新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が全米で深刻化するにつれ、医療機器が緊急に必要になっており、付加製造産業(StratasysやHPなどの3Dプリンターメーカー)やその顧客は自社のツールで新たな製品を作り始めている。これらのメーカーは、医療提供者向けのフェイスシールドなどの保護具や、患者にとってなくてはならない人工呼吸器を製造中だ。
こうした重要な医療機器が不足する中、3Dプリントは不足を補う迅速な手段になると業界関係者は指摘する。
Stratasysの最高経営責任者(CEO)、Yoav Zeif氏は米国時間3月22日のプレスリリースで「どこででも、どのような形状でも印刷でき、簡単に設置できるという3Dプリントの強みは、フェイスシールドやマスク、人工呼吸器をはじめとする機器のパーツ不足改善に役立つ」と述べた。同氏は付加製造をパンデミック対策の「不可欠なパーツ」と呼び、Stratasysとそのパートナー企業は「3Dプリンター、生体適合性素材を含む素材、プリンターパーツのニーズを満たすため、24時間体制で作業する用意がある」とした。
Stratasysやその他の企業の取り組みを紹介していこう。
Stratasysは、医療従事者に無償提供する予定の使い捨てフェイスシールド数千個を迅速に製造するために、すべてのリソースを動員しているとした。ミネソタ州、テキサス州オースティン、カリフォルニア州バレンシアの直営工場で、フェイスシールドのフレームと顔全体を覆う透明プラスチックのシールドの両方を製造する。医療技術企業のMedtronicとミネアポリスのダンウッディー工科大学が、プラスチックシールドの素材で協力しているという。
22日の時点で、まずは5000個のフェイスシールドを27日までに製造するのが目標だとしていた。その後は、生産速度をさらにスケールアップできる見込みだという。
Stratasysは、米国内の他の3Dプリントショップにもこの取り組みへの参加を呼び掛けている。同社はCOVID-19対策ページで、フェイスシールドの3D出力と組み立ての手順書と、ショップが取り組みに参加を申し込むためのオンラインフォームを公開した。
Stratasysは、フェイスシールドの製造に加え、「CoVent-19 Challenge」にも参加している。これは、エンジニアや設計者に、迅速に製造できる新たな人工呼吸器の開発を支援するよう呼び掛けるイニシアチブだ。このイニシアチブはマサチューセッツ総合病院の麻酔科医が立ち上げたもの。Stratasysはこの取り組みを支援し、無料でCADモデルをダウンロードできるGrabCADコミュニティーを介して促進していく計画だ。
HPは世界中の医療施設向けの、多様な3Dプリント製パーツ製造に注力している。これまでに、同社は3Dプリンターで出力した1000個以上のパーツを各地の病院に提供しており、幅広い部品の設計テストと検証を実施している。同社の広報担当者は27日、24時間で5000~1000個のパーツを3Dプリントで製造したと米ZDNetに語った。
同社のCEO、Enrique Lores氏は24日のプレスリリースで「われわれは国境や業界を超えて協力し合い、最も必要な部品を特定し、設計を検証し、3Dプリントでの製造を開始する」と述べた。
HPによると、最初の製品群はフェイスマスク、フェイスシールド、マスクのアジャスター、鼻咽頭スワブ、ハンズフリーのドアオープナー、人工呼吸器などのための3Dプリント製部品になるという。HPはまた、短時間の緊急人工呼吸用バッグバルブマスク(BVM)を含む他の医療用機器の設計テストと検証も開始する計画だ。さらに、病院向け品質のフェイスマスクも検証中で、間もなく提供できる見込みだ。
こうした取り組みは、スペインのバルセロナ、米国のオレゴン州コーバリス、カリフォルニア州サンディエゴ、ワシントン州バンクーバーにあるHPの3D研究開発センターで行われている。
HPとその協力者は、複雑な組み立てが不要なこれらの多くのパーツの検証済み設計ファイルをこのサイトで無料提供している。3Dプリント製パーツの開発を特注したい病院や企業はこちらのサイトからリクエストできる。
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