積水ハウスはラスベガスで開催された世界最大の技術見本市「CES」に2年連続で出展し、「在宅時急性疾患早期対応ネットワーク HED-Net(In-Home Early Detection Network)」をはじめとするプラットフォームハウス構想第1段を発表。研究開発者らによるトークイベントを実施した。
また、家で発症可能性が高い「急性疾患」への対応にパートナーと共に取り組み、「生活者参加型パイロットプロジェクト」による社会実装も進めることも明らかにした。
具体的には、スマートな住宅内で住環境と住まい手のライフスタイルという両データを分析しているのが特徴。特に住まい手のバイタルデータはカメラを使わず非接触で検知・解析する独自のアルゴリズム開発している。緊急状態の判断基準も独自に設けられ、異常と判断された場合には緊急通報センターへ通知する。オペレーターの呼びかけで安否確認を行ったうえで救急出動を要請し、救急隊が到着した際には玄関ドアの遠隔解錠・施錠までを一貫して行うまでが一つのシステムとなっている。すでに国内のシステム特許を取得しており、国際特許も出願中だ。
積水ハウス代表取締役社長の仲井嘉浩氏は「家の中で7万人が死亡する状況に対し、自動車のエアバッグのようなセーフティー機能を家にもたらしたい」とし、「本格的な住まいのスマート化に取り組むことは住宅メーカーの社会的使命になる」と話す。
研究開発を担当するプラットフォームハウス推進部長の石井正義氏は、家に設置される小型の非接触型センサーを紹介した。通常のセンシングでは判断が難しい、就寝時の寝返り、布団などの遮蔽物、カーテンのゆれといった細かい変化を検知するシステムも、住宅メーカーが提供することで実現できるとしている。
ロードマップとして2020年はプラットフォームハウスラボと実験棟でそれぞれ実証実験を行い、2021年には実際の住宅に住んでもらいながら評価検証する「生活者参加型パイロットプロジェクト」を実施する。協力者は一般から募集、50戸ほどを予定しており、イニシャルとランニングコストは積水ハウスが負担する。
また今後の構想として、寝室だけでなく、洗面室やリビングなど家全体にセンシングの対象を拡げる。普段の生活に影響を与えることなくバイタルデータを収集し、住環境データと組み合わせることで、パーソナライズされた健康情報が蓄積され、それを元に高血圧、不整脈、糖尿病といった病気の予防や健康な暮らしを助ける。そのためのパートナーとして、西川布団、セブン&アイ・ホールディングスらとの連携も予定している。
「HED-Net」の開発には、コニカミノルタ、NEC、エヌ・ティ・ティ・コムウェア、総合緊急通報サービスを提供するプレミア・エイドがパートナーとして参加。生活センシング技術やアルゴリズムの開発では慶応義塾大学理工学部教授の大槻知明教授も協力しており、慶応大学病院とも連携している。会場では「非接触センシングの過去、現在、未来」というテーマで、大槻教授とマサチューセッツ工科大学の医学光学の専門家であるブライアン・アンソニー博士によるトークイベントも行われた。
その中でアンソニー博士は、「家やオフィス、自動車の中といったどこにいる時もデータを収集するようになり、それらを活用した健康や病気の予防、また世界で進む高齢化に対応がこれから進むだろう」と言う。医療の世界で治療方法や薬はパーソナライズされる方向にあり、それらは病院の外で集められた生活データを元に行われるとしている。
大槻教授は「モニタリングは数多く行われるがバイタルデータは微弱で複雑なので、何をどう収集し分析するかではAIの活用がポイントになる。そして収集する情報に対するセキュリティやプライバシーにも配慮しなければならない」と指摘した。
さらに大槻教授は「血圧を非接触で検知できるだけでも重要なベースデータになる」と話す。血圧はメンタルにも影響しており、声の調子などもあわせて病院の外で精神状況が判断できるわかるようになれば、精神疾患が大きく改善される可能性もあるからだ。アンソニー博士は「DNAより生活データのほうが健康に影響をおよぼす可能性があるかもしれず、住まいの中も含めてより多くのデータが収集されていくことで、新しい発見ができるのではないかと興味深く感じている」とし、日本の技術にも期待していると話していた。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」