検索したとき「あなたの情報」は出てくるか?--リモート環境で信頼されるための鍵

角 勝(フィラメントCEO)2020年06月15日 08時00分

 前回、お話ししていたのはリモートトラスト、つまり「リモート環境で信用を獲得するには」という話でした。早稲田大学ビジネススクールの入山先生との会話を通じて、以下の3つがポイントになりそうだという結論に至った、というところまでお話ししました。

【リモートトラスト構築のポイント】

(1)信頼できる人物からの紹介であること
(2)第三者的な情報源があり、その納得性が高いこと
(3)相手の立場を慮るスマートな優しさが感じられること

 この3項目は、もちろんコロナ以前から重要ではありましたが、フルリモートな状態では、新たな出会いの機会を得ることが困難となるため、信頼の構築に対する重要度が著しく高まっていると感じます。今回は特に重要となる(2)を中心に解説します。

 ここからは僕の仮説ですが、人は、リモート環境だとリアルな対面と比べて得られる情報が限定されるため、他の情報源にある別の情報によって補完しようとする無意識下の挙動が強まるのではないかと思います。

 実際、入山先生もこういうことをおっしゃっていました。「認知情報と違って、感情はリモートでは伝えにくいんです。感情は信頼形成に作用するので一般的には対面の方が信頼を築きやすい、ということは言えるはずです」と。

 得られる情報が限定されている場合、相手を信頼してよいかわからず、判断を保留する場合もあるでしょう。しかし、他の情報源から、リモート環境で欠落した情報を補えるのであればどうでしょうか?欠落した情報が補完され、ビデオ会議の印象と一致するのであれば、リモートでも信頼が構築されやすいということは言えるのではないでしょうか。

 ここで、カギになるのはオンライン上に自分に関する情報が存在しているかどうかという点です。

 前回、我々が実施したアンケートが「テレワーク大全」という書籍に引用された話をしましたが、そこにつながったのは、我が社の新たな試みとしてYouTube番組の配信を行い、それが書籍編集者の方の目に留まったのがきっかけでした。この自粛期間中、僕の会社フィラメントとしても、僕個人としてもSNSをはじめとするオンライン上での発信量を増やしていたので、その結果だと言えるでしょう。

 エゴサーチとも言いますが、あなたの名前で検索した時に、どんな情報が載っていますか?発信内容を本人の信頼につなげるためには実名での発信を意識すべきでしょう。そうすることにより信頼の醸成につながる建設的なものであることを意識するようになります。本人の仕事の実績や能力が伝わるようであればなお良いと思います。

 実名型のSNSを上手に使えば、自らの交友関係を開示し、上記(1)でいう「信頼できる人物からの紹介」についても、リモートで容易となります。そういう意味では、定番の「Facebook」のほか、ビジネス特化型の実名SNS「LinkedIn」などは炎上につながるリスクも少なく、有効でしょう。

 月間利用者数が2000万人を超えるなど利用者が急増している「note」というマイクロブログサービスも、ライトに自分の考えを発信するのに適していますし、講演機会がある方は「Slideshare」などのスライド資料の共有サービスを用いることもお勧めです。僕は、上記のサービスをすべて使って自分の情報を発信しています。

 ちなみに、こちらの写真は我が家の子どもたちの様子です。発信の中にプライベートな事柄も織り交ぜると、人柄や考え方などにも共感が得られやすくなります。もっとも私自身は戦略的というよりも純粋に楽しくてやってるだけですが。

キャプション

 オンラインで自分の名前を検索した時に、仕事の実績、能力、さらには人生哲学や交友関係などを含む自分のパブリックなアイデンティティが第三者との関係性も含めて可視化されている……。そんな状況があればリモートトラストの構築は加速できるでしょう。

 個人が会社の一員として、人間的な魅力にあふれていることを開示することは、所属企業の魅力を増幅し、会社の信頼を増やすことにもつながるはずです。IT企業で増えている「エバンジェリスト」や「デベロッパーリレーション」といわれる役職は、個人としての信頼と企業への信頼を一体的に形成しつつ、社外の関係者のエンゲージメントを増やしていくことが職務となっています。

 また、それは企業戦略のみならず、個人の人生戦略にとってもこれから重要になってくると思います。オンラインで可視化されるパブリックなアイデンティティは、個人としての信頼の土台です。そして、それは会社の外にも持ち出すことができます。個人として信頼の土台を築いて、自分の人生を豊かにしていく、個人の生産性を増やしていくことはテレコラボ戦略の重要な側面なのです。

連載第7回に続く

角 勝

株式会社フィラメント代表取締役CEO。

関西学院大学卒業後、1995年、大阪市に入庁。2012年から大阪市の共創スペース「大阪イノベーションハブ」の設立準備と企画運営を担当し、その発展に尽力。2015年、独立しフィラメントを設立。以降、新規事業開発支援のスペシャリストとして、主に大企業に対し事業アイデア創発から事業化まで幅広くサポートしている。様々な産業を横断する幅広い知見と人脈を武器に、オープンイノベーションを実践、追求している。自社では以前よりリモートワークを積極活用し、設備面だけでなく心理面も重視した働き方を推進中。

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