世の中は今、VUCA時代に突入していると言われる。変化の激しい、予測困難な状況にあるという意味だが、これは新規事業を創出していくうえでも頭に入れておくべき事柄だ。従来は当たり前とされてきた考え方とは異なる、今の時代に沿った新しい常識をもってビジネスを考えていくべきではないか。
2月19日、新規事業開発をテーマに開催されたイベント「CNET Japan Live 2020 企業成長に欠かせないイノベーションの起こし方」で、そうした方向性を示したのが、企業の新規事業開発を支援するWHITEの吉田航也氏。同氏は新規事業開発において誤解されているポイントと、それに代わる新常識を解説し、“楽しくなる”新規事業開発を提言した。
吉田氏が講演の冒頭で紹介したのは、WHITEが「新規事業を作っていくときに一番大事にしている」という三角形のモデル。「提供価値」「収益モデル」「提供手段」の3つが「顧客」を中心にして囲んでいる図で、「この三角形をちゃんと作っていかないと事業として成り立たない」というものだ。
起業家の場合はこの4つそれぞれに対応する「Creativity」「Business」「Technology」「Execution」という能力全てを兼ね備えているのが一般的。ところが、既存事業から新規事業開発担当になった企業の社員で、同じように全方位をカバーできる人材を見付けるのは難しい。そのため、同氏は「組織の力で三角形の能力を補完し合いながら作っていくのが大事なのではないか」という考えで企業の支援に取り組んでいると話す。
ただ、こうした基本的な要素を押さえていても、複雑さを増している現代の産業構造においては、かつてのように既存の製品の価格やデザイン性を変えれば成功する、という単純な話ではなくなってきているという。例えば新幹線の競合は飛行機だ、と言い切ることは今はできない。新幹線の大きな競合は、実際にはビデオチャットツールと見なされることもあるからだ。
このような複雑で予測困難ないわゆるVUCA時代は、変化に柔軟に対応していかなければ企業は生き残れない。新規事業を開発していくうえでも新しい考え方で物事を捉えていく必要があるが、主にそれを主導するリーダー、あるいは意志決定者には、半ば先入観のような形ですり込まれている3つの誤解がある、と同氏は主張する。
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