神戸に多様な“ヘルステック”が集結--「500 KOBE ACCELERATOR」デモデイレポート

 神戸市とシリコンバレーのシード投資ファンド 500 Startupsがタッグを組んで2016年から実施しているアクセラレーションプログラム「500 KOBE ACCELERATOR」が4期目を迎え、参加15チームが金融機関や投資家を含む招待客に向けてピッチをするデモデイが、最終日の12月16日に開催された。

プログラムに参加した15チームによるデモデイには神戸市市長の久元喜造氏も参加した。
プログラムに参加した15チームによるデモデイには神戸市市長の久元喜造氏も参加した

 今回は神戸医療産業都市(以下KBIC)との連携による相乗効果が期待できるヘルステック領域からの募集に力を入れ、プログラムに特別メンターセッションや関連施設の視察といったサポートを加えた。174件の応募から選ばれた15チームの中でヘルステック関連は8チームで、2チームがKBICとの連携をすでに発表している。前2回は東京で開催していたデモデイも神戸市内で開かれ、50名の投資関係者を含む約150名が参加した。

 500 StartupsのマネージングパートナーのBedy Yang(ベディ・ヤン)氏は、参加者の多様性も重要で、海外から8カ国が参加しているほか、37.5%が女性創業者であることを紹介。同アクセラレーターマネージャーのMarcus Sandberg(マーカス・サンドバーグ)氏は、起業やエグジット経験があるメンターが毎週レクチャーをしてヘルステックの専門家も外部から招聘したことや、資金を調達し神戸に日本本社を設立したチームもあるなど、6週間の短期プログラムながら成果を出していることを強調した。

500 StartupsマネージングパートナーのBedy Yang(ベディ・ヤン)氏
500 StartupsマネージングパートナーのBedy Yang(ベディ・ヤン)氏
500 StartupsアクセラレーターマネージャーのMarcus Sandberg(マーカス・サンドバーグ)氏
500 StartupsアクセラレーターマネージャーのMarcus Sandberg(マーカス・サンドバーグ)氏

 参加チームによるピッチは2分間と短く、ビジネスプランで最もアピールしたい、あるいはインパクトを出せるポイントを紹介し、詳しい話は各ブースで行う流れにしている。

 例えば、ヘルステックの「HERBIO(ハービオ)」は、臍部周辺で深部体温を計測するウェアラブルデバイスを使った、パーソナライズ熱中症対策システムの紹介に発表内容を絞り込み、1年前から研究を進めていることや月額800円という価格のリーズナブルさ、そして体温で命を救う研究をしていることを紹介。医療機器化を目指してKBICでのモニタリングの実証検討を予定している。

「HERBIO(ハービオ)」は深部体温を計測するウェアラブルデバイスによる熱中症対策システムに絞り込んで紹介。
「HERBIO(ハービオ)」は深部体温を計測するウェアラブルデバイスによる熱中症対策システムに絞り込んで紹介

 病院の待ち時間に問診するなど医療スタッフを支援するAIロボットシステムを開発する「シャンティ」は、すでに21の病院に導入済みで、さらに10施設が追加されたこと。初期導入費50万円と月1万5000円という価格や、大手製薬会社からの販売が決まっていることを紹介。

 またブースでは、国内で販売されているコミュニケーションロボットであれば搭載可能なシステムであること。また、MR技術を活用したリハビリシステムを医療機器認定を視野に開発しており、KBICの病院連携相談窓口を通じた実証の検討と、2020年1月にラスベガスで開催されるCESで展示することが紹介された。

AIロボットシステムとMRリハビリシステムを開発する「シャンティ」はピッチでは前者に絞り込んで発表した。
AIロボットシステムとMRリハビリシステムを開発する「シャンティ」はピッチでは前者に絞り込んで発表した

 生命科学の研究開発に必要な実験プロトコルをAIで自動最適化し、必要な期間とコストを大幅に削減するサービスを提供する「エピストラ」は、KBICでiPS細胞を研究開発する高橋政代氏の実験で効果をあげていることを紹介し、今後も継続して連携していくとブースで話していた。

 行政からの通知はがきを自動化するクラウドサービスを提供する「ケイスリー」は、あえてがん検診の通知に有効であるという点をアピール。神戸市との連携も期待して今回プログラムに参加したと言い、同様のコメントは他の参加者からも多く聞かれた。

すでに神戸市やKBICと連携したり今後の支援を期待して本プログラムに参加したというスタートアップが多かった。(写真はエピストラ)
すでに神戸市やKBICと連携したり今後の支援を期待して本プログラムに参加したというスタートアップが多かった(写真はエピストラ)

 ヘルステックでは、アプリを使って気分を可視化するKibunLogを開発する「キママニ」、“AIフレンド”と話すことでメンタルヘルスをサポートする「HoloAsh」、脳科学とAIを融合し脳のMRI画像から認知症のリスクを測定するAI医療機器の開発を目指す「Splink」、医師を探したりオンラインで相談できるマーケットプレイスを提供する「I Online Doctor」(インド)、透析で生じる血管の詰まりを診断するシステムとデバイスを開発する「NephTech」(シンガポール)が参加した。開発したアプリを使ったデモやデバイスの展示なども実施された。

Splinkは脳のMRI画像から認知症のリスクを測定するAI医療機器の開発を進めている。
Splinkは脳のMRI画像から認知症のリスクを測定するAI医療機器の開発を進めている
NephTechが血管の詰まりを診断するシステムとデバイスの実機を展示していた。
NephTechが血管の詰まりを診断するシステムとデバイスの実機を展示していた

 ヘルステック以外でも、AIとネイティブスピーカーによる企業向け英語学習サービスを提供するシアトルの「Native English Institute」が神戸に日本本社を設立すると発表。運送業界のドライバー不足を解決するマッチングサービスロジデリを展開する「プラットイン」は神戸市を拠点する運送業の跡継ぎが立ち上げたスタートアップだ。

 ほかには、飲食店の整理券を発行して支払いまでできるアプリを開発する「QueQ」(タイ)、同じく飲食店の発券機などのフロントエンドのコストを下げるアプリを開発する「WTF - Where's The Food」(インド)、ドロップシッピングをサポートする支払いシステムを開発するFinTech企業「Mobiversa」(マレーシア・インドネシア)、旅行者向けのARナビサービスなどを開発する「Pokeguide」(台湾)など、海外ではアジアからの参加が多かった。ピッチ後のネットワーキングも盛り上がり、主催側も手応えを感じていたようだ。

タイのQueQアプリはすでに日本でも使われている。
タイのQueQアプリはすでに日本でも使われている

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