自動車業界では近年、衝突被害軽減ブレーキを始めとする安全装備の採用が進んでおり、交通事故件数も減少傾向となっている。しかしながら、2019年の統計では、事故発生から24時間以内の死亡者は約3000人、負傷者も46万人以上だといい、交通事故による被害者はいまだ多いのが現状だ。
この現状を変えるべく、ベンチャー企業のPyrenee(ピレニー)が開発を進めているのが、クルマに後付けできるAIアシスタント「Pyrenee Drive」だ。
Pyrenee Driveの最大の特徴は、周囲の歩行者や自動車、自転車などを認識し、危険性があればアラートを発する機能だ。視野角100度のステレオカメラで前方を監視し、ディープラーニングによるリアルタイム物体認識で、周囲の歩行者や車両の動きを追跡。クルマとの衝突危険性がある場合、「左から人が来るよ」など音声と、画面の表示でドライバーに伝える。
AIアシスタントが追加学習を続けることも特徴だ。Pyrenee DriveはLTEで常時ネット回線に接続しており、他の端末の学習データを、クラウド経由で学習できる。これにより、予測精度の向上や、危険性の早期発見につなげるという。
また、端末画面の上部には、ドライバーを監視するカメラを搭載している。よそ見や居眠りを感知し、休憩の提案やよそ見防止の声掛け、さらには緊急時に家庭や職場へ連絡する機能を持たせる。
このほか、オンラインドライブレコーダーや、交通情報共有、テレマティクスなどの機能を持つPyrenee Drive。Pyrenee 代表取締役 CEOの三野龍太氏は、「単なる警報器ではなく、ドライバーの相棒のような存在になりたい」と説明した。
メディア向けに開催された体験会において、Pyrenee Driveの実力を体験した。
音声操作で周辺認識を開始すると、カメラが捉えた前方の映像と、AIが認識した自動車や歩行者、自転車などの枠が画面に表示される。自動車については前後方向を認識しており、進行方向も予測しているという。また、乗用車サイズは赤、トラックサイズはオレンジと色分けされており、両者を見分けていることもわかる。このほか、路面に引かれたラインも認識しており、黄色線でこれを強調していた。
試乗コースは繁華街を周るもので、周囲の交通量は常に他の自動車とすれ違う程度。信号待ちでは横断歩道を渡る歩行者が途切れることなく続く場面もあった。Pyrenee Driveでは、これらの対象物のうち、周囲のものについてはほぼ全てを認識する精度の高さを披露。三野氏も「他社の同等製品は性能を公表していないが、ほとんどの製品よりも高精度」と自信を見せた。
なお、周囲を認識している枠については、高精度であることを示すために表示しているとのこと。設定によって非表示とすることも可能だという。
Pyrenee Driveは可視光によって周囲を認識しているため、豪雨や完全な暗闇などの状況では認識精度が落ちるという。しかし三野氏は「人間の目が認識できる範囲なら問題ない」と、一般的な使用では問題がないことを説明。実際にガード下の暗闇を走行した場面でも、継続して周辺を認識する様子を見せていた。
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