Bowery Farmingは、システムが読み取ったデータや作物を監視するカメラの画像、最終的な収穫高に関するデータを取得し、農場の頭脳として司る「Bowery Operating System」に入力する。このシステムでどんな情報が処理されるのかについては(作物に与える栄養素から、同社が栽培を追跡するために使用していると話す「機械学習」まで)、ほとんど教えてもらえなかったが、最終的な目標は、農法をきめ細かく調整して収穫高と味を最大限高めることだ。
「われわれは常に、さまざまな作物でさまざまなレシピを模索し、繰り返し、そして検討する作業を行っている。あのルッコラは、もう少しピリッとした味を利かせた方がいいかもしれない。あのわさびルッコラはもっと辛くした方がいいかもしれない。あのバターヘッドレタスはもう少しまろやかに、あるいはもう少し苦くした方がいいかもしれない。そうしたことが、さまざまな変動要素を調整することで、可能になる。さらに、機械学習を使えば、それをまとめて実行できる」(Fain氏)
なぜだか分からないが、この種の無菌環境で栽培された食料は味気ないはずだ、と思い込んでいた。しかし、それは誤解だった。
Bowery Farmingの作物を同社の倉庫内で試食させてもらったが、バジルはちゃんと香ばしく、わさびルッコラもしっかり辛味があった。そう感じたのは、機械学習と、細かく調整された作物のレシピのおかげか、あるいは、真っ白な部屋で1時間過ごしたせいで刺激に飢えていたのと、昼食時間をとっくに過ぎていたからかもしれない。いずれにせよ、筆者は喜んでこれらの野菜をサラダに入れて食べるだろう。
同社によると、2050年までに、世界人口に食料が行き渡るためには、今より70%多くの食料が必要になるのだいう。これまでよりも少量の水しか必要とせず、農薬を一切使用しない年中無休の農場で栽培することで、同じ面積の従来型農場と比較して生産性を100倍向上させ、増え続ける空腹の消費者たちへの食料供給に寄与することができるという。
Bowery Farmingが栽培する作物を何十億もの人々に供給できるようになるのは、まだまだ先の話だ。同社は現在、ベビーケールやチンゲンサイなどの葉物野菜を、約130gのパックにして生産し、1つあたり3.99ドル(約430円)で、ニューヨーク州、ニュージャージー州、コネチカット州の一部の食料品店で販売している。これは、必ずしも、世界中の何十億もの人々に食料を行き渡らせるという問題を解決するものではない。特に、水不足と貧困の影響を最も受け、生き延びるために食料を必要とする人々を、辛いルッコラだけで救うことはできない。
だが、世界は水量の確保と気候変動に関して、ますます多くの問題に直面しており、従来の農地は干ばつに直面し、都市はかつて農業用地だったところにまで拡大している。そうした状況を考えると、Bowery Farmingのような近未来的な農場が、変化するニーズにいかに対応していくのかは、容易に見て取れるだろう。土を耕す必要はないのだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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