新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)拡大を防ぐ目的で、在宅勤務の推進、学校の休業、店舗や娯楽施設の営業休止、外出の自粛など、さまざまな対策が採られている。フリーで活動しているライターのなかには、イベントの中止で取材や執筆といった業務がキャンセルになった人も多いだろう。
筆者はフリーランスのライター兼翻訳者として長年働いており、在宅勤務はお手のものだ。通勤ラッシュと無縁な生活や、仕事を自分の意思で取捨選択できるところに大きな魅力を感じている。その一方、個人事業主が業務委託という形態で仕事をしている以上、いざという時に組織からは守ってもらえない。もちろん、短所は理解してこの働き方を選んでいるので、その点は納得済みだ。リーマンショックの際も、なんとか乗り越えてきた。
ただ、リーマンショックと異なり、今回のコロナショックは実体経済にいきなり悪影響を及ぼしている。それが恐ろしい。収入が減るどころか、最悪ゼロになる状況も想定しておくべきだろう。事務所を借りていると、固定費が出て行くばかりで、生活が行き詰まりかねない。
そんななか、政府が個人事業主に最大100万円の給付金を支給するというニュースが流れ、期待が高まった。これ以外にも、政府や自治体はさまざまな支援策を用意している。ここでは、筆者のような個人事業主や、個人事業主が多く取引しているであろう中小企業向けの各種支援策の概要をまとめていく(2020年4月17日時点)。
個人事業主に100万円を給付する支援策の正式名称は「持続化給付金」で、経済産業省中小企業庁によるもの。COVID-19の影響で厳しい状況にある中小企業および個人事業主に対し、事業継続を支えるための資金が給付される。
2020年各月の売上(事業収入)と前年同月の売上を比較し、いずれかの月が50%以上減少していたら給付対象になる。減少理由はCOVID-19の影響とされているが、それを証明する必要はないようなので、ハードルは低いだろう。そして、給付額は以下の式で計算し、最終的に中小企業は上限200万円、個人事業主は上限100万円となる。基準とする2020年の月は任意の月が選択可能なので、売上がもっとも減った月を選ぶといい。
(前年の総売上<事業収入>)-(<前年同月比-50%月の売上>×12カ月)
貸付でなく、返済の必要はない。資金の用途も限定されず、使い勝手がよい。また、基本的にオンライン申請となるが、「GビズID」は不要だ。
なお、現時点で持続化給付金は案の状態で、令和2年度の補正予算が成立して確定する。
学校が3月に突然休業したまま、新学期がスタートしていないところも多い。小学生を家に残して外出するのは危険なので、仕事を休まざるを得ない人も大量にいるはずだ。個人事業主は、そうなると収入が途絶えかねない。
これに対しては、厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金」が利用できる。2月27日から3月31日までの期間中、就業できなかった日に対し1日当たり4100円が助成される。ただし、春休みなど開校予定でなかった日は対象外だ。
また、4月になっても休業が続いているため、対象期間の延長が決定された。現時点では、4月1日から6月30日までの期間に就業できなかった日も、助成対象になる。
自宅でテレワークできれば業務を続けられる人はいるだろう。しかし、取引先が対応してくれない限り、フリーランスの立場では実現を強く求めにくい。資金や人員に余裕のない中小企業だと、テレワークに関心があったとしても、急な導入は難しい。
そこで、厚労省が創設した、新型コロナウイルス対策でテレワーク導入した中小企業向けの助成金「時間外労働等改善助成金(テレワークコース)」の活用を提案してはどうだろう。この制度を利用すると、COVID-19対策としてテレワークを新規導入または試験導入する中小企業は、最大100万円助成される。
同様の制度は、たとえば東京都も「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」として実施中だ。ほかの省庁や自治体も支援策を用意する可能性があるので、日本テレワーク協会の「テレワークに関する助成、補助」を随時チェックするとよい。
業務を継続できたとしても、取引先企業の経営が行き詰まることもある。そのような状況に陥った中小企業には、資金繰り支援策「セーフティネット保証4号/5号」の利用を検討してもらおう。
数多くある中小企業向け支援策のなかからこれを選んだのは、5号の対象となる指定業種が増やされ、個人事業主が多いであろう業種もカバーされるようになったからだ。今回の措置で151業種が追加され、関係しそうな業種としてはニュース供給業、デザイン業、写真業、翻訳業、通訳業、広告制作業、映画・ビデオ制作業、テレビジョン番組制作業、ラジオ番組制作業などがある。
追加151業種には、やはりフリーランスの多そうな芸術家業が含まれている。文化芸術関係者については、文化庁がまとめている支援情報窓口の一覧も役立つ。
経済状況が厳しくなると、委託した業務を一方的にキャンセルしたり、委託料の引き下げを強いたりしてくる取引先が発生するかもしれない。COVID-19による悪影響を懸念した経産省と厚労省、公正取引委員会は連名で、個人事業主とフリーランスを不当に扱わず、適切に配慮して取引するよう、発注事業者に対し業界団体を通じて要請した。
それでも納得できない扱いを受けたら、中小企業庁の「下請かけこみ寺」に相談しよう。
住む場所がないと生活に困るのは当然として、住所を失うことでさまざまな契約ができなくなったり、支援を受けにくくなったりしてしまう。住所はなんとしても維持しなければならない。
家賃の支払いに困ったら、各自治体に相談して「生活困窮者自立支援制度 住居確保給付金」を利用しよう。4月20日に支給要件が変更され、離職や廃業だけでなく、休業によって収入が減少した人も対象になるのだ。横浜市によると、開業届を提出していないフリーランスもカバーされるらしい。
固定費は家賃だけでない。税金や年金、健康保険などの請求が次から次へと訪れる。それらの支払いに困ったら、遠慮なく納付の猶予制度や、税額の軽減制度を利用しよう。
上下水道や電気、ガス、電話料金、NHK受信料なども、各事業者に相談すると道が開かれる可能性はある。ちなみに経産省は、電気およびガスの事業者に対して、料金支払いの猶予といった柔軟な対応を要請している。
新型コロナウイルスに感染したら、仕事どころではない。自宅での自己隔離ならまだしも、入院してしまったら、収入が途絶えてしまう。個人事業主が多く加入している国民健康保険は、傷病手当金が給付されないので頼れない。
ところが厚労省は、市町村によっては条例に従い、COVID-19感染者には国民健康保険から傷病手当金を支給する場合があるとしている。国が特例的に対応するそうだ。
ごく一部であるが、個人事業主やその取引先が利用できそうな支援策をまとめてみた。ただし、現時点では内容が未確定なものも多く、新しい支援策も日々追加される。自治体独自の支援策もあれば、業界団体や民間企業の支援策も存在する。すべての情報をカバーすることは不可能だ。
そこで、信頼できる一次情報源を列挙しておく。
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