Preferred Networksが教育事業に参入--プログラミング教材を独自開発、海外展開も

 Preferred Networksは7月6日、プログラミング教材「Playgram」を発表した。やる気スイッチグループと提携し、プログラミングパッケージとしてオンライン授業に加え、首都圏3教室で対面事業を8月より実施する。

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「Playgam」の使用風景

 これは、ビジュアルプログラミングの要素を兼ね備えつつ、実践的なテキストコーディングまでをカバーする小学生向けのプログラミング教材。ゲーム仕立てとなっており、3Dキャラクターをプログラミングで動かすことで、ミッションをクリアしていく。米国のコンピュータサイエンス教育のガイドラインである「K-12 Computer Science Framework」を参考に、PFNのエンジニアが開発。これに、やる気スイッチグループが持つ指導メソッドを組み合わせることで、アプリ開発に生かせるスキル、課題解決能力、想像力を身に着けられるという。

 Playgramには「ミッション」と「クリエイト」の2つのモードを実装する。ミッションは、コンピュータサイエンスの基礎を学ぶためのもので、ストーリーに沿ってスキルを習得する。まずは、キャラクターを2歩進ませる」といった簡単なミッションから始まり、障害物を避けて移動するなど難易度が上がっていく。ステージをクリアすると点数が表示され、使用した電力やブロック数、実行回数などを表示。タイムアタックモードも搭載する。クリエイトモードは、ミッションで学んだスキルを生かして自分だけの空間が作れる。例えば、3D空間上の家に窓やドアを足していったり、キャラクターのロボットの動きをプログラムし、ミニゲームを作ることも可能だ。

 また、学習データから一人ひとりの得意や苦手分野を見抜き、学習状況を「見える化」してリアルタイムで共有。生徒がつまづきそうなポイントを細かくフォローしつつ、生徒の理解度に応じて学習内容をカスタマイズ可能なため、プログラミング経験のない講師・保護者でも理解度を把握でき、スキル差に左右されず適切な学習指導が可能という。

 そして、Playgram最大の特徴がビジュアルプログラミングの課題としてあった、テキストコーディングへの移行に配慮している点だ。Scratchなどと同様、モジュール形式でプログラムを組み立てることができるが、まず日本語で説明されたブロックが用意され、理解度に応じて次のステップとして関数が書かれたブロックが用意される。これまで組み立てたブロックがテキストコーディングだとどういった関数で書かれるかを体感的に学習でき、最終的にはPythonのテキストコーディングに移行できる。

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ブロックを組み立てるビジュアルプログラミングからテキストコーディングまでの橋渡しをサポート

これまでのITは「大工」、これからのITは「庭師」

 PFN代表取締役社長の西川徹氏は、コンピュータサイエンスを「さまざまな専門分野を結びつける糊のようなもの」と定義。さまざまな事業の核を支える存在となり、産業活性化や実社会の課題解決につながると主張する。こうしたコンピュータサイエンスを支えるIT人材だが、国内は「大工」と「庭師」に二極化されていると同社フェローの丸山宏氏は語る。

 大工とは、伝統的な日本企業のIT人材で、請負契約でシステムを構築するシステムインテグレーターなどがそれに該当する。試験問題や給与計算など、正解があるシステムを組むのを得意とする。分析的な思考や綿密さ、設計図通りに完成させるスキルが求められる。一方で、庭師とはGAFAやスタートアップなど、ビジネスをゼロから構築し、正解がない課題解決を目指す人材を指す。例えば、作文やアプリ、“withコロナ”時代の社会の在り方などが問題として設定される。こういう人材に必要な能力、動機付け、発想力、イマジネーションを生み出すことが求められる。Playgramは、庭師を育てるためのプログラミング教材といえる。

 西川氏は、小学校でのプログラミング教育の義務化を「中長期的に社会全体のリテラシー向上につながる」と評価しつつ、教員や親などが持つスキルの差によってプログラミングの魅力がうまく伝わらず、興味を失う子供が増えてしまう可能性があることに懸念を示す。「本来プログラミングはワクワクするものだが、教育にしてしまうとイマジネーションが失われてしまうかもしれない」(西川氏)

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PFN代表取締役社長の西川徹氏

 こうした教える側のスキル差を解消し、プログラミングへの興味を喚起しつつ最大限にスキルを習得できるツールとして、Playgramを開発した。同社は、深層学習で多くの実績を持ち、プログラミングコンテストのトップランナーや、プログラミングが好きなメンバーがそろっている。すでに、大学、大学院、社会人向け教育プログラムを開発しており、文部科学省の初等教育向け深層学習体験教材なども提供した実績を持つ。こうした下地を生かし、Playgramはすべて自社開発している。

 プログラミング教材は、すでに多種多様なものが存在し、ゲーム要素があるものとしてMinecraftなどもある。こうした先行プレーヤーとの差別化について、開発を担当した西澤勇輝氏は「(一般的なプログラミング教材は)教材の中で完結してしまう。MinecraftやScratchも外に出ようとすると別の教材が必要。Playgramはうまく橋渡しできる教材として、テキストコーディングまで進められる」と説明する。また、「プログラミング以外にも、アルファベットがわからないなど見えないハードルがある。やる気スイッチグループと協力しながら、実践力をつけてもらうような教材を目指す」と語る。

 西川氏も「プログラミング教育は徹底的なカリキュラムや方法論がまだない。現時点で算数ほど成熟してる分野でもない。そこに差別化の余地があると考える」と指摘。今後もPFNが得意とする深層学習を組み込んだり、AR/VR、IoTといった最先端技術が学べるプログラミング教育プラットフォームに拡充する予定で、PFNの一つの柱として将来的には海外展開も視野に入れる。

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