IBMは米国時間6月8日、汎用の顔認識テクノロジー市場から撤退することを明らかにした。同社は、このテクノロジーが差別や、人種に基づく不当な措置の促進に用いられていることを懸念していると述べている。
最高経営責任者(CEO)Arvind Krishna氏は、議会幹部らに宛てた同日付けの書簡に、「IBMは、集団監視や、人種を観点にした分析、基本的な人権や自由の侵害のほか、われわれの価値観や、信頼と透明性の原則に一致しない目的のために利用される、他のベンダーらによって提供されている顔認識テクノロジーを含む、あらゆるテクノロジーの利用について断固として反対するとともに、その使用を許容しない」と記している。
また、「われわれは、国内の法執行機関が顔認識テクノロジーを使うべきかどうか、そしてどのような使い方をすべきかについて、国家的な対話を始める時がきていると確信している」としている。
顔認識テクノロジーはプライバシー擁護者や議員の反発を招いており、一部の都市では市当局がこのテクノロジーを使用することを禁じている。それでも、顔認識は空港やショッピングセンターで普及が進んでおり、この技術を警察に提供している企業もある。
批評家らは、女性やマイノリティーを対象にした場合、顔認識テクノロジーは精度面に難があるという研究結果を引き合いに出している。また、意図通りに機能した場合、回避できない侵略的な監視手段になる可能性があるとしている。インターネットから取得した写真と顔を比較して人物を特定できるようにするテクノロジーを有するClearview AIのような企業が、このテクノロジーの持つ力に対する懸念を引き起こしている。
IBMは顔認識の規制に強く賛同しており、害を与える可能性のある利用に制限を加えつつ、イノベーションを生み出していくことは可能だと述べている。IBMは2019年3月、クリエイティブ・コモンズライセンスの下で共有されている「Flickr」の写真を使い、人工知能(AI)による顔認識システムの訓練をしたとして議論を巻き起こしていた。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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