2018年8月、顧客の預金残高データを改ざんしていたとする不正が発覚したTATERUが、騒動後初となる記者会見を11月22日に開いた。代表取締役CEOの古木大咲氏は、コンプライアンス統括本部設置をはじめとする再発防止策を発表したほか、今後の事業戦略などについて話した。
TATERUは、アパートプラットフォーム事業などを展開する不動産会社。投資向けアパート販売などを主力事業にしており、会社員などに副業としてアパート経営を勧めていた。しかし、2018年に従業員が顧客から提供を受けた預金残高データを改ざんし、実際より多く見せて西京銀行に提出し、融資審査を通りやすくしていたとする不正融資が発覚。同社は事実として認め、2018年12月には、特別調査委員会から調査結果報告書を受けたとし、詳細と今後の対応を明らかにしている。
会見では冒頭に古木氏が謝罪し、その後「業務のフローとチェック方法の厳格化」「コンプライアンス遵守体制の見直し」「企業風土の改革」と3つのポイントに絞った再発防止策を発表した。
業務フローとチェック方法の厳格化では、金融機関専門の部署を設置し、顧客との契約時における適合性もチェックしているとのこと。また、コンプライアンス統括本部を設け、取締役兼執行役員コンプライアンス統括本部長として藤本一之氏を迎え、コンプライアンスを遵守していく形を整えた。企業風土に関しては、歩合制度を廃止したほか、全社ミーティングや現場のスタッフと古木氏による 1 on 1(ワンオンワン)ミーティングなども実施している。
不正発覚当時の2018年8月時点であった750棟の仕掛不動産は「なんらかの理由で引き渡しできなかったものは契約解除して引き受けている。現時点では一括売却などをしてほぼ対応完了済みの状態」(古木氏)とした。
古木氏は「今後は人事制度の改革などを進めていく。確実に実施し、全社一丸となって信用回復に努める」とコメント。不正発覚から1年以上が経過したこのタイミングで会見を開いたことについては「遅くなり申し訳なく思っている。今後の方針がまとまるまでに時間がかかり、このタイミングになった」と説明した。
同日に発表した経営方針でも「アパートプラットフォーム事業」は事業の主軸として据えるが、会社員などを対象にしていた以前に比べ、顧客層を「国内外の富裕層」(古木氏)へシフト。「お客様自身が銀行とお付き合いがあるケースが多いため、融資については全く問題がない。顧客層が変化したことで、より好立地の物件を求められる方が多くなってきた。利回りは低くても資産価値が高いものを望むお客様が多いため、私たちも都心部の好立地の土地を厳選して取得している」と事業内容は変化している。
TATERUでは、アパートプラットフォーム事業に続く新規事業として、スマートホテル事業を推進。スマートホテル事業は、現在、京都府と福岡県で展開しており、現在22施設104部屋(2018年9月末時点)を運営。2020年には23施設30部屋の開業を控える。
年々増加するインバウンド需要を取り込む計画で、スマートホテル内は宿泊施設のみ。周辺の飲食店などへの消費を促し、地域経済を活性化する泊食分離を実践する。町家タイプの宿泊施設「MUSUBI HOTEL」を展開しており、複数人でのグループ宿泊が手頃な料金でできる設備を整えるほか、鍵を受け渡す手間を省くスマートロックやタブレットを使ったチェックインなど、ICTを活用した運用が特徴で、IoT機器の開発、運営はTATERUのITエンジニアが担当。「土地や仕入れ、企画開発、運営などは不動産ノウハウを投入している」(古木氏)ことが強みだ。
IoT機器の取り込みは、アパート販売事業でも実践しており、IoTを標準搭載することで周辺アパートと差別化を図る。また、主要都市の駅から10分圏内とする好立地とあわせ、入居率は98.8%という実績を誇る。
スマートホテル事業も、開発や運営を手掛け、稼働率を上げた状態で投資家に販売する形をとっており、アパート事業と同様に顧客は国内外の富裕層が中心とのこと。なかでも中国富裕層からの人気が高く「中国の投資家は収益不動産や宿泊施設の不動産を開発したいと考えている人が多いが、それに対応できる企業が少ない。ここが1つの事業機会と捉えている」(古木氏)とした。
今後は、PMプラットフォーム事業を「安定収益領域」、スマートホテル事業を「戦略的成長領域」、アパート販売事業を「リスクコントロール事業」の3領域に分け、事業運営していく計画。古木氏は「安定収益領域であるPMプラットフォーム事業は管理料収入などがあり、これだけで営業利益は黒字化する。しかしそれでは単なる管理会社になってしまうので、成長領域への投資が必要」とし、IoT機器を含めたアパートやホテルのスマート化を推進している。
TATERUでは、不正発覚前の約500名から従業員数が約200名まで減少。うちPMプラットフォーム事業に約80名、経営管理本部に約30名が従事しており、PMプラットフォーム事業のみの営業利益で十分に賄える実績だ。これにITエンジニア約30名、新規事業担当者約60名を採用しており、成長領域への投資を緩めない姿勢を示す。古木氏は「来期は投資事業の収益がとんとんになり、管理料収入が営業利益になる。最終的には2022年度に営業利益10億円以上を目指す」とした。
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