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“人を育てる”ためのオープンイノベーション--三菱電機エンジニアリングの「創発活動」とは

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2020年03月17日 08時00分
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 既存事業の枠に収まらない新たな成長の可能性を模索するべく、大企業で続々と生まれている新規事業開発の取り組み。しかしその一方で、事業開発そのものは主目的とせず、人材開発・育成に重点を置いた活動を続けているのが、三菱電機エンジニアリングだ。「創造性開発活動」として2014年から新たな取り組みを開始し、徐々にその活動を本格化させてきた。

三菱電機エンジニアリング 名古屋事業所の脇田健一氏
三菱電機エンジニアリング 名古屋事業所 モータ・機器技術部 部長の脇田健一氏

 その中の1つとして、2018年に同社とともに金属加工メーカーのアイザワが企画した卓上ゴトク「can+ro(キャンロ)」のクラウドファンディングを実施したところ、目標金額の551%を達成するなど目に見える成果も上がってきている。こうしたプロジェクトはどのような経緯を経て実現に至ったのか、同社名古屋事業所の脇田健一氏に話を聞いた。

「中小企業」と新しいアイデアに取り組む理由

——御社が取り組まれている「創造性開発活動」とは、どういうものなのか教えていただけますか。

 創造性開発(創発)活動というのは、当社の人材の創造性を高めるために社内のさまざまな部署の人をつなげて、新しいアイデアを生み出して事業を作っていくというものです。創造的なデザイン思考と、論理的な視点のシステム思考の実践を通して、人の観察力や発想力を強化して、イノベーションを生まれやすくしていこうという考え方です。

 しかし、新規事業を興すためには、先にイノベーションが起こりやすい組織風土の醸成や、創造する能力を持った人材の育成、そのための新しい手法の獲得が必要だと感じていました。そこで2014年に、まずは社内ハッカソンから始めてみようということで、2016年までの3年間に渡って実施しました。

 このハッカソンは大変盛り上がりました。ハッカソン終了後、有志の社員が同じやり方で一般のコンテストに応募し、MashupAwardsでは2016年と2017年、2年連続で賞をいただくこともできました。社外でも同じ取り組み方を試して成果が上がったことで、当社のやり方自体は間違っていなかったという確信にもつながりました。

——2016年にハッカソンが終わった後、社内ではどういった動きがありましたか。

 2017年度にはハッカソンの内容をもとにした研修講座を立ち上げるべく準備を始めました。それにより2018年度からは当社の研修として、「創造性開発講座」を開講して創造性を高める研修を始めています。その他に「創発推進チーム」というものも立ち上げました。

 創発推進チームでは、その講座の内容が社外でも本当に通用するのかを確認し、改善し続けながら、社内にフィードバックを行い、事業共創基盤を作っていく活動を行っています。社外の方々と関わることで新しい情報や知見が入ってきますし、事業機会の獲得になるかもしれません。活動している人たちのチャレンジ精神を育んで、行動できる人材の育成にもつながればとも思っています。

——そういった社外との共創の成果の1つとして生まれたのが、クラウドファンディングを実施したプロダクトですね。

 テーブルの上で焚き火がしたい、という思いから生まれた「can+ro」というもので、すでに商品化が進んでいます。精密板金で知られているアイザワさんと一緒にアイデア出しやプロトタイプ作りをして、クラウドファンディングで募集しました。目標金額における達成率は551%、354人から約165万円の支援を得ることができ、目標を大幅に超える成功に終わりました。

上下に振ることで脚を開閉する、メカニカルなギミックも魅力
ロウソクの明かりがスリットを通して揺らぐ雰囲気が特徴の「can+ro」。上下に振ることで脚を開閉する、メカニカルなギミックも魅力

——そのプロジェクトの流れを詳しく教えていただけますか。

 最初はアイデア出しの形で3カ月間、先方社員と当社社員で、当社の創造性開発手法を使ったワークショップを実施し、最後に先方の社長に企画をプレゼンしました。残念ながらそのときのアイデアは全て否決されたのですが、創造性開発手法に興味を持った社長がもう一度リアルテーマでやりたいとのことで、改めて取り組み、先方の精密板金の技術を用いたcan+roのアイデアが出てきたんです。

 2019年2月にスタートし、3月には試作に入りました。アウトドアイベントやメーカーフェアに出展しながら、意見を拾ったりアンケートを集めたりして、9月からは商標やPL法への対応も行って、12月からクラウドファンディングで公開したという流れです。

——can+roにはどういったメンバーが関わったのですか。

 アイザワさん側でアイデア出しに関わったのは3人で、事務の女性の方と、現場の金属加工をしている職人の方2人。そこに当社のメンバー2人が加わって、3週間……といっても土曜日に1回ずつですので3回だけ集まって、最終的に生まれたアイデアがcan+roでした。

 社長がチャレンジ精神旺盛な方で、昔同じような取り組みを自社でやったことがあったものの、あまりうまくいかなかったと。従業員のモチベーションを上げていきたいという社長の思いから、今回のようなBtoCの取り組みも以前からされてきたそうですが、もっとやりたいということで我々の話を聞いていただけました。

キャプション
使っていないときは折りたたんで収納できる

——アイザワさんもそうですが、日本には優れた技術をもつ町工場などが多いとよく言われています。そういったモノづくりを続ける中小企業に対して御社はどのような考えをお持ちですか。

 私は普段エンジニアとして製造に関わっているので分かるのですが、我々大手企業には密接な協力関係にある中小企業さんがかなりの数存在しています。ですので、中小企業さんがより元気に、発想豊かに、活動的になっていただかないと、大手企業も事業継続が難しくなってしまうという実情があります。

 そういう意味で、中小企業でも新しいアイデアを元にいろいろなものが作れる、発想できる、といった気付きを提供することが、将来的には我々の利益にもなってくるのではないかと思います。ですので、中小企業さんにターゲットを絞って協力させていただくという考えでやっています。

「can+ro」を手にする脇田氏。ロウソクの明かりがスリットを通して揺らぐ雰囲気が特徴だという

 ちなみにcan+roについては、アイザワさんのもつアセットを活かして、アイデアで売れるものを作っている形ですから、新たな設備投資はありませんでした。本業で利用している身の回りの材料と機械だけで実現できたのも良かったと思います。

 ※アイザワでは3月16日より、クラウドファンディング第2弾となる“連れ出せる”暖炉「DAN+RO(ダンロ)」の支援を、「Makuake(マクアケ)」にて募集中。

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