最初に「やらないこと」を決めるのが大事--WHITEに聞く新規事業で陥りがちな“課題” - (page 2)

ネックは新規事業担当者の「途中変更」

——担当者が変わってしまうと、もうどうしようもないのでしょうか。

 僕らとしては、そのチームの“熱量”がプロジェクトを前進させていく原動力だと思っています。チームメンバー全員がプロジェクトを信じていないとうまくは進みません。だから、せっかくチームの熱量が高まっても、新しい担当者に切り替わると、チームとその人の熱量にはどうしても差ができる。その人の熱量をチームと同じレベルまで急に上げていくのは難しいんですよね。

 熱量のない方は、よく現在の状況を第三者っぽくお話されたりします。お話を聞いていくと、その人自身がプロジェクトを本当に成功させられると思っていなくて、むしろプロジェクト自体を潰したいと考えていたりするんです。でも会社的に事情があって続けないといけない、みたいな。

株式会社WHITE 執行役員 Project Management Div. マネージャー 吉田航也氏

 最悪の場合はプロジェクト事態の中止を提案することもありますが、そうならないためにもどこにある問題を解消すればその人が前向きに取り組めるのかヒアリングをしたり、「自分の事業である」と自分ごと化できるようにプロセスを工夫したりしています。一番効果があるのは顧客のもとに話を聞きに行くことです。新規事業開発において、チームの仮説の妥当性を判断する際にエンドユーザーへ直接話しを聞きに行き、フィードバックを得ることは欠かすことのできないプロセスです。

 その場に新しい担当者を連れて行き、自ら顧客の生の声を聞いてもらうことで引き継ぎ書類だけでは理解できないプロジェクトの重要性を理解することができます。実際に連れ出すのが難しい場合は、インタビュー風景を映像に撮り生声を見せることも効果的です。その上で、現状の仮説のブラッシュアップポイントを共に議論することができれば上手くいくことがあります。

 会社の中で事業を起こす挑戦って誰しもができるわけではないですし、面白いチャレンジだと思っています。大変なことも多いですけど、それで淘汰されていくのはすごくもったいない。新規事業を実現させるためのプロセスを支援するというのはもちろんですが、共に作り上げていく「チームメンバー」として、精神面のサポートも意識して行うようにしています。

——その他の部分で新規事業の担当者が持つべきマインドや能力、もしくは注意すべきことはありますか。

 新規事業開発を始めるにあたって、発想が限定的になってしまうという声はよく聞きます。業界のバイアスにまみれて頭が凝り固まっているということですね。そこをブレイクスルーする、バイアスを突破していくための視点や方法を求めている方はたくさんいらっしゃいます。

——柔軟な考え方に変えるには、外部とのコミュニケーションも有効かと思います。そのあたりは個人活動に依存するところも多いかもしれませんが、会社がアクセラレーターとして動いたり、オープンイノベーションに取り組んだりして外部との接点を作る手もありますよね。

 アクセラレーターやオープンイノベーションの取り組み自体はいいことだと思っています。ただ、まずは自分にかかっているバイアスを打開していく必要があるんじゃないかなと。バイアスまみれのままで外部の人たちと一緒に活動しても、柔軟に考えられなければ新しいアイデアを生み出すことは難しいのではないでしょうか。

 なので僕らが支援させていただく際には、バイアスを破壊するためのフレームワークや、視点の変える手法をプロセスの中に用意しています。

 自分たちのバイアスに気付きさえすれば、極論、その後は僕らがいなくても新しい視点でどんどんアイデアを生み出すことが出来ます。そうしてからアクセラレーターやオープンイノベーションなど、外部の人たちとのコラボレーションを進められるといいですよね。

「デジタル・トランスフォーメーション・レンズ」事業サービスを抽象的に捉え、新しい視点・体験価値に活用していくフレームワーク
「デジタル・トランスフォーメーション・レンズ」事業サービスを抽象的に捉え、新しい視点・体験価値に活用していくフレームワーク

AIで実現する新規事業開発とは

——今後、WHITEは日本企業にとってどのような存在になっていきたいと考えていますか。

 大きいことを言うようですが、僕らの存在で日本の企業のイノベーションや新規事業へのチャレンジがもっと楽しいものになって、実現化する可能性が少しでも上がればいいですよね。実力はあるのに進め方がわからず壁をブレークスルーできなくて困っている人に、僕らのノウハウや進め方を知っていただくことで、新規事業への挑戦がより楽しいものに変わっていく、そういう世の中にしていきたいと思っています。

——そのために何か具体的に動き始めているチャレンジがありましたら教えてください。

  基本的に、WHITEの新規事業開発のフレームワークやノウハウは無料公開して1人でも多くの新規事業担当者の悩みを解決してほしいと考えています。その一環として、「innovation design compass(β)」という未来の視点から新規事業を考えるというクラウド型ツールを無償提供していて、誰でも新規事業開発にアクセスできる環境を整えています。

 あとは、独自の「WHITE BOARD(ホワイトボード)」というコミュニティを運営しています。新規事業担当者の方に集まっていただき、そのコミュニティで僕らがもつノウハウを伝えたり、あるいはそのコミュニティで生まれたノウハウを僕らが学んだりと、“みんなの共通知”みたいなものを世の中に広めていけるといいなと思っています。


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