大学受験中に起業を志し、建築機器メーカーに入社したという三野氏。2001年に新製品専門メーカー「Realize」を設立し、成功を収めたという。同社で製品開発を進めるうちに、人の命を守る製品づくりを考え、独学でテクノロジーなどを学習。2015年に秋葉原のDMM.makeを拠点として活動を開始し、2016年に法人としてのPyreneeを設立した。
先述した通り、交通事故による犠牲者はまだまだ多い。そこで三野氏は事故の発生原因に注目した。死傷事故のうち、約75%はドライバーの見落とし、発見遅れが原因で発生しているという。また、判断の誤りや操作の誤りを加えると、ほぼ100%の事故がドライバーの認識エラーで発生している。
三野氏は、「ドライバーは事故後に『歩行者に気付かなかった』と話している例が多く見られる。これはある意味当たり前で、気付くのが遅すぎるために事故が発生することが多い」と説明。この認識エラーが発生しないよう人間をアシストできれば、事故の原因を経つことが出来ると考えたという。
三野氏によると、一般的な運転時の視野角は左右35度程度だといい、その他の範囲はぼんやりとしか認識していないという。一方で、機械では中央部も周辺部も同じように認識・判別できる。もちろん、機械でも見落としの発生を完全に防ぐことはできない。しかし三野氏は、人間とPyrenee Driveのダブルチェックとすることで、見落とし率を大幅に削減し、事故原因を削減できると説明した。
クルマ用の先進安全装備では、衝突被害軽減ブレーキの導入が近年進んでいる。三野氏はこれについて、「衝突被害軽減ブレーキは、歩行者やクルマに接近する『過程』の段階で作動する」と説明。一方のPyrenee Driveは、「見落とし」や「判断ミス」など、過程の前段階である「原因」の時点で動作すると述べ、そもそもの事故原因をなくすための製品であると解説した。
Pyreneeは、Pyrenee Driveの量産体制について、2019年7月にシャープと支援協定を締結。同社の「量産アクセラレーションプログラム」の支援を受け、製品を製造していくという。
発売時期や詳細な価格については未公表だが、価格はハイエンドのカーナビ機と同等かそれ以下の水準となるという。
また、12月には物流大手のSBSロジコムとも提携。同社グループの教習所において実証を実施しているほか、将来の業務用車向けPyrenee Drive開発に向けたデータを収集しているという。
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