疾患治療用プログラム医療機器として「治療アプリ」の研究開発を行うCureAppは1月31日、高血圧に対する「治療アプリ」の第3相多施設共同無作為化比較試験(治験)を国内で開始したと発表した。
自治医科大学を含む、全国12箇所の施設で、降圧薬による内服治療を受けていない患者を対象に治療アプリの有効性と安全性を評価する。高血圧の世界的権威と言われる自治医科大学 内科学講座循環器内科学部門 苅尾七臣教授らとの共同研究によるもの。
「高血圧治療ガイドライン2019」に沿った生活習慣の修正に加えて治療アプリを使用する群と、ガイドラインに沿った生活習慣の修正のみを行う群の2群に分け比較検討する。
主要評価項目は、治療開始後12週時点における自由行動下血圧測定(ABPM)による24時間の収縮期血圧の平均値のベースラインからの変化量。
医療従事者がアプリのダウンロード方法を教え、処方コード(パスワード)を発行する。アプリに処方コードを入力すると、病院と連結したシステムを利用できるしくみだ。また、Bluetoothで連携できる血圧計やIoT血圧計などを用いて血圧をモニタリングする。
患者は、次の病院にいくまでの間、治療アプリで日々の体調を記録するとともに、朝起きてから寝るまでの間、通知機能などを用いて適切なタイミングで医学的エビデンスに基づいた生活指導のアドバイスを受けることで、生活習慣を修正し継続できるようにする。病院にいる医師は、クラウドを介して得たデータを確認すると患者の血圧データやどのような生活をしてきたかがわかるという流れだ。
高血圧の診療は通常3分~5分程度といい、限られた外来の時間だけでは十分な指導が難しいのが現状だ。治療アプリを併用することで、診察の効率化と質の向上も期待できるという。
CureApp 代表取締役社長の佐竹晃太氏は、「アプローチはハードウェアでなくソフトウェアを使ったもの。キーワードは行動変容。患者の考えや行動を変容することで治療効果を出そうというのがポイント」と説明する。
世界的にもアプリを活用した治療に関する関心が高まっており、メジャーな医学雑誌にもエビデンスが紹介されるようになっているという。「ソフトウェアの価値が認められつつあるだけでなく、2014年に行われた未薬事法改正により法的な整備も整ってきている」(佐竹氏)
なお、治験では、3カ月をめどにガイドラインに基づき薬物療法を開始するかどうかを評価するという。
高血圧は脳心血管病(脳卒中や心疾患)最大のリスク因子であり、高血圧に起因する脳心血管病死亡者数は年間約10万人と推定されている。
日本国内における高血圧患者の推定人口は約4300万人とされ、そのうち適切に血圧がコントロールされているのは、1200万人にとどまる。また年間では約1.9兆円の医療費がかかっているが、治療用アプリは医薬品と比較して、費用対効果の高い治療が期待できると説明した。
治療用アプリの薬事承認・保険適用までのプロセスは、通常の医薬品と同レベルの臨床試験をし、保険適用を目指す。
日本ではアプリの薬事承認の事例がまだない。佐竹氏は「新しい産業におけるひとつの課題。一般的にはアプリだから安いでしょうという偏見がある。しかしながら、医薬品と同等以上の効果、副作用がなく届けられる価値がある。米国の糖尿病治療用アプリでは、月1万円の保険償還の事例がある」とし、デジタル医療の社会実装と産業発展のため、適切な保険収載が必要だとした。
なお、高血圧治療用アプリの開発を進める企業はいくつかあるが、薬事承認を目的とし、かつ2試験目のアプリの治験を開始しているのはCureAppのみで、グローバルでも初としている。
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