神戸市は、新型コロナウイルスの影響で打撃を受けている飲食店や家庭を支援する取り組みの第2弾として、フードデリバリーサービスの出前館と連携した「KOBE 出前シフトサポート」を発表。4月24日に神戸市で開かれた記者説明会には、出前館代表取締役社長の中村利江氏が登壇し、全国初となるサービス利用料支援をはじめとする事業協定の内容を説明した。
出前館では、飲食店が自ら配達する「自配」と出前館のスタッフや提携先が配達を代行するシェアリングデリバリーを展開している。飲食店の月額固定費は不要、成功報酬型で手数料は実費となる。飲食店に注文が入ると音声で知らせたり、利用者も郵便番号で検索できるなどユーザビリティにも力を入れている。
現在、全国で約2.2万店以上が加盟する国内最大級のフードデリバリーサービスで、過去1年間で注文した人は325万人。出前館全体での月間注文数は303万件におよぶ。一店舗あたりの月間平均注文数は140件で月間平均売り上げ金額は約35万円だという。
出前館では独自の支援策として、飲食店側の配達代行手数料を30%から23%に引き下げる支援を、5月1日から10月31日まで実施することを発表している。また、一部の地域では5月6日までに申し込みをした場合、飲食店が通常支払う初期制作費用2万円を免除しているが、神戸市では5月7日から7月31日まで申し込み期間を延長する。
また全国初の支援としては、サービス利用料10%の半額分の5%を神戸市と出前館が半分ずつ助成する。期間は5月7日から7月31日までだが、状況を見ながら延長も検討する。家庭向けの支援としては、送料をのぞく1000円以上の注文に対し、1人1回500円分をTポイントで還元もしくはサービスクーポンを配布する。
さらに、休業・営業短縮を余儀なくされている市内飲食店勤務者を対象に、迅速かつ柔軟な雇用確保を図る「飲食店向け緊急雇用シェア」を4月30日まで取り組み、神戸市側がPRを支援する。
出前館では注文が届く前に配達時間が表示され、置き配が指示された場合も商品を引き取るまで確認するなど、配達品質を安定させる点にこだわっている。そのため採用前に面接(現在はオンラインでも対応)と研修を行い、配達スタッフが準備する場所を設けるなどし、「感染リスク低減のため配達員の体調管理や配達前後のアルコール消毒など衛生管理も徹底している」と中村氏は説明する。
神戸市は今回の取り組みによって、(1) 飲食店の出前サービス利用の際の負担軽減とPR効果向上、(2)飲食店就労者に対する迅速かつ柔軟な雇用による収入確保、(3)家庭での家事や家計の負担軽減並びに利便性と食卓のバリエーション向上といった効果が期待できるとしている。
神戸市企画調整局つなぐラボ特命係長の長井伸晃氏は、今回の対象は神戸市内の中小企業基本法で規定する中小飲食店で、すでに加盟済みの約200店舗と新規加盟店で、神戸市側の事業費として1500万円程度を用意していると発表した。
4月10日に発表した「Uber Eats + KOBE」でも同様の支援をしているが、配達エリアやメニューの違い、LINEデリマなどとの提携で利用者の選択肢や利便性が広がることを提携の理由として挙げた。
また、「今回の提携はUber Eatsの発表直後に始まり、約10日間という短期間で出前館と神戸市の両者がスピーディーに調整を進めたことで、GWに入る前に発表できた」という。神戸市経済観光局担当部長の古泉泰彦氏は「中小の飲食店が宅配を利用するのはハードルが高かったが、初期制作費が不要なので(フードデリバリーのニーズが増えている)この時期だけでも利用してほしい」と呼びかけた。
出前館の中村氏は「神戸市内では大手を含めた登録件数が500に留まっていることから、倍の1000件に増やすことを目標にしている。神戸市の事例を受けてさらに他の行政でも対応が拡がることも期待している」と話す。今回の支援策にかかる費用については非公開としつつも、3月26日に発表した赤字額も含めて想定の範囲内で行っており、「今後はLINEとの提携を強めるなどして、日本にフードデリバリーの基礎を築きたい」と語った。
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