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神戸市と渋谷区が「官民連携」をダイナミックに進める狙い--寺﨑副市長と澤田副区長に聞く

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 朝日インタラクティブは、2月18〜19日にカンファレンス「CNET Japan Live 2020 企業成長に欠かせないイノベーションの起こし方」を開催した。初日の18日には、パネルディスカッション「自治体と民間のコラボレーションの現状と今後」が開かれ、神戸市 副市長の寺﨑秀俊氏と、渋谷区 副区長の澤田伸氏が登壇。民間企業と積極的にコラボレーションする狙いや、その取り組みを紹介した。モデレーターは、CNET Japan編集長の藤井涼が務めた。

神戸市副市長と渋谷区副区長が登壇したパネルディスカッション「自治体と民間のコラボレーションの現状と今後」
神戸市副市長と渋谷区副区長が登壇したパネルディスカッション「自治体と民間のコラボレーションの現状と今後」

スタートアップ育成と行政イノベーションを進める神戸市

ーー最初にそれぞれの官民連携の事例などをお伺いできればと思います。それでは、神戸市の取り組みについて聞かせてください。

寺﨑氏:まずは神戸の歴史から振り返りましょう。1868年1月1日に神戸港が開港しましたが、これによって日本人と多くの外国人が集う雑居地が誕生したことは、最初のイノベーションといえるでしょう。

 たとえば、中華まんの発祥は諸説ありますが、神戸の饅頭屋である老祥記(ろうしょうき)の初代店主が、饅頭の天津包子(テンチンパオツー)を日本に伝えたのが始まりともいわれています。同じく神戸市を本拠地とするモロゾフは、1935年に今のバレンタインデーにつながる新聞広告を打ちました。1969年には世界初の「UCCコーヒーミルク入り(現UCCミルクコーヒー)」が登場し、1970年の日本万博博覧会で爆発的に売れました。このように、神戸市にはイノベーションを起こす素地があります。

 2018年より神戸市で本格的に動き出した、スタートアップと行政職員が協働する地域課題解決プロジェクト「Urban Innovation KOBE」は、最初はうまくいきませんでしたが、いまでは民間人材を投入して成果も出始めています。一例を挙げれば、モンスター・ラボに協力を仰ぎ、通勤手当の経路認定に要していた約5500時間をRPA(ロボティック プロセス オートメーション)で自動化し、約1900時間の業務時間削減に成功しました。今後は精度を向上させることで、2400時間の削減を目指しています。

 行政窓口は多く課題を抱えていますが、IT初心者でも簡単に使えて適切な窓口へ誘導できるタブレットを、ACALLと共に東灘区役所へ導入しました。すると、平均案内時間は48.9%も削減できました。4月からは、神戸市と阪神電車、アイカサの3社で、市内80カ所に2000本の傘を設置する実証実験も開始します。利用状況を統計化し、需要把握やデータ活用につなげることを検討しています。

神戸市と民間企業が取り組む、雨天日の人流データを可視化する実証実験
神戸市と民間企業が取り組む、雨天日の人流データを可視化する実証実験

 これまで、役所の調達ルールは原則として公募・競争入札のため、共同開発したソリューションを調達できない可能性がありました。そこで地方自治法の例外規定を活用し、2019年11月から共同開発プロダクトをスタートアップから随意契約で調達可能にしています。

 周辺自治体も関心を持っており、我々としては各行政のコスト削減につながることから、スタートアップ育成と行政イノベーションをセットに横展開を目指しました。10月にはさらなる展開を目指し、スタートアップから大企業までのあらゆる企業や研究機関、大学などの多様なニーズに応えるラボ「クリエイティブラボ神戸(Creative Lab for Innovation in Kobe(CLIK)」を開設します。

渋谷区は「4つのインテリジェンス」で国際成熟都市へ

ーーありがとうございます。続いて、渋谷区の取り組みを聞かせてください。

澤田氏:渋谷区では「公」は「官」がすべて担うという昭和的発想から脱却するため、4つのインテリジェンス「AI(人工知能)」「BI(ビジネスインテリジェンス)」「CI(シティーインテリジェンス)」「DI(ダイバーシティインテリジェンス)」を通じた国際成熟都市の実現を目指しています。そのために、資金、人材スキル、プロダクト、サービス、ノウハウ等を共有し、都市の成長へつなげています。

 従来は市民・行政・教育・企業というセクターごとに何らかの利害関係があり、セクター間に共通する地域アジェンダが十分に可視化できていないことが課題でした。そのため、各セクターが互いにリソースを出し合い、可能性を創造する共創型社会へとパラダイムチェンジを起こしていこうという渋谷区基本構想を進めています。

