神戸市とフードシェアリングサービス「TABETE」を展開するコークッキングは、「食品ロス削減・持続可能なフードシェアリング」に関する事業連携協定を締結したことを、神戸市内のパン事業者3社と共に発表。3月24日に締結式が開かれた。
神戸市ではSDGsの取り組みとして、エコノミーとエコロジーに貢献するシェアエコシティを目指しており、今回は傘のシェアリングサービスを展開するアイカサとの事業連携に続く第2弾の協定となる。神戸市民にとって最も身近な存在であるパン業界とタッグを組んでフードシェアリングを推進し、シェアリングサービス全体に対する認知と活動に参加するきっかけを拡げるのが狙いだ。
コークッキングCEOの川越一磨氏は、TABETEについて「飲食店や食品小売店でまだ食べられるが廃棄の恐れがある商品をユーザーにレスキューしてもらうサービス」と説明する。
TABETEのユーザーは、アプリから店舗と何時に商品を受け取れるかを検索し、テイクアウトする商品を選択。アプリ内でクレジットカードで決済するため、店舗ではキャッシュレスで受け取れる。店舗側の登録も無料で、手数料は売り上げに対して支払われる。2020年3月時点でのユーザー登録数は22.3万人で登録店舗数は累計で572店。神戸市以外にも横浜市や金沢市と地域連携実績があり、小田急や東京農業大学も登録している。
「神戸市の登録はまだ2店舗だが食や食ロスに対する意識は高く、今後は登録店舗数を拡大できるポテンシャルはあると見込んでいる。サービスを知ってもらい、今回の連携により登録店舗数もさることながらマッチング率を高めることで、食ロス削減に貢献する活動そのものを定着させたい」と川越氏は話す。
神戸市の久元喜造市長は今回の提携に対し、市民行動の変容につながることを期待していると言う。TABETEはアプリを使うサービスなので特に若い人たちを中心に広がるのではないかという思いもある。また、新型コロナウィルスの影響で食品関係では在庫が積み上がってる可能性があるとし、そうした対策としてもこの時期に始めることに意義があるのではないかと話した。
神戸市ではすでに「神戸市食品ロス削減協力店」制度や、棚にある商品を手前から買う「てまえどり」の普及啓発などを実施している。それに加えて、飲食店などにおける食品ロス削減の取り組みの相互推進、市民・事業者対象セミナーの開催、市民のエコアクション促進、市内学生の起業・経営マインド育成、そして市内パン事業者有志に「持続可能な食品ロス削減アンバサダー」として活動してもらうといった5つの取り組みを実施している。
その中では、神戸市で実施されているエコアクションを応援する「イイことぐるぐる」と連携したポイント提供や、シェアリングエコノミーと食品ロス問題をテーマにした「SDGsセミナー」の開催、ビジネスコンテストの開催なども予定しているという。
パン事業者有志の中心役として参加するケルン代表取締役の壷井豪氏は、業界の課題としてコスト高騰が事業を直撃することや、消費期限が短いなどの問題から事業の不安定さを引き起こしやすい体質があると説明。
「TABETEはローンチ前から使っていたが、使うのが面倒でなければ全員が使いたいと思うサービスだと感じている。キャッシュレスでレジ作業を減らせるメリットも大きい。サステナブルな経営と社会問題解決という次のステップにつなげるという点でも今回の参加を決めた」とコメントした。
壷井氏の呼びかけに応じて参加したというイスズベーカリー代表取締役の井筒英治氏は、「食品廃棄の削減には以前から取り組んでいたが、今回の事業連携はお客さまにも社員にも喜ばれて損失を多少減らせるうえに、世間さまにも喜ばれる三方良しの取り組み」と評価。
また、原田パン代表取締役の原田富男氏は、同社が手がけている学校給食事業が新型コロナウィルスの影響で大きな食品廃棄を出すところだったが、ニュースで窮状を知られたことで救済されたという話から、「世間には助け合いの気持ちが強くあり、今回の事業は食べ物に対してもったいないという気持ちをもってもらえる機会につながるのではないか」と思いを語った。
今回の連携事業は、神戸市のつなぐ課を通じてTABETEとケルンの壷井氏がつながったことからスタートし、実施期間は4月1日から2年間を予定している。TABETEのサービスはケルンがすでに登録済みで、2020年内に登録店舗数を50〜80店舗に増やしたいとしている。
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