スーツを着たIT企業幹部は、米国会議事堂では見慣れた光景になった。Facebookの最高経営責任者(CEO)、Mark Zuckerberg氏は10月、スーツとネクタイ姿で公聴会に出席し、数時間にわたって米連邦議会議員たちの厳しい質問に答え続けた。
この公聴会は、下院金融サービス委員会がFacebookの最新ベンチャー事業である仮想通貨「Libra」についてZuckerberg氏を問い質すために開いたものだ。Facebookがヘイトグループの結成や児童の性的搾取を許容し、データ侵害を阻止しそこない、誤解を招く政治広告を許したことで、政治家たちは既に憤慨していた。今度は、Facebookが金融業界を大混乱させる可能性を懸念し、Zuckerberg氏にLibraを支持しないと言い渡した。同氏がCambridge Analyticaのデータスキャンダル後の公聴会で行った証言は懐疑的に受け取られた。
Maxine Waters下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)はZuckerberg氏に対し、「私の結論は、Libraプロジェクトをこれ以上進める前に、現在問題になっている多数の欠陥や失敗の修正にFacebookが集中することが、万人にとっての利益になるということだ」と告げた。この結論には多くの人々が共感するだろう。
Zuckerberg氏がワシントンに呼び出されたのは、既に長くなっていたFacebookの問題リストに、さらに複数の問題が追加された2019年のことだ。同社は政治家が政治広告で嘘をつくことを許したとして批判の的になった。米国47州の司法長官が、同社を独禁法違反の疑いで調査している。米連邦取引委員会(FTC)は個人情報保護命令に継続的に違反したとして同社に50億ドルもの制裁金を科した。ニュージーランドのクライストチャーチで銃を乱射し、51人のイスラム教徒を殺害した犯人は、犯行をFacebookでライブストリーミングした。
はっきりしているのは、これだけの問題を抱えていても、Facebookは成長し続けているということだ。約28億人が毎月Facebook、Facebook Messenger、Instagram、WhatsAppの少なくともいずれかを利用しており、その月間アクティブユーザー数(MAU)は1年前の26億人から約8%増加した。批判が高まっても、Facebookはより強力になるような取り組みを続けている。米国でFacebookに新しい出会い機能を追加し、動画チャットデバイスのラインアップを拡張し、仮想現実(VR)の新サービスのテストを開始し、VR事業を強化した。Libraプロジェクトも減速していない。Facebookは議会に対し、規制当局の承認がなければこのデジタル通貨サービスを立ち上げないが、計画の停止もしないと告げた。
問題を増やし続けながら成長する同社には、当然ながら政治家、活動家、著名人からの批判が絶えない。Cambridge Analyticaのスキャンダルが2018年に露呈する以前から、Facebookはユーザープライバシーを十分に保護していないとして批判され続けてきた。問題が増えるにつれて、Facebookを調査するよう求める声も高まった。
ジョージタウン大学ローセンターのDavid Vladeck教授は「Facebookはあまりにも急激に成長し、成長による影響を考慮せずに収益を上げることに集中しすぎた」と指摘した。同氏は2009年〜2012年にFTCの消費者保護局の局長を務めていた時、Facebookの調査を統括した。「同社は今、己の不注意と不正直の報いを受けている」(Vladeck氏)
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