新型コロナと闘う病院に「最適な物資」を--ジャパンハート、医療崩壊を防ぐ新プロジェクト - (page 2)

医療・介護分野に新たなエコシステム形成

　4月28日にジャパンハート ソーシャルネットワーク設立が発表されてから、わずか3日で、600名以上の医療従事者が登録したという。支援企業は、現在7社。各社登壇者は、すでに開始した支援内容や、プロジェクト参画への想いを口々に語った。

　オイシックス・ラ・大地では、食品を無償支援するプラットフォーム「WeSupport」を立ち上げて、すでに都内の医療機関へ配送を開始しているが、「似て非なる仕組みが混在すると、かえって混乱を招く。病院側のニーズを把握して支援することが大事だ」として、ジャパンハートソーシャルネットワークに参画した。

　オルビスは、医療現場で女性の医療従事者が、日常的なスキンケアをできないことに大きなストレスを抱えていることに着目して、洗顔から保湿までできる約1週間分のスキンケアセット1万個を提供するなど、4つの支援を用意した。

支援企業は左上から順に、オイシックス・ラ・大地、オルビス、cotree、日本交通、ライフスタイルアクセント、ラクスル、ロート製薬の7社だ

　このほかcotreeは、感染収束時に課題が顕在化するであろう、医療従事者のメンタル不調をサポートする、オンラインカウンセリングなどを無償提供する。ライフスタイルアクセントは、非常に強力な抗菌加工をされたインナーTシャツを、いますぐ作れる300枚から製造と提供を行い、他社アパレルメーカーにも協力を仰ぐ。

　物流においては、ラクスルと日本交通がリソースを提供する。ラクスルは、輸送先が突然変わるなどの変更が多く複雑な物流に対応するために、全国2万名以上の登録ドライバーと協力して、システムをベースとした柔軟性の高い物流網を提供する。日本交通も、東京都の要請を受けて陽性反応が出た軽症者のホテル移送を担っていることを明かし、今後はタクシーの物資輸送を認める特例を利用して、配送にも寄与する方針を明らかにした。

　ロート製薬は、独自に医療機関を支援する組織を発足し、マスク50万枚、手袋30万枚、防護服1万5000着を手配したが、「1社では限界がある」として、ジャパンハート ソーシャルネットワークに参画。民間ならではのスピード感をもって貢献したい構えだ。もちろん、メンソレータムなどスキンケア商品の提供も検討中とのこと。

　支援企業からは、「有事から生まれた仕組みを平時に落とし込み、次回の有事にしっかりと生かされていく仕組みづくりに共感した」というコメントも多く、ジャパンハートソーシャルネットワークが新たなエコシステム形成の火付け役となる可能性には注目だ。

医療従事者支援の輪をもっと大きく

　最後に、一宮西病院の安藤裕貴氏が登壇し、医療現場の現状を赤裸々に報告した。マスク価格の高騰、医療器具の入手困難。物資不足を背景に医療機関が診療を断るケースや、緊急度の低い手術は延期せざるを得ない状況が続いているという。一方で、診療は平時の10倍以上にも関わらず、PCR検査で陽性でなければ「診療報酬2倍」にはならないのだ。

一宮西病院 総合救急部 救急科部長 安藤裕貴氏

　また、医療従事者一人ひとりが抱える悩みも深刻だ。「あらぬ差別を受けるのでは」と、不安を感じている医療従事者は多いそうだ。電車やバスなど公共交通機関の利用を自ら控えたり、子どもを幼稚園や保育園に預かってもらうために、自宅に帰らず自費でホテルに宿泊したりする医療従事者もいるという。

　安藤氏は、ジャパンハート ソーシャルネットワークの取り組みに感謝を示してこう話した。「『自分たちが恵まれすぎてはいけない』と思って、声に出していない医療従事者の気持ちを汲んでもらった」（安藤氏）

　いま求められているのは、「最も支援を必要としているのは誰か、その方のニーズは何かを正しく把握して、規模に関係なく一人一人が自らできる範囲で行動していくこと」だ。今後も多くの企業が支援の輪に加わり、このムーブメントが国内外に広がっていくことを心から期待したい（個人からの寄付は、物資の品質担保の観点から現在は受け付けていないとのこと）。

　医療・介護従事者の問い合わせ・応募はFacebookページより。参加希望企業の問い合わせ・応募はこちらのページより。