医療テクノロジーベンチャーのCureAppは6月19日、これまで開発してきた「ニコチン依存症治療用アプリ」の薬事承認が了承されたと発表した。今後夏をめどに正式に薬事承認され、2020年内にも保険適用がされる見通し。
疾患治療のために医師が患者に処方する治療用アプリは新しい治療法として国内外で注目が高まっており、すでに海外では治療用アプリが国の承認を得て保険償還されるかたちで実際に処方をされ始めている。
ニコチン治療症治療アプリの薬事承認が部会で了承されたことによって、国内でも初の治療用アプリが誕生したことになる。また禁煙での治療用アプリおよびCOチェッカーの薬事承認の了承は世界初という。
CureAppは、2014年から慶應義塾大学呼吸器内科とともにアプリとCOチェッカー(IoTデバイス)で遠隔禁煙治療ができるソリューションを共同研究・臨床研究し、保険償還の適用に向けて治験を進めてきた。
2018年末に治験が完了、薬事申請を行っていたが、6月19日に行われた厚生労働省部会の「薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会」において、本アプリの薬事承認が了承された。
ニコチン依存症は、薬物依存症の一つで、その依存性の強さはヘロインやコカインなどの麻薬と同程度とされる。ニコチンに対し「身体的依存」と「心理的依存」があり、離脱症状を伴う身体依存には禁煙補助薬が有効だが、従来の禁煙治療では診察時以外に医療者がニコチンの心理的依存に治療介入することは難しく、患者は孤独な戦いを強いられるという課題があった。
この治療空白を埋め、日々の患者をサポートするのがニコチン依存症治療アプリだ。患者の生活習慣や重症度などに合わせ、抱える衝動に対しどのようなアクションを起こせばよいかをアドバイスする。
病院外にいる“空白の期間”にはアプリと呼気CO濃度を測定できるIoTデバイスを通じて日々の経過を測定。個々に応じた適切なフォローをし、継続意欲が持続するように促すことで、治療効果を高める。
医学的エビデンスに基づいたリアルタイム自動ガイダンスは、ソフトウェアによって標準化することで、大学病院から小規模なクリニックまで、どこでも質が担保された治療が受けられるのもメリットの一つだ。
CureApp 代表取締役社長 兼 医師の佐竹晃太氏は治療用アプリについて、「人の考え方や行動に焦点をあて、行動変容することで効果を出すことがポイント」と説明する。
また、費用面でもメリットがあるという。「新薬の開発は最低でも1000億円以上必要と試算される一方で、治療用アプリの開発は、数億から数十億にすぎない。遜色ない効果ながら、開発費は10分の1以下。高い新薬が出ているが、アプリは医療費を適正化する価値を持っている」と説明した。
CureAppは「アプリで治療する未来を創造する」をビジョンに治療アプリの開発に取り組んでおり、高血圧や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)などに対する治療アプリの開発も進めている。
【お詫びと訂正】
掲載当初、「薬事承認された」としていましたが、正式には「薬事承認の了承」でした。訂正してお詫び申し上げます。
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