渋谷区が提言する新都市のあり方
渋谷区が提言する新都市のあり方

 その一環として取り組んでいるのが、2016年に開始したクロスセクター共創・協働推進プログラム「SSAP(シブヤ・ソーシャル・アクション・パートナー)」です。地域社会の課題解決を目的としており、渋谷区に拠点を有する21企業・8大学・NPOなどとの協働によって、さまざまなプログラムを展開しています。

 渋谷区ではまず始めに、LINE社とのS-SAP協定に基づき、公式アカウントを開設しました。そして、2017年2月には子育て世帯へのセグメント情報配信、8月にはAIチャットボットによる子育て相談やゴミ分別などへの対応、2018年11月には位置情報を活用した施設案内や予約、2019年9月には電子母子手帳との連携や妊婦面談などのLINE予約といった具体サービスを展開してきました。

 さらに2020年4月には、住民票や納税証明書をLINE経由で申請可能とする新たなサービスも開始する予定です。

 また、区の公共施設に設置したAED(自動体外式除細動器)は閉館時間に使用できないことから、セコムやセブン-イレブン・ジャパンと共に、4月から多言語対応のAEDをコンビニエンスストアに設置していきます。このほかにも、伊藤園・キューピーとは食育、ナイキジャパンとは女性のスポーツ参加支援、みずほ銀行・國學院大學とは年齢や属性を問わないスポーツクリエーションイベントと、さまざまな企業・団体と協働プログラムを展開してきました。

 イノベーションの加速を目的に、区の出資団体として、可能性創造を迅速化することを目的に、2018年4月には一般社団法人「FDS(Future Design Shibuya: 渋谷未来デザイン)」を設立しています。未来都市の可能性と渋谷という街が好きな人々が集まり、オープンイノベーションで社会課題の解決策を提示する組織で、現在は渋谷区+民間企業14社の出資社と37社の会員社で構成されています。

 また区が民間企業とのコラボレーション(PFI)事業として手掛けたものとしては、2019年1月に開設した渋谷区新庁舎の建設プロジェクトがあります。このプロジェクトでは、区有地の定期借地権設定によって新庁舎と一体的に建設した渋谷公会堂を財政負担ゼロで建て替えを実現しました。

 また、新生渋谷公会堂の命名権販売を行い、LINE CUBE SHIBUYAとすることで、新たな財源確保にも成功しています。

 さらに、渋谷駅周辺に位置する宮下公園は、区内最大床面積を誇る商業施設や1万平方メートル超のスポーツパークと芝生広場などを一体化した「MYASHITA PARK」を2020年6月に開業予定ですし、玉川上水旧水路緑道を再整備する「ササハタハツプロジェクトも2024年頃には完了する計画です。

ーーお二人にお伺いしたいのですが、企業との連携の目的やゴールはどのように設定されていますか。

澤田氏:都市は多くの課題を抱えています。人口増やインバウンド観光が盛り上がることは、必ずしもポジティブな面だけではありません。たとえばハロウィーンに代表されるオーバーツーリズムの問題。街中にゴミや落書きが溢れましたが、これは区が主催するものではありません。常に清潔で安全安心な街だからこそ、多くのスタートアップが集まり、民間企業の拠点移転が進み、人財リクルーティングにも大きな効果をもたらします。だからこそ、渋谷区は常にパブリックセクターである各企業が所在する地域社会を共に進展させるための共創・協働活動への参画を呼び掛けています。

 当然ながら企業が持つ多様かつ高度なソリューションを実装するわけですから、何らかの形でのトレードオフが必要です。たとえばLINEの事例は渋谷区が先行したユースケースとして他の地方自治体にどんどん広がっています。LINE側も社会実証に挑戦することで、新たなサービスプラットフォームとして成長しているのではないでしょうか。

寺﨑氏:現在、神戸市の人口は152万人ですが、減少傾向にあります。また、川崎重工や三菱重工、三菱電機、神戸製鋼といった製造業が中心で、クリエイティブ産業が少ない都市でした。女性の就職率も高くありません。

神戸市 副市長の寺﨑秀俊氏
神戸市 副市長の寺﨑秀俊氏

 この課題を解決するため、我々は150年前に立ち戻りオープンイノベーションに注力してきました。そのためにはスタートアップを集め、皆のマインドセットを切り替えなければ人口問題も産業構造も解決しません。(2019年9月掲載の)久元喜造神戸市長のインタビューでも「実験都市」という表現を使いましたが、我々はどんな提案もウェルカムです。

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