2019年は第2の黒船が日本に上陸した。WeWork(ウィワーク)に続き、Softbank Vision Fund(ソフトバンク ビジョン ファンド)も出資するインドのホテル運営会社OYO(オヨ)が、ヤフーと合弁会社を設立し「OYO LIFE(オヨ ライフ)」をスタート。日本の賃貸住宅事業に本格参入した。OYO LIFEは敷金、礼金、仲介手数料0円で提供する家具家電付きの部屋を、スマートフォン1つで物件探しから入居、退去までができるサービスだ。
2019年はこのOYO LIFEをはじめ「ADDress(アドレス)」や「HafH(ハフ)」など敷金、礼金、仲介手数料が0円でサブスクリプション(月額定額制)の住み替え賃貸住宅が本格的に始まった年でもあった。
住み替え賃貸住宅以外にも不動産領域においてもサブスク型のビジネスが広がったのが2019年だ。「WeWork(ウィワーク)」に代表される定額制のコワークオフィスや三井不動産のシェアオフィス「WORKSTYLE(ワークスタイル)」のような時間単位の従量課金制のシェアオフィスなど、サブスク型のオフィスが急激に増加した。ほかには、家具・家電のサブスクサービス「CLAS(クラス)」や「subsclife(サブスクライフ)」、初期費用0円で月額サブスクのスマートロックを利用できる「ビットキー」などサブスク型のサービスが目に留まった。
不動産テック関連の上場や資金調達も活況だった。6月には不動産売却のマッチングサービスを提供するリビン・テクノロジーズが東証マザーズに上場。リビン・テクノロジーズは、2400の加盟店を持ち、年間1600万の訪問数、年間9万件を超えるマッチングを生み出すウェブサービスを展開する。
また、12月には空きスペースのマッチングサイトを運営するスペースマーケットも東証マザーズに上場。スペースマーケットには、会議室、飲食店、住宅、スポーツ施設から廃校や寺や城など従来は借りることができなかったユニークなスペースも含め、1万2000件を超えるさまざまなスペースが掲載されている。
資金調達のトピックとしては、8月にはスマートロック企業であるライナフが、東急不動産ホールディングスから資金調達を実施。また、住宅ローンのテック企業であるiYell(イエール)は、横浜銀行等の全国の地方銀行や野村不動産ホールディングス、三菱地所等の大手不動産会社25社より総額16.5億円の資金調達を実施した。
また、2018年の上場以降、イタンジなどを買収し、勢いの乗るGAテクノロジーズ(ジーエー・テクノロジーズ)は、12月に高級賃貸サイトのModern Standard(モダンスタンダード)を買収するなど今後も目が離せない存在だ。
行政や法規制のトピックとしては、4月にはおよそ四半世紀ぶりに「不動産業ビジョン2030」が国より発表された。これは不動産業に携わるすべてのプレイヤーが持続的に発展するため、官民が一体となって取り組んでいく指針である。基本コンセプトとして、個人、企業、社会としての不動産最適活用の実現を目指し、「ストック型社会の実現」や「安全・安心な不動産取引の実現」など7つの目標が定められている。
また、10月には不動産売買取引におけるIT重説、および賃貸取引における書面電子化の社会実験が開始。IT重説の本格運用は2017年よりスタートしており、これまでウェブ会議サービス等で説明を受けることが出来たが重説等の書類は宅建業法35条・37条により、未だに郵送である。
このため、説明はオンラインにもかかわらず書類はオフラインという形で、完全な賃貸取引のオンライン化はできていない状況が、この社会実験を経てようやくオンライン化される。
不動産テック関連のイベントや団体に目を向けると、2019年はこれまで以上に不動産テック関連のイベントが増えた印象だ。不動産テック協会は4月に「Real Estate Conference 2019」、8月にCNET Japanと共同で「不動産テックカンファレンス2019」を開催。さらに8月には手前味噌だが筆者が関わっている国内不動産テックのカオスマップの最新版も発表された。一方、PropTech Japanは9月に国内外のスタートアップが登壇した不動産テック特化のピッチカンファレンス「PropTech Sartup Conference」を開催。11月にはこの不動産テック協会とPropTech Japanが提携することを発表している。
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