにして1400円(税別)にてコエドビールオンラインショップで販売を開始している。
この企画は、NECがAIによる味覚予測シリーズとして、名作文学の読後感をAIで分析しコーヒーの味わいで再現したブレンドコーヒー「飲める文庫」(2017年発表)、2018年の新聞記事をAIで分析しその時代のムードをチョコレートの味わいで再現した「あの頃は CHOCOLATE」(2018年発表)に続く第三弾商品。あの頃は CHOCOLATEでコラボレーションしたダンデライオン・チョコレート・ジャパンが、コエドビールとコラボレーションビールを作っていたつながりから話が進んだという。
人生醸造 craftの開発には、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」を用いている。人生を表すデータとして、小学館が雑誌データを提供した。分析対象の雑誌は、「CanCam」「Oggi」「Domani」「Precious」「DIME」「BE-PAL」「女性セブン」「週刊ポスト」の過去約40年間に発行された記事だ。
ファッション画像や文章を分析することでクラフトビールを楽しむ順番として一般的な「色・香り・味」の3ステップを数値化し、ビール職人が20〜50代の4世代の特徴を4種類のクラフトビールとして表現した。
まず色は、お酒を飲み始める20代の頃に発行された雑誌の画像を参考に表現した。画像処理AI技術を活用し、ファッション画像を学習データとして取り込んで服のイメージ画像を生成。これをもとに、時代のトレンドカラーをクラフトビールの色として職人が表現したという。「人生醸造craft ~40’s YELLOW~」では、40代が20代の頃(1991年~2000年)に発行された雑誌CanCamのファッション画像を利用して色を導き出した。アースカラーや草黄色がはやっていた時代とし、当時の服装の色を液色に反映。ナチュラルなクリスタルヴァイツェンの色となっている。
香りは、各世代の20代から現在までの中間となる10年間に発行された雑誌の文章を参考に表現した。自然言語処理AI技術を活用し、単語の意味情報を取り込んで学習データとした上で、文章に登場する意味が近い単語の発生割合に応じてフルーティー、キャラメル、フェノールなどの香りを数値化した。
人生醸造craft ~40’s YELLOW~では、40代が30代の頃(2001年~2010年)に発行された雑誌OggiとDIMEの文章を利用し、単語を香りに変換した。機能性食品が注目された時代で、科学的(メラニン、イオン、酸化、アミノ酸、有機、発表、色素)といった要素を「フェノール」、オイル、脂肪、ビタミン、コーヒー、ビール、カロリーといったキーワードを「アルコール」に変換し、酵母由来のバナナを思わせるエステルとフェノールが織りなす複雑なアロマのバランスのよいまとまりを特徴とする。
味は、各世代が今読んでいる雑誌の画像を参考に表現した。小学館の担当者が、ファッションテイスト(色の系統・甘め/辛めスタイル・フェミニン/コンサバ系など)と味の指標(甘味・苦味・酸味・ドライ)を紐づけた教師データをもとに、NEC the WISEのディープラーニングAI技術「RAPID機械学習」で、ファッション画像を分析し数値化。これをもとに、クラフトビールの味として職人が表現したという。
人生醸造craft ~40’s YELLOW~は、40代の直近10年(2011年~2020年)に発行された雑誌Domaniの画像を利用し、スカート、パステルカラー、柔らかさといった要素を「甘味」、エスニック柄、個性的、意外性、モード系という要素を「酸味」で表現。酸味と甘みが比較的強いものになっているという。
日本電気 IMC本部 シニアマネージャーの茂木崇氏は、企画背景について「ある新入社員が、『上司や先輩とのコミュニケーションってどうやってとればいいのか』とつぶやいたことがきっかけ。自身も若い人たちとどうコミュニケーションとればいいのか悩むことがある。いかに世代を超えたコミュニケーションを加速できるかが着眼点」と説明。人生醸造 craftは世代間の相互理解に適した商品として、職場内の話題のきっかけ作りや、オンライン飲み会で楽しんでほしいと語った。
小学館は、VOYAGE GROUPの合弁会社、C-POTの設立によって保有コンテンツをデータとして提供できる仕組みをもっており、「NECからの問い合わせがあったとき、大量のデータを提供できる環境が整っていた」(小学館 デジタル事業局 シニアマネージャーの加藤睦美氏)という。
協同商事 コエドブルワリー 代表取締役社長の朝霧重治氏は、NECから話しがあったとき「AIがレシピを考案するのかと思った」と笑う。AIが出したデータをもとに製品を作り上げるのはビール職人だ。NECは、作り手に創作意欲のインスピレーションとなるものを提供し、飲む人には相互理解のきっかけを提供したかったと説明した。
また、朝霧氏は合わせやすい料理について「20's PINKは度数も低く、色合いもピンク色で前菜に合わせやすく、30's BLUEは酸味があるので魚の料理、40's YELLOWは白身の肉や魚、50's REDはアルコール度数も高くモルティなので肉料理に合う」と語った。
なお、NECグループがオンラインにて開催する「NEC iEXPO Digital 2020」(会期:7/13(月)~7/17(金))において紹介する予定だ。
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