5Gネットワークのテストは、自動運転車プロジェクトの拠点となっているメディカルディストリクト(医療地区)の小さな区域で実施される。このネットワークが、スマートシティのインフラだけで利用されるのか、それとも住民も利用できるようになるのかは、不明だ。だが、プライベートモバイルネットワークを使用することで、ラスベガス市は通信事業者に月額利用料金を支払う必要がなくなり、浮いたコストをほかのことに充てられるので、スマートシティ計画をより早く拡大することが可能になる。
GartnerのシニアアナリストであるBill Menezes氏は、プライベート5Gの計画について、5Gを市が望むように管理できるようになるので、理にかなっている、と話す。
「ラスベガスは、一般のネットワークの展開を待たずに、市の要件に合わせて5Gのカバレッジの場所やタイミングを制御することができる」とMenezes氏。ラスベガス市は、データにアクセスして制御できるだけでなく、設置場所や用地などの点に関しても、通信事業者には得られない強みを持つことになる。
ネットワークの構築には費用がかかるが、既存の4G LTEや公共のWi-Fiネットワークを使用するコストと同等である限り、「インフラを所有することには間違いなく価値がある」とMenezes氏は述べた。
2016年、ラスベガス市議会はダウンタウンのある一画を Innovation District(イノベーション地区)に指定した。現在、その地区は、安全性や経済成長、輸送、教育、社会福祉、ヘルスケアのためのテクノロジーをテストする場所として利用されている。「Smart Vegas」計画によると、人口増加によりインフラへの負担が増したこと、そして、CO2排出量の増大と犯罪率の上昇を受けて、イノベーション地区が制定されたという。
市内の至る所に設置されたセンサーが、交通の流れから不法侵入まで、ありとあらゆるデータを収集する。データは一般にも公開されるので、企業は住民や観光客向けに多くのアプリを開発することもできる。
NTTデータとの協力の下、ラスベガス市はセンサーを使用して、路上の車両の台数を数え、交差点で何台の自動車がアイドリングしているかを確認できるようにしている。これを利用して、信号機のタイミングを改善し、CO2排出量を削減することができる。次の段階では、街路自体が自ら判断を下す知性を備えるようになる。
ラスベガス市には、コネクテッドカーと「通信」することで、信号機のタイミングに関する情報を提供できる80の自律的な交差点と、インテリジェントな街路を備えた8つの交差点がすでに存在する。さらに、スマート化された公園も2つある。その1つは、ラスベガスで2017年10月1日に起きた銃乱射事件の犠牲者を追悼するために作られた「ヒーリングガーデン」だ。この事件では、カントリーミュージックフェスティバルに集まった観客に向かって、犯人がマンダレイ・ベイ・リゾート&カジノホテルから銃を乱射した。
CES 2020で発表されたスマート公園プロジェクトでは、カメラを使ってラスベガスの緑地にいる人々の動きを追跡する。市当局が夜通しパトロール隊を派遣する代わりに、招かれざる訪問者が見つかった場合、センサーが作動して、自動音声メッセージがスピーカーから流れるようになっている。メッセージを流しても訪問者が去らなければ、もっと容赦のない2回目のメッセージが再生され、システムによって警察が派遣される。
これと似たテクノロジーが、自撮りをするためにストラトスフィア・ホテル・カジノ&タワーの看板をよじ登る(そして、そこから落ちる)人々を制止するのにも使われており、日中の公園などの施設の利用状況に関するデータが、市の公園およびレクリエーション部門に提供されることになっている。
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