――入居者向けサービス「OYO PASSPORT」の使用履歴なども重要なデータになりそうですね。
現在提携サービスは100程度まで増えていますので、どの年代のお客様がどんなサービスに興味があるのか、リピーターはどのくらいいるのかというデータがとれます。これを活用すれば、将来的には物件を使ったサンプリングなどもできますし、活用の場は広がると思います。
――家賃のダイナミックプライシングなどにもデータ活用が生きそうですが。
現時点で家賃のダイナミックプライシングは導入していません。宿泊施設ではないので1日などの超短期間で変える必要はありませんし、導入すべき物件とそうでない物件の見極めが難しい。それよりもキャンペーンを実施した方が現時点では効果があると思っています。
入居者の方は家賃に対する感度がもちろん高く、上げると入居率は露骨に下がります。ただ、多少高くても入居者が絶えない物件もあって、山の手線内で築浅、家具家電付き物件は相当引き合いがあります。マンスリーニーズもすごく高いですね。
――2月に、OYO LIFE代表に就任されました。今後の方針を教えてくだい。
私はOYO LIFE参画当初は、グロース統括責任者という立場でした。その名の通り会社を成長させるための部署で、とにかくがむしゃらにやれることは全部やりました。今後の方針としては、長期的なプラットフォームとしてのBtoB、BtoCビジネスを打ち出していきたいと考えています。「新しい賃貸の形」「今までは全く違う住環境の提案」といったOYO LIFEが提供できるビジネスのビジョンを明確にしていきたい。
戦略としては、賃貸のプラットフォームになりたいと思っています。要はお客様と物件のマッチングです。今はサブリースという形で丸抱えでやっていますが、将来的には借り上げていない物件も扱っていきたい。ただし、ウェブで簡単に探せて、契約までがオンラインでできる、その日のうちに契約が完了するというOYO LIFEならではの便利さは踏襲していく考えです。
もう一つはレンタルやサブスクサービスのプラットフォームになりたいと考えています。モノを買うのではなく借りて使うのは、新しい物の考え方を好むOYO LIFEのお客様にマッチすると思います。今、協業先を増やすなど少しずつ始めていますが、レンタルサービスが実現すれば、OYOのウェブサイト上に広告を出すことや、住居自体をメディアにできる、そこに向けて取り組んでいきたいと思っています。
もう一つは社内的なことですが、ネガティブなニュースが出たことによって、士気が下がらないように心がけたいと思っています。経営方針が二転三転するとスタッフのストレスになります。しかし機敏に動けることは事業を運営する上で大きな強みでもあります。安定した基盤を持った上で機敏に動ける文化を作りたいと思っています。
――課題に感じていることはありますか。
OYO LIFEは1年でここまでのビジネスになりましたから、これから2年、3年とどういったビジネスモデルに発展していけるのか、が課題だと思っています。あとはやはりオペレーションですね。成長するほどにオペレーションは当然拡大していきますので、どこまでを社内でやり、どこからを協力会社にお願いするのか。複雑な部分なので、ここを見極めていきたいです。
OYO LIFEのビジネスは、物件数から言えばマーケットはまだまだ小さい。そのため、競合をあまり気にしてはいなくて、むしろ、自分たちが今後どうやって成長していくかに集中しています。先程もお話したレンタルサービスや賃貸プラットフォーマーとしての立ち位置もそうですが、賃貸不動産業をベースに新しいビジネスを見出していきたいと考えています。
大手システムインテグレーターを経て、2008年より現職。経営学修士(専門職)。IT業界の経験に裏打ちされた視点と、経営の視点の両面から、ITやテクロノジーを軸とした中長期の成長戦略立案・事業戦略立案や新規ビジネス開発、アライアンス支援を得意とする。金融・通信・不動産・物流・エネルギー・ホテルなどの幅広い業界を守備範囲とし、近年は特に不動産テック等のTech系ビジネスやビッグデータ、AI、ロボットなど最新テクノロジー分野に関わるテーマを中心に手掛ける。2018年より一般社団法人不動産テック協会の顧問も務める。
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