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コロナ禍で生き残るための「テレコラボ」戦略--テレワークや共創の“その先”へ

角 勝(フィラメントCEO)2020年04月30日 08時00分
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 本来であればオリンピック開催直前で大盛り上がりのはずだった2020年4月。ですが、突如飛来した新型コロナウイルスという巨大なブラックスワンのせいで「オリンピック」が「ステイホーム」に置き換わる事態となってしまいました。状況は根底から覆され、巣ごもり消費などの一部をのぞいたほとんどの経済活動は停滞・後退・撤退を余儀なくされています。

 コロナウィルスの感染拡大は、我々に行動変容を迫り、「人のつながり」のかたちも変えつつあります。結果、会社に出勤してみんなで一緒に仕事をするという、これまでごく当たり前だった日常も急速に変貌をとげています。

 今の段階でこれがどこまで続くのか正確な予測などできるはずもありません。しかし、コロナウイルスの感染力の高さ、季節性がないと思われること、危険性、ワクチンや治療薬が人々に行き渡る期間などを考えると、長期化の可能性はかなり高そうです。

 こうなると、このブラックスワンはその後の環境を根こそぎ変化させてしまうジャイアントインパクト(恐竜を絶滅させた巨大隕石の衝突とそれによる気候変動)となってしまうかもしれません。

 この「不確実性の嵐が吹き荒れる究極のVUCA(ブーカ)」に際して、企業の経営幹部は何を企図し、何をすべきか。近くやってくる(あるいは、もう到来している)隕石の衝突による核の冬に、生存戦略が試されています。

コロナ禍で生き残るための「テレコラボ」

 そんな地殻変動のただ中ですが、僕が経営しているフィラメントという会社は、ありがたいことに比較的落ち着いて変化に対応できています。フィラメントはコロナ以前からもともと社員が好きなタイミングで好きなだけテレワークしてよいという就業ルールでしたが、コロナ感染拡大にともなって、基本的に全社員リモートワークとしました。

 ここで少しだけ、僕の会社の説明をさせてください。フィラメントは僕を含む常勤メンバー6名(非常勤含め10名強)ほどの大阪の会社です。主な事業は、大企業に向けての新規事業開発のサポート。ざっくりいうとコンサルティングに分類されるかと思います。

 コンサルティングといっても、成果物としてドキュメントをしっかり作りこむようなタイプではありません。クライアントの事業インキュベーションプログラム(新規事業提案制度)の設計と運用をしながら、プログラムに応募したチームにメンタリング(面談指導)を行い、事業プランのブラッシュアップとメンバーの成長をサポートすることを基本スタイルとしています。

 僕たち自身がメンタリング対象のチームの一員であるかのようにコミュニケーションをとりながら、一緒にビジネスプランを練り上げていく、そんなフレンドリーな伴走型支援が我々の持ち味です。

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 しかも、そうしたコミュニケーションのほとんどをリモート(オンライン)でしています。これは意図的に指向した点もありますが、そもそも我々の本拠が大阪である一方で、クライアントのほとんどが東京の企業であるという地理的不利の克服のために、自然に「テレコラボレーション」(以下「テレコラボ」)ともいえるノウハウが鍛えられ、蓄積された結果でもあります。

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 こうして培ってきたテレコラボのメソッドのおかげで、我々フィラメントはこのコロナウイルスによって距離的制約が厳格化する只中にあっても、普段通りの仕事を落ち着いて継続できているわけです。

「テレコラボ」で実現する3つのキーワード

 本連載では、このテレコラボをキーワードに以下の3つの分野で我々の知見や気づきを共有し、ささやかながら読者の皆さんのお役に立てればと考えています。

(1)「企業の細胞(最小構成単位)である社員の活性化」
(2)「既存事業の(環境変化に合わせた)戦略転換」
(3)「新環境に適合する新事業(と創造的人材)の創出」

 (1)では、テレワークの一般化によってワークスタイルが激変した会社組織における社員個人のパフォーマンスの最適化や、メンタルヘルスの維持などについてお話しできればと思っています。(2)では、一変した市場環境に対して、既存事業をどうメタモルフォーゼしていけばよいのか、そのヒントにつながるようなお話を、(3)では、我々が行っている新規事業創出サポートについて、事例を交えつつご紹介していきます。

