“人を育てる”ためのオープンイノベーション--三菱電機エンジニアリングの「創発活動」とは - (page 2)

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2020年03月17日 08時00分

離れた地域にいるメンバーと活動。本業とはしっかり時間を分けて

——そもそも創造性開発活動を始めることになったきっかけは何だったのでしょう。

 当社は事業所が国内に点在していて、それぞれにエンジニアがいるのですが、仕事の分野は拠点ごとに違う。そんな中で当時、「新しい事業を検討しなさい」という命題が会社から与えられました。このとき、点在する事業所のエンジニアたちを横でつなげれば新しい製品や事業が生まれるのではないかと考えたんです。

 今は8人のメンバーがいますが、各メンバーの勤める事業所は全国に散らばっています。私は名古屋ですが、東京にもいますし、一番遠いところは福山ですね。場所もバラバラなら、仕事の内容もバラバラ。そういう意味では、普段なら全く接点のないようなメンバーが一緒にやっている感じになります。

——このような取組みに、地方の事業所にいるメンバーが散在しているのは珍しいように思います。何かしようとしても足並みが揃いにくいみたいなことはありませんでしたか。

 最初に活動のための“箱”を作ったわけではないのが特徴的なところだと思うんですよね。ハッカソンを3年続けてきたなかで、もっと継続したい、もっと違ったことができるんじゃないか、と考える人たちが出てきました。そういう熱意のある人たちが自ら手を挙げて、1つの枠組みでやっていきましょうとなった。みんな元からやる気はありますから、普段はバラバラのところで働いていても、自然に集まって、主体的に進んでいく形ができているのかなと思います。

 リアルに集まっているのは月1回の全体会議です。そこで進捗などを確認しますが、あとはSkypeや電話、メールでやりとりしていて、相談事があるときは定時の後で時間をとったりしています。同じ1つのプロジェクトでも担当範囲はそれぞれ異なるので、8人全員集まらなくてもいいケースが多いんです。

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——メンバーのみなさんは本業と創造性開発活動のバランスをどのようにとっているのでしょう。

 時間を区切る必要はどうしてもありますね。たとえば定時後、残業の時間をこの活動に充てたり、ミーティングも土曜日に設定したり、使う時間をあらかじめ決めて本業のときと切り替えています。もちろん業務の一環ですから普通に残業としてカウントしています。各メンバーの上長もそのあたりは理解していただいて、許可も得て、うまく調整しながらできていると思います。

——創造性開発活動におけるプロジェクトや企画するプロダクトにおいて、チームやご自身が共通でコンセプトにしているようなものはありますか。

 今の世の中にない、新しい切り口をしっかり押さえて形にするべきとは考えています。具体的な形というよりは、考え方・見方みたいなところ。それが感じられるかどうかを、次のステップに進むときの基準にしていますね。

 それと、多様性を確保した創造的な、機動的なメンバーで、学習しながら実行するチームになるという価値観を常にメンバーと共有しながら進めています。机上の議論に時間をかけず、まずはやってみる。失敗したら早く戻るみたいなところは大事にしています。

——2014年から創造性開発活動を続けてきたなかで、難しかったのはどんなことですか。

 私自身、年々手応えを感じてきています。しかし、会社にこの活動を正しく理解してもらい、長く継続できないと本当の効果は生まれません。私も無条件でこの活動を継続できているわけではなく、毎年活動内容と実績を会社に報告し、次年度も続ける価値を会社で判断してもらい、許可を得て活動しています。

 人材育成がメインですから、売上がいくら上がったからどう、というようなものではありません。その成果をしっかり会社側に理解してもらうところは当然苦労しますね。ある程度時間がかかることは会社側にも理解してもらえたおかげで、結果として長期スパンで取り組めているところはあるのかなと思います。

——親会社である三菱電機とは、創造性開発活動に関わるところで何かしら連携はされていますか。

 直接関係しているところはないです。三菱電機の方はもう少し大きな意味合いで、イノベーション活動を展開されていると聞いています。我々はどちらかというと人材育成をしながら、イノベーションが起きる組織風土を作って新規事業開発につなげていくのが目的です。ただ、今後はグループ会社としてのシナジー効果を出していく意味でも連携を強めていければとは思っています。

直接的な利益のない活動--KPI設定は人材の成長度合いに?

