故人は空に--遺灰をロケットで打ち上げる「宇宙葬」を選ぶ人々 - (page 2)

Abrar Al-Heeti (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2020年06月05日 07時30分

天の祝福

 Celestisの軌道サービスの一環として運ばれる遺灰は、「二次的な貨物」として飛行する。つまり、民間の宇宙会社が別の目的で打ち上げる宇宙船に搭載されるのだ。積載量は小さいので、軌道寿命(数カ月~数百年)の終わりに地球に再突入するときに完全に燃え尽きる。宇宙ゴミを増やさないというCelestisの約束を守るためにも、これは重要なことだ、とChafer氏は話す。

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提供:Robert Rodriguez/CNET

 Celestisはこれまでに、ケープカナベラルやマーシャル諸島、カナリア諸島などから16回の打ち上げを実施した。今後2年間で5回の打ち上げが予定されている。

 「トレンドが加速するにつれて、打ち上げのペースも上がっている」(Chafer氏)

 打ち上げの準備として、技術者たちは、遺灰が入った小さなカプセルを金属スリーブに接着し、次にそのスリーブを打ち上げ機または衛星にボルトで固定する。Celestisは、障害が発生した場合に備えて、飛行させる遺灰の少なくとも2倍の量を送ってほしいと顧客に頼んでいる。遺灰を再飛行させる必要がない場合、同社は予備の遺灰を発射場の近くに散布する。

 愛する故人が宇宙のどこにいるのかを遺族が確認できるように、Celestisはリアルタイムトラッカーを提供している。Joe Rustさんは、よくそのツールを使って、兄弟のAlexさんの遺灰の場所を追っている。Alexさんは2013年に亡くなり、その遺灰もFalcon Heavyで打ち上げられた。数週間前、Alexさんはオーストラリア上空を飛んでいた。Joeさんはスクリーンショットを撮影して、オーストラリアに住む兄弟に送信し、「空を見上げてほしい」と伝えた。

 Alexさんが宇宙葬を望んだことは、彼の生き様を考えれば、意外なことではなかった。Alexさんは2008年にシカゴ商品取引所を退職し、フロリダ州に移住。地域情報サイトのCraigslistを使ってミニバンをヨットと交換し、バハマに向かい、それからの4年間、世界中を航海した。その後、インドに旅行して、そこで腸チフスにかかり、29歳で亡くなった。

 Alexさんは当初、エンジニアであるJoeさんに、自分の遺灰を宇宙に運ぶロケットを作ってほしいと思っていた。それは不可能だったので、Joeさんがほかの選択肢を検討していたところ、Celestisを見つけた。

 「Alexの要求は、ちょっとばかげていると当時は思った」。Joeさんは、そう振り返る。「彼が亡くなるなどということは考えたくなかったし、あり得ないと思っていた。Alexは本当に冒険的な人生を送っていて、常に危なっかしいことばかりやっていたので、私たちは彼のことを不死身だと思っていた」

 2019年の夏に行われたロケットの打ち上げには、Alexさんの親族や友人が何十人も参列した。Alexさんに会ったことはないが、彼の冒険に刺激を受けたファンたちも姿を見せた。

 「Alexらしいやり方で、私たちはそのイベントを楽しく演出した」(Joeさん)

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