京セラドキュメントソリューションズ(京セラDS)は1月27日、国内商業用インクジェット事業への参入を発表した。市場に存在する印刷の質と人材不足という課題に対応できる機種として、3月に新開発の商業用インクジェットプリンター「TASKalfa Pro 15000c」を投入。高額な初期投資が必要な連帳インクジェット機とランニングコストが高い粉体トナー機の中間となる“未踏の領域”を狙う。
Pro 15000cは、自社開発の水性顔料インクを採用する、ライン型のフルカラーインクジェット。複合機、プリンターで培う技術力をベースに開発したという。600×600dpiの解像度に対応し、A4の場合は分速150ページ、月間平均100万枚が印刷可能。給紙用ペーパーフィーダー、排紙用スタッカーなど多彩なインラインオプションを用意し、最大1万4310枚を給紙、1万5320枚を排紙できるという。同社がオフィス向けに培ってきた技術など、グループの総合力を集めた製品になるとしている。
京セラグループ最大の事業部隊で、売上高構成比の23.1%を占めるという同社は、事業の根幹となる複合機、プリンタの生産性倍増、原価低減、販路拡大などに努める一方、印刷を取り巻く環境変化に対応しているという。
1月にはドイツのOPTIMAL SYSTEMS GmbH、フランスのEver Team Software SASといったエンタープライズコンテンツ管理(ECM)ベンダーを買収。同社の代表取締役社長を務める伊奈憲彦氏は「ペーパレスで印刷量が減る反面、ネットワーク上に存在するドキュメント量は増加している」と説明。印刷“量”の変化に対応すべく、ECMやドキュメントビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)事業を強化していると語る。
今回の発表は、オフィス同様に変化しつつある商業印刷の“質”を見据えた事業創出と表現している。「同原稿を大量に刷るオフセット印刷が依然として主力ではあるが、バリアブル印刷などデータに基づいて内容を変え、個々に向けて印刷物をカスタマイズするニーズが増えている」(伊奈氏)。商業印刷分野でも増えつつある、多様化というニーズにも対応していくと説明する。
参入は3年ほど前から検討していたという。2019年5月から欧米やロシア、アフリカなどの一部ユーザーで徐々に試験導入を開始。11月には日本に先駆け正式投入し、小回りが効く機種として好評だという。
「従来から技術の要素は揃っていたが、市場性を見て参入時期と判断した。(他社製品とは)セグメントが大きく異なり、狙う用途も違う。ブルーオーシャンに向けた投入」(伊奈氏)
販売は子会社で国内販売を担う京セラドキュメントソリューションズジャパンが担当する。スタンダードモデルの税別標準小売価格は2420万円。グローバルで初年度500台を目標としており、うち日本市場で10%程度を達成する考えだ。
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