エバーブルーテクノロジーズは6月11日、ヨット型ドローンの実証機「Type-A」の開発において、海上での自動操船と長時間自律航行に成功し、サービス開発に着手したと発表した。
同社は、従来の動力船を自動操船技術による効率的な自動帆走に置き換えることで、地球温暖化ガスを抑制し、持続可能な社会の実現に貢献することをミッションとしている。
近年、あらゆる産業で地球温暖化防止のための施策が求められているが、海上を舞台とする産業ではいまだ内燃機関が主力であり、決定的な方策が打ち出されていないと同社は指摘。また、陸上交通の電動化による将来的な電力不足も予測される中、国土の狭い日本では太陽光発電による電力供給に限界があることから、波力、潮力、地熱、風力といった海上の再生可能エネルギーの活用が注目されていると説明する。
しかし、海中送電ケーブルの敷設コストの高さや、動力船を電気推進船に置き換えるための大型バッテリー積載容量、重量、充電時間確保といった問題があり、海上の再生可能エネルギーの活用も現実的ではないという。また、一部では水素を使った燃料電池の活用が有望といわれているが、そのためには低コストで水素を大量に用意する必要があり、実現には時間がかかると考えられている。
同社では、このような課題の解決策として帆走に着目。海上の再生可能エネルギーを水素に変換し、自動操船ヨットで運搬することにより、海上水素サプライチェーンを構築し、動力船をゼロエミッションの帆船または、電気推進船に置き換えていく未来を目指すという。
こうしたビジョンのもと、2019年より全長1mクラスのRCヨットモデルを改造した実証機での自動操船実験を開始。実証テストでは、(1)制御ソフトウェアを使ってあらかじめ経由地を複数設定し、ルート通りに自動航行が可能であること、(2)葉山港〜江ノ島間の約7kmを自然風のみで自動航行、(3)日本近海全域をカバーする商用4G/3G回線を使い、クラウドサーバー経由での遠隔監視、制御、操作という3つについて確認した。
今回の実証テストに使用したType-Aは、漁業支援や海洋探査といった実運用を想定したモデルとして開発した全長2mクラスの帆船型ドローン。ソナーを標準装備するほか、各種IoT機器の搭載を可能にするため、独自にデザイン・設計・製造されているという。
実施エリアは、神奈川県逗子市の逗子海岸。海上に設定した2カ所の経由地を半径5mの範囲で経由し、帆走と補助モーターを利用して自動でスタート地点に戻るマニューバビリティテストを実施した。同社は実証テストの成功を受け、漁業分野で魚群状況の無人モニタリングによる後継者不足と労働力不足の解決を目指す。また、海洋調査分野での活用に向けては、水温、潮流センサーなどを搭載し、無人調査を行うことを想定した、量産機の開発を予定。
なお、実証実験で証明された航行距離から、帆船型ドローンが離島や半島間の渡船用途にも適していることが確認されたことから、2人から6人乗りの無人自動帆船海上タクシーの開発も計画している。操縦者が搭乗せず、自然風のみで運行できる無人自動帆船は、運用コストが低く、燃油代と人件費でやむなく廃航路となった地域での航路復活も可能にするという。
今後は、自動操船ヨットの製造販売、サービス提供、自動帆走技術提供などを主な事業とし、カーボンフリーな世界の実現を目指すとしている。また、将来的には海上の再生可能エネルギー、潮力、波力、風力由来の電力を使用して水素を製造し、エネルギー消費地へ自動運搬する水素エネルギーサプライチェーン「Hydroloop(ハイドロループ)」の実現を構想しているという。
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