新型コロナウイルス関連

シャープ、全セグメントが黒字に--新型コロナウイルス影響長引けば湖北省外からの製品調達も

 シャープは、2019年度第3四半期累計(2019年4~12月)連結業績を発表。売上高は前年同期比0.9%減の1兆7555億円、営業利益は2.7%減の663億円、経常利益は3.4%増の641億円、当期純利益は16.9%減の524億円となった。

 また、第3四半期(2019年10~12月)の連結業績は、売上高は前年同期比1.2%減の6349億円、営業利益は38.5%増の294億円、経常利益は64.9%増の310億円、当期純利益は13.1%増の250億円となった。

2019年度第1~3四半期累計連結業績概要
2019年度第1~3四半期累計連結業績概要
2019年度第3四半期連結業績概要
2019年度第3四半期連結業績概要

 シャープ 代表取締役兼副社長執行役員の野村勝明氏は「米中貿易摩擦が長期化するなど、厳しい事業環境は継続したものの、着実なトランスフォーメーションの進展などから、第3四半期も安定した収益を確保し、2018年度第1四半期並の利益水準となった。2018年度第4四半期を底に回復基調にあり、各利益は第2四半期からさらに大きく伸長。利益率も引き続き上昇し、営業利益率は6四半期ぶりに4.5%を上回り、最終利益率も4%に迫る水準になった。営業利益率、最終利益率も3四半期連続で回復している。すべてのセグメントが黒字になっている」と総括した。

シャープ 代表取締役兼副社長執行役員の野村勝明氏
シャープ 代表取締役兼副社長執行役員の野村勝明氏

  第3四半期累計でのセグメント別業績では、スマートライフの売上高が前年同期比1.6%減の6626億円、営業利益は前年同期比34.5%増の351億円。

 「スマートライフは、第3四半期では増収増益になっている。白物家電は、海外でのローカルフィット家電が好調であり、エアコンや冷蔵庫、洗濯機が伸長。半導体、カメラモジュールなどのデバイスも増収になっている。だが、国内白物家電事業は、消費増税の反動があり、減益になった」とした。国内家電事業については「2014年の消費増税の際と比べると反動は小さかったが、戻り方は想定よりも弱かった。業界全体では、10月は前年比8割、11月が9割。12月は戻ると思ったが、9割程度に留まっている。シャープは、それを若干上回っている。暖冬の影響でエアコンなどが弱含みとなった。2020年は1~3月は、巻き返しを期待している。東京オリンピックに関連する需要にも期待したい」と述べた。

 8Kエコシステムの売上高は前年同期比8.2%減の8988億円、営業利益は前年同期比27.6%減の293億円。「ディスプレイデバイスは、特定顧客のスマホ向けパネルが伸長したが、新製品の発売時期が前年と異なったタブレット向けおよびPC向けパネルが減収となった。車載向けパネルも市場環境の影響を受けた。また、テレビは、中国市場では第1四半期が赤字であったが、それ以降は黒字になっている。日本のテレビ事業は、第3四半期は、消費増税の反動もあり、減収減益になっている」と述べた。

 ICTは、売上高が前年同期比51.0%増の2677億円、営業利益が前年同期比27.4%増の155億円。「通信は、キャリアの料金体系変更の影響があり、第3四半期は減収減益になったが、Dynabookが伸長。Dynabookは黒字を継続している。AIoTクラウドも伸長している」とした。

セグメント別売上高
セグメント別売上高
セグメント別営業利益
セグメント別営業利益

 一方、2019年度通期の業績予想を下方修正した。売上高は2000億円減の前年比2.1%増の2兆4500億円とした。利益の目標は据え置き、営業利益は18.8%増の1000億円、経常利益は37.7%増の950億円、当期純利益は7.8%増の800億円としている。

 「当社の回復基調は継続すると見ており、第4四半期の売上高、利益は、第3四半期を上回る見込みである。利益は第3四半期までは、ほぼ想定線で推移したが、デバイス事業の需要改革が想定より後ずれしたこと、一部で部材の供給不足の影響が見られることなど、想定とは異なる動きも見られる。量より質を優先し、売上げより、利益確保を優先する方針を再徹底する。これまでの実績と今後の状況を捉えて、売上高は通期予想を修正するが、各利益は期初予想を据え置くことにした」と述べた。

新型コロナウイルス、長期化すれば湖北省外から製品調達へ

 なお、新型コロナウイルスの影響については、「現時点で影響を合理的に算出することは困難であり、業績予想には反映していない」としたほか、「感染状況や地方政府、中央政府の動きを注視している。春節以降、2月9日までは生産を停止している状況にある。長期化するのであれば、湖北省内の工場で生産している一部製品については、中国国内の別の生産拠点で生産し、そこから調達することを考えたい」などとした。

 同社では、下期の主な取り組みとして、「顧客需要の回復を着実に取り込むことで、デバイス事業やディスプレイ事業は大幅に回復」、「新規顧客を獲得し、欧米・中国などグローバルで事業を拡大」、「エネルギー事業を始め、白物家電やテレビでもB2B事業を強化」、「5Gサービスの開始にあわせ、タイムリーに対応機器を展開」、「8K機器など新規商材による事業の強化」、「IoTやクラウド、スマートライフなどのサービスを拡大」、「異業種協業やM&Aなども活用し、上記の施策を着実に実現」の7つをあげている。

 「第3四半期は、顧客需要の確実な取り込みを図ったデバイスやディスプレイに加え、IoT機器の売上げも増加した。8Kテレビの新モデルを発売したほか、グローバルでのローカルフィット製品の投入、BtoB事業の展開も進めている。第4四半期は、アジアをはじめとするグローバルでの事業拡大、5G関連機器の売上げ拡大も見込んでいる。さらに、第3四半期から後ずれした案件も第4四半期で取り込める。また、東京オリンピック需要や、進入学需要も見込める。第4四半期は業績を伸ばすことができるだろう。環境の変化に対応した柔軟な事業経営を行うとともに、トランスフォーメーションを継続し、さらなる業績の回復、財務体質の改善、株主価値の向上を目指す」とした。

 また、2020年度から開始する新たな中期経営計画については、「施策を精査し、策定を進めている段階にある。8K、5G、AIoTへの取り組みを中心に事業拡大を図り、次の100年に向けた持続的成長ステージへと舵を切りたい。2019年度通期決算の発表後となる、2020年5月以降に説明の機会を設ける」と述べた。

 なお、ジャパンディスプレイの白山工場の取得については「社内で業績への寄与やリスク、価格や条件を検討している。白山工場は、特定顧客向け(アップル)にパネルを生産している当社の亀山第1工場よりも設備が新しい」などとした。

2019年通期連結業績予想
2019年通期連結業績予想

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