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競合が特許を取ったけれど、対抗すべき?--スタートアップのための「特許なんでも相談室」

大谷 寛(弁理士)2020年02月21日 08時00分
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 同連載「特許なんでも相談室」では、スタートアップの方々からいただいた特許にまつわる質問や疑問に、大谷寛弁理士が分かりやすく回答していきます。第2回でご紹介するご質問はこちら。

Q.「競合が特許を取ったらしいです。どう対応すればよいですか?われわれも特許を取得しようとおもいます」

A.「まずは権利範囲を確認しましょう。競合によるPRが誇張であることが少なくありません」

キャプション

【解説】

 競合が特許を取ったとPRをして話題になり、心配になってご相談を受けることがあります。しかし、他社の事業を左右するような力をもつ特許を取得することは容易ではありません。どのような権利範囲となっているのかを正確に確認することが大切です。

 特許を取得した発明は、文章によってその範囲が記述されています。その発明を特定するための要件がA+B+Cのように記述され、それらのすべての要件を充足する内容が特許発明の権利範囲に含まれることとなります。例外的な取り扱いもありますが、原則としてA+B+Cを一語一句充足する必要があり、わずかにでも相違する点があれば権利範囲には含まれません。したがって、競合が特許を取得したというのであれば、どのように発明が記述されているのかを確認する必要があります。PRにおいて競合が自ら行う特許発明の説明は往々にして権利範囲が誇張されています。

 また、よくある誤解は、特許出願がされているだけでまだ審査を通過していない状況で、特許が取得されてしまったと考えてしまうケースです。特許出願がなされると1年半後に公開公報というかたちで公開されるのですが、このことをもって誤解が生じることがあります。また単に特許出願をしたという他社のPRをみて誤解が生じることもあります。いずれにしても、出願がされたのみでは特許は取得されていないという区別をしたいですね。

 特許出願は1年半後に公開されるという性質上、競合が特許出願をしたばかりであるとその内容を知るすべがありません。できることの1つは、競合による特許出願の時期に何が公知であったかを確認することです。特許出願が審査を通過するためにはその出願日において新しいことが求められます。

 出願日において公知であった内容を包含するような特許が有効に取得されることはあり得ませんので、自己否定のようではありますが、侵害が気になる自社の特徴について、公知であったと言えるように調査をしておくことは有益です。仮に出願日において公知であった内容を包含するような特許が取得されてしまった場合には、特許無効審判という手続によって特許を無効にし、特許権を遡及的に消滅させることができます。

 競合が特許を取得しているなら自分たちも取得すればよいでしょうか?これはあまり関係がありません。特許権の効力は、他人に無断で特許発明を用いさせないことであり、ある発明を自社が用いることができるかどうかは自社特許ではなく他社特許との関係で定まるためです。問題となっている競合が用いざるを得ない特許を自社で取得できるのであれば、互いに牽制しあって他社特許のリスクは抑制されますが、それは自社で特許を取得したことの直接的な効果ではなく間接的なものです。

 有力な特許を取得できれば、他社の事業を停止させることもできます。そのような影響力をもつ権利が容易に取得できるということはなく、冷静に対応していきます。

CNET Japanでは、スタートアップの皆様からの特許に関する疑問を受け付けています。ご質問がある方は、大谷弁理士のTwitter(@kan_otani)までご連絡ください。

大谷 寛(おおたに かん)

六本木通り特許事務所

弁理士

2003年 慶應義塾大学理工学部卒業。2005年 ハーバード大学大学院博士課程中退(応用物理学修士)。2006-2011年 谷・阿部特許事務所 。2011-2012年 アンダーソン・毛利・友常法律事務所。2012-2016年大野総合法律事務所。2017年 六本木通り特許事務所設立。

2016年12月-2019年12月 株式会社オークファン社外取締役。

2017年4月-2019年3月 日本弁理士会関東支部中小企業ベンチャー支援委員会ベンチャー部会長。

2019年4月 ベンチャー知財研究会主宰。

2014年以降、主要業界誌にて日本を代表する特許の専門家として選ばれる。

事業を左右する特許商標などの知財形成をスタートアップの限られたリソースの中で実現することに注力する。

Twitter @kan_otani

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