新型コロナウイルス関連

テレワークに必要な4つの要素--「できることから始めてみる」が成功の鍵 - (page 2)

ブイキューブ2020年02月24日 08時00分

テレワークの目的に応じたツールの導入を

 文化、制度が整ってようやく「ツール」がその役割を発揮する。テレワークをする理由は部門や役職、個人によって異なるため、すでに使っているメールやスケジューラーで事足りる部門では、新たなツールを導入せずにテレワークを始めてみてもありだ。用途を想定してチャットツールを導入したり、営業部門であればインサイドセールスツールを導入するのもいい。

 ここで大切なのは「自分の業務でテレワークを取り入れるには何が必要か?」と考え、それに即したツールを導入・運用することにある。「ツールの使い方に慣れず業務効率が下がった」などの課題も、その大半は利用方法を積極的に覚えようとしないという心理的なハードルが原因だと考えられ、1人1人がテレワークを自分ゴト化することによって改善が見込める。

テレワークの社会実装には「場所」が必要

 最後の要素は場所。これはテレワークの課題としてよく挙げられるセキュリティの問題とも密接な関係がある。

 通信やツールの進化にともない、10年前に比べるとオフィス以外の場所で仕事をできる環境はだいぶ整ってきた。しかし、秘匿性の高い情報を扱うケースや緊急対応が発生するケースを考えると、外出先で仕事をするのに適した環境が十分に整っているとはいえない状況にある。カフェやコワーキングスペースで重要な書類をPCの画面に表示している人や、具体的な社名を口に出しながら大きな声で電話をする人は今でもよく見かける。

 また今回の場合は在宅勤務による自宅での作業に取り組まれる人も多く想定されるが、例えばウェブ会議のカメラで背景にプライベートなものが映り込んでしまうことに抵抗感がある人もいるだろう。日本では自宅に書斎をもつ人が少ないため、リビングで仕事をすることに慣れていないなどの理由で、自宅が必ずしも仕事に集中できる環境ではない場合もある。

 昨今は空間をシェアする方向性の考え方やサービスも浸透してきているが、ビジネスシーンでプライベートな空間の需要がなくなることはないと予想される。テレワークのためのコミュニケーションブース「テレキューブ」も展開しているが、場所の問題については、今回の危機的状況下のみならず、これから社会全体で取り組む余地のある課題だと考えている。

4つの要素が揃って初めてテレワークは成功する

 ここまで、テレワークに必要な文化、制度、ツール、場所の4つの要素を紹介した。テレワーク導入の難しさの正体は、これら4つの要素が相互に関連し、どれか1つが欠けてもうまくいかない点にある。テレワークの意義を自分ゴト化する文化、その受け皿となる制度、文化と制度の土壌でテレワークを実施するためのツール、在宅勤務やウェブ会議などに安心して参加できる場所、これら4つの要素が揃って初めてテレワークはうまくいく。まずは社員1人1人が「自分の業務がテレワークによってどう変わるのか?」を考える機会を作り、その目的に則して、できることから始めてみるのがいいだろう。

 本稿では新型コロナウイルスによる肺炎の感染対策という目的を想定しているが、家から一歩も出ずに仕事をできる人はまだまだ限られるかと思われる。そのなかでも、例えばモバイルワークを取り入れ、ラッシュ時間帯を避けることをしてみるといったことや、在宅ワークとウェブ会議を組み合わせてみたり、商談にウェブ会議を取り入れるなど、第一歩として始められる部分は少なくない。

これからのテレワークの姿

 「テレワーク=終日の在宅勤務」というイメージも根強くあるが、これまで対面でしていた仕事を遠隔で実施する方法は、いずれも立派なテレワーク。特に日本のビジネス慣習としてはまだまだ新しいウェブ会議商談も、これを機に生産性向上の観点で継続していく価値がある。顧客にとっても「日程調整がしやすくなる」「会議室の確保をしなくてすむ」といったメリットがあり、近年ではこうしたスタイルがインサイドセールという形で普及してきていることから、今回のような危機的状況下であるかどうかにかかわらず、顧客にウェブ会議を提案することが当たり前になる日も近いのではないだろうか。

「できることから始めてみる」が成功の鍵

 テレワーク成功の鍵は「できることから始めてみる」という考え方。当面は新型コロナウイルスによる肺炎の感染対策という明確な目的があるが、本質的には「テレワークを選択肢としてもつこと」が重要と考えている。

 ブイキューブでも創業当初からウェブ会議システムの提供を事業軸としているものの、対面に勝るコミュニケーションはないと考えている。特に旧来からビジネスシーンにおいて、間合いを読むことが重視されてきた日本では、オフィスでの雑談から派生するちょっとしたアイデアがビジネスにもたらすメリットを、代替することができないのも事実だ。

 全社一斉のテレワーク導入という強制的な枠組みを作るのではなく、選択肢の1つとしてテレワークを選べる環境を持つことこそが、今回のような危機的状況下でもスムーズにテレワークへと移行できる組織の強さに繋がる。これを機に「0か100か」「在宅かオフィスか」ではない「選べる働き方」のあり方を考えてみてはいかがだろうか。

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