——新規事業開発を手がける企業の共通課題として、評価方法やインセンティブの与え方をどうするか、というものがあるかと思います。そのあたりのお考えはいかがですか。

 我々も何をKPIとするかはまだ決めきれていません。今はやる気のある人たちが集まっている状態なので、評価に関係なくプロジェクトは進むのですが、もっと一般の社員にも広がっていったときには評価は何かしら必要になりますよね。

 今のところ考えているのは、覚えて間もない人、講座で教えられる人、トップクラスのノウハウをもつ人といった基準みたいなものを作って、会社で認定し称号を与えるというものです。トップクラスの人は事業開発できる人材とすれば、評価としてフィードバックしやすくなるのではないかと思います。

——創造性開発活動に関わっている他7人の社員は、関わる前と後とで本業に対する取り組み方が変わったなど、何らかの効果はありましたか。

 7人のメンバーはもう、そのあたりはクリアしていると言いますか、もともと前向きに自発的に動く人たちですので、目に見えて変わったような変化はありません。ただ、can+roのときは、先方の社長にプロジェクトの前後で御社社員に変化がないか伺ったところ、会議での意見の出し方、話し方、進め方が変わって、建設的に物事を進められるようになったとのことでした。

 実は我々の創造性開発手法には、共創していく際にはどういう話し方、どういう意見の出し方をすべきかが学習内容として含まれていますが、このような具体的な方法は中小企業だと勉強する機会がなく、そういう意味でも非常にいい機会になったという感想を社長からいただきましたね。

——もしKPIを考えるとするなら、成果物の完成度よりは、その成果物を通して人材がどう変わっていったかを測るような感じになりそうですね。

 リーダーシップがとれて、グループをまとめられるようになり、新しいプロジェクトのリーダーになる。そういうことになれば、成果が出てきたと言えるのかなと思います。みんなで作り上げていくところがしっかりできるようになれば、新しいことに取り組む人、チャレンジする人がどんどん出てきて、結果として新しいものが生まれてくるのかなとも思いますね。

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——御社のように社員が多いと、創造性開発活動で得たものを組織全体にまで浸透させていくのは一筋縄ではいかないような気もします。

 ハードルはかなり高いとは思います。今は創造性開発手法を用途別に作る活動もしています。事業系のプログラム以外に、採用向けや現場の改善向けのプログラムなども作っていて、新しい切り口で職場の困りごとを改善できるようにしていくことに取り組んでいます。

 また、先にも話しましたが人事部による創造性開発講座を受講できるようにもなっていますので、受講者を中心に我々が得たノウハウを広めていけるのではないかと考えています。

——創造性開発活動を通じて、今後の目指すべきところを教えてください。

 創造性開発活動を続けてきてわかったのが、本業のアプローチと全く違うこと。本業は「実行」に重点を置いていますが、創造性開発活動は「探索型」なんですね。考え方、行動の仕方が全く反対になってくるんです。ですので、講座で教えるときには、普段とは全く異なる考え方・行動の仕方を教えます、と最初にお断りするようにしています。そうしないと「実行モード」に慣れた社員が混乱してしまうんです。

 社外の企業との取り組みは2年目が終わろうとしています。最近、これは新たな事業機会を生む1つの接点にもなりうると感じています。一緒に取り組んでいくなかで中小企業さんの困りごと、課題が見えてくるため、さらに進めていくと事業接点や事業機会の創出になり、事業の拡大に繋がる可能性があります。活動を継続していくにあたっては、その点をより意識していきたいと思っています。

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