ソニーがスタートアップへの支援に本腰を入れている。現在「Sony Innovation Fund」(SIF)と大和証券グループとの共同ファンド「Innovation Growth Fund」の2つを用意し、約60のスタートアップへの出資を実行。ジャンルはAI、ロボティクスをはじめ、ドローン、メディカル、エンターテインメントと10に及ぶ。
設立から3年、2つの組織において、どんな支援をし、成果が見えてきたのか、Sony Innovation Fundの投資・運営責任者、Innovation Growth Ventures 代表取締役の土川元氏が話した。
Sony Innovation Fundは2016年7月に設立。テクノロジー市場がスピーディーに変化する中、アセットの早期獲得を目指しスタートした。ファンド規模は100億円で、1社あたりの最大出資額は3億円。アーリーステージのスタートアップを対象にしている。
ソニー内には、土川氏を含む6人で構成する投資委員会を設置。全会一致で投資先を決定しているという。投資先は、シリコンバレー、東京、欧州に7~8人の部隊がおり、そのメンバーが探し出してきているとのこと。2016年当時はロボティクスとAIを入り口にスタートしたが、より具体的な分野に降りていき、2019年には、大和証券グループとの共同ファンド組成のための合弁会社Innovation Growth Venturesを設立した。
Innovation Growth Fundでは、ファンド規模を160億円に拡大したほか、1社あたりへの出資額も最大10億円となり、対象もミドル、レイトステージにしているという。
土川氏は「3年間の活動実績として、スクリーニングは約6000社、面談は2000社以上、出資したスタートアップは60社にのぼる。当初のテーマとしていたAIは着実に現実のものになってきている。ロボティクスは少しずつ進行していっている印象。ドローンは数年間停滞していたと思ったが、米国で動きが出てきており、2020年の注目分野に位置づけている」と出資分野の現状について解説した。
地域別の投資規模は、件数で見ると日本、米国、欧州の順。「米国の企業が中心になるかと思ったが、日本の案件が結構多い。R&Dのリソースも日本にあるのでサポートしやすいという環境にあることも大きい」とした。すでに、出資先のスタートアップの技術をソニー製品の中に組み込んだり、実証実験する際にソニーのリソースを活用したりといった、コラボレーションを開始しているという。
土川氏は「とにかくスピードが早いため、スピード感を持ってやっていくことが大事。出資会社への話し合いから払込までにかかる時間は4週間程度」とスピードを強調する。今後については、インドに新拠点を設置することを明らかにし、インドへの拡大も図る。
「この3年間で、投資先を探すメンバーは、スカウティングやエグゼキューションなどのクロストレーニングを積み、あらゆる局面に対応できるようになってきた。それは大きな成果と受け止めている。投資先については、ソニー内における関係部署の"尖った人”の意見を聞くなど、社内とも連携しながら進めている」とした。
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