筆者は先週、ラスベガスで開催された「CES 2020」の会場を訪れるまで、ロボットを自分の手で触ってみる経験はほとんどなかった。Boston Dynamicsの製品に関する記事を執筆したこともあって、むしろロボットには懸念を抱いていた。確かに、ロボットには良いこともたくさんあるかもしれないが、「アイ, ロボット」のような映画や「ブラック・ミラー」のようなSFドラマシリーズで植え付けられたイメージを拭い去るのは難しい。CESを訪れたら、もっと懐疑的になるだろうと思っていたが、筆者はショー会場のロボットたちにすぐに魅了されてしまった。
CES初日の夜に開催されたメディアイベント「CES Unveiled」で、筆者は「LOVOT(らぼっと)」と出会った。この小さなペンギンのようなロボットは、会場を動き回って、多くの人の注目を集めていた。筆者が膝をついて写真を撮っていると、いつの間にか、LOVOTの担当者の1人がMaxという名前の1体を筆者の腕の中に置いていた。Maxがクークーというような鳴き声をあげながら、筆者に向かって大きな目を瞬きしている間に担当者が説明してくれたところによると、このロボットの目的は、ただ人間を愛することだという。筆者は、Maxが本物の生き物ではないということを、いとも簡単に忘れてしまっていたことに驚いた。やがて、Maxとの別れのときが訪れたが、CESの開催期間中、筆者が出会った可愛らしい(そして、疑わしくはあるが、感覚を持つとされる)ロボットは、Maxだけではなかった。
CES 2020で遭遇したロボットの多くは、サービス、教育、心のケアまたはサポートという3つの大きなテーマの1つ、またはそれらを融合した方向にギアが入れられていた(ダジャレがお分かりいただけるだろうか)。かなり多くのロボットは、この上なく可愛らしい見た目に仕上げられていた。筆者がLOVOTと出会ったときに抱いた気持ちのように、ロボットであることを私たちに忘れさせるための方策なのかもしれない。
学校でノートPCを頻繁に使うようになり、なんてクールなことなのだろう、と思ったときのことを筆者はよく覚えている。CES 2020では、ロボット工学も学校の教室に進出していることがよく分かった。こうした教育用ロボットは、子供たちが学習しているということを意識せずに学習を進められるように、最初はおもちゃのような印象を与えるように作られるのかもしれない。カラフルで可愛らしく、親しみやすくてインタラクティブ性も備えている。
筆者がCESで見たロボットたちは、外国語からコーディング言語、そのほかのSTEM(科学、技術、工学、数学の分野)のスキルまで、さまざまなことを子供たちに教える。3歳~9歳の子供に英語を教えることを目的とするロボットの「EMYS」は、子供のような声で話し、なでられると反応する。くしゃみや咳など、人間のような音を出すこともできる。子供たちが、Googleや「Siri」のこれといった特徴のないように思える声よりも、EMYSに強い関心を示すであろうことは容易に想像できる。
こうした類のおもちゃのマーケティングやプレゼンテーションを今後も注視していくことが重要だ。例えば、早い時期にSTEMに興味を示した少女たちが後で脱落しないよう、これらのデバイスの性的中立性を維持するといったことが重要な要素になる。
ロボットを使用して、ストレスや孤独、そのほかの感情を緩和することが、デジタルヘルス分野の最新トレンドの1つであるようだ。感情的なニーズに応えるためにロボットを利用するのは、奇妙なことに思えるかもしれないが、そうした動きはすでにかなり進んでいる。私たちがさまざまな方法でスマートフォンを遠隔医療や遠隔療法などに利用していることを思い出してほしい。
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