 さて、本題に入る前に、一旦、僕たちがどんなスタイルで事業をすすめているかの説明に戻りたいと思います。自分の会社の宣伝をしたいわけではないのですが、僕たちの仕事の進め方がイメージできる方が、この連載で共有していく知見を理解しやすいと思うので、もう少しだけお付き合いください。

 僕たちが行っている新規事業開発サポートは、さまざまなクライアント企業の新規事業チームにメンタリングという形でコミュニケーションをとりながら、ビジネスを作り上げていこうとするものです。

 こうしたメンタリングは通常、新規事業チームから持ち込まれたビジネスプランに対して改善点を指摘するところからスタートします。しかし、そうしたやり方だと「評論家的目線でのダメ出し」のようにとらえられ、チームの発想やモチベーションが委縮してしまいがちです。また、信頼感のある関係構築も難しくなり、成果にもつながりにくくなります。

 そのため、僕たちは「相手の立場や気持ちに寄り添うこと」を主眼に置いたコミュニケーションを徹底しています。メンタリングの相手チームの一員として認められ、頼られるようになること、そこが我々のスタート地点です。「新しいことはやってみたいが何から着手していいかわからない」というチームメンバーと雑談しながら一緒にアイデアを出す場合もありますし、社員を集めて新規事業のアイデア創出ワークショップを行う場合もあります。

 こうしたアイデア創出のプロセスでは、新規事業開発の似疑体験を通して新しいことにチャレンジすることの楽しさや冒険心に火をつけ、高い意欲をもった新規事業チームを生みだすことを意識してファシリテーションしていきます。そして、組成されたチームの一員として一緒にアイデアを出し、次のアクションを考え、共に動いていく。そんな「チームイン型」とも言うべきメンタリングスタイルが我々の特徴です。

 こうして一緒に活動する中で、僕が意識的に行っているのがチームメンバーの「パッションマネジメント」というべきものです。

 僕たちはこれまで、成功も失敗もたくさんしてきましたが、過去の経験からたどり着いた気づきもあります。そのうち最大のものが、大企業の事業開発のために最も重要なリソースは「時間」「学び」「パッション(情熱)」の3つであり、中でも特に「パッション」は最も希少性が高い資源だという認識です。

 事業開発に従事するメンバーの「パッション」は消耗品であって、初期値を超えて増えることはなく、不毛な作業や組織内の軋轢でどんどん摩耗してしまいます。ゆえに、僕たちが最も重視し、心を砕いているのが、限りある資源である「パッション」が枯渇しないようにチームメンバーを鼓舞するとともに、周囲との調整を図っていくことです。

 このような「パッションマネジメント」や「チームの一員のようにふるまう」ためには、心理的な距離を近づけていく濃密なコミュニケーションが必要です。そしてこれはテレワークを進める中でのチームワークやモチベーション維持、メンタルヘルス改善のためにも重要なポイントとなります。

 本連載では、僕たちが実践してきた、会社間・遠距離間でのコラボレーション「テレコラボ」を通じて得られた、コミュニケーションやマインドセット、カルチャーシフト、事業開発・事業変革などの学びをもとに、(1)企業の細胞である社員の活性化、(2)既存事業の戦略転換、(3)新環境に適合する新事業の創出について、皆さんの気づきにつながる情報をお伝えしていきたいと思います。

 この連載が、コロナウイルスというジャイアントインパクトへの対抗材料となり、逆境に抗うために少しでもお役に立てればと思います。まだ未来は定まっていません。あらゆる可能性がひろがっているはずです。環境適応力が試される今、生き残るためにもつべき視点、なすべき選択について、次回以降、探っていきます。

連載第2回に続く

角 勝

株式会社フィラメント代表取締役CEO。

関西学院大学卒業後、1995年、大阪市に入庁。2012年から大阪市の共創スペース「大阪イノベーションハブ」の設立準備と企画運営を担当し、その発展に尽力。2015年、独立しフィラメントを設立。以降、新規事業開発支援のスペシャリストとして、主に大企業に対し事業アイデア創発から事業化まで幅広くサポートしている。様々な産業を横断する幅広い知見と人脈を武器に、オープンイノベーションを実践、追求している。自社では以前よりリモートワークを積極活用し、設備面だけでなく心理面も重視した働き方を推進中。

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