AirPods Proレビュー:アップル初にして決定版のノイキャン機能付きワイヤレスイヤホン - (page 2)

Apple製品初のノイズキャンセリング機能

 AirPods Pro最大の目玉は、新たに搭載されたアクティブノイズキャンセリング機能だ。Apple製品としては初めての技術となるが、その完成度の高さには驚かされる。

 耳に装着するとふわっと周囲のノイズが消え、自分だけの静かな空間に包まれる。特性として、人の声など高い音は通しやすく、電車中でも「何かアナウンスされているな」とは気づける。

 そうしたときは、本体の軸を長く押し込んで、外部音取り込みモードに切り替えればよい。すると、周囲の音がフェードインして聞こえるようになり、そのアナウンスを聞き取れるようになる。しかも、こんなにうるさい環境にいたのか、と驚かされる。さらに驚くのは、イヤホンを片方だけとっても、左右で音のズレをほとんど感じず、音質も遜色ないことだ。

 Appleによると、AirPods Proのマイクで拾った音声を一度処理して再び耳の中に再生している。それでも遅延を感じないのは、H1チップと10コアのオーディオプロセッサを、6g未満のボディに収めることで実現した高い処理性能によるものだ。

 外部の音を高音質でマイクから取り込み、遅延なく再生できる機能は、アクティブノイズキャンセリング機能の性能そのものを表しているといってもいい。外部の音に反応してノイズを打ち消す音を再生する仕組みであることから、正確に音を取り込んで素早く処理することで、より効率的にノイズを打ち消せるからだ。

 街でAirPods Proの外部音取り込みモードを使っていて特筆すべきは、風切り音がないことだ。Beats Solo Proでは、気になるレベルで風切り音が存在していたが、同じ条件でAirPods Proを装着しても、不快なノイズはなかった。

耳の中に潜むマイク、その役割とは

 AirPods Proは外部の音や人の声を拾う高性能マイクを備える。しかも2つの加速度センサーによって装着している人の口が動いているかどうかを検知することで、本人のHey Siriなどの声を判別できるようにしている。

 しかしこの製品には、もう一つのマイクが潜んでいる。それは耳の中に向いたマイクだ。このマイクはノイズキャンセリング性能を高めるだけでなく、音楽再生の音質向上にも役立てられる。

 耳の内側を向いたマイクを活用することで、外部マイクでキャンセリングしきれなかったノイズを拾うことができるという。そこに対してさらにキャンセル処理をすることで、さらにノイズ除去の性能を高めているそうだ。

 また音楽再生向けにはアダプティブイコライゼーションという機能に、この内向きマイクが使われる。人の耳の形によって音の響き方が異なるため、耳の音の響きを聞き取って最適な音質に調整をかけるというのだ。

 ノイズキャンセリングにしてもアダプティブイコライゼーションにしても、設定でON・OFFを行うことはできない。そのため、その効果を聞き比べることは叶わない。

 これまでのAirPodsと比べると、重低音いの厚みが増し、音の豊かさが広がった印象を受ける。もちろん音質だけで比べれば、ゼンハイザー、ソニー、Beatsなどのノイズキャンセリングヘッドフォンを「いい音だ」と捉える人がほとんどではないだろうか。

 しかしiPhoneのスピーカーやEarPodsなどが基準であった人から比べれば、AirPods Proの音質向上は十分満足に値する。加えて、ノイズキャンセリングによって、より小さい音で再生しても音の機微を聞き取れるようになる点も、より健康的な音楽聴取につながりそうだ。

4.5時間をどう捉えるか?


 AirPods Proとペアリングされている状態のiPhoneやiPadなどでは、コントロールセンターのボリュームを長押ししたり、設定アプリのBluetoothの広告からAirPods Proを選んだりすることで、ノイズキャンセリング、オフ、外部音取り込みを切り替えられる。

 設定アプリでは、圧力センサーの長押しで呼び出す機能を切り替えができるほか、耳に装着しているかどうかを自動的に検出する機能や、有効化するマイクの選択、そしてイヤーチップが正しいサイズで、正しく装着されているかをテストする機能が利用できる。イヤーチップテストの機能もまた、内向きマイクを活用した機能だ。

 ケースはイヤホンの形状変更に合わせて横長に膨らみ、バッテリー容量も増加している。以前のケースはワイヤレス充電対応になっても、ほぼ正方形の形状だったことを考えると不格好になってしまった。

 AirPods Proは、ノイズキャンセリング機能もしくは外部音取り込み機能をONに設定すると4.5時間、OFF設定で5時間の連続再生時間を備えており、ケースのバッテリーと合わせて24時間再生というスペックは引き継がれた。

 この4.5時間をどう評価するかが問題だ。例えばオーバーイヤーヘッドホンタイプで同じくノイズキャンセリング機能を備えるBeats Solo Proは22時間の連続再生に対応することから、例えば1日8時間デスクにいる場合でも音楽を聴き続けられる体力がある。

 その一方で、例えば通勤で30分から1時間音楽を聴き、朝礼やミーティング中にケースに収納して充電し、作業時間に再びAirPodsを装着する──など、音楽を聴く・聴かないが入り乱れたパターンの場合、AirPods Proを収納する際に充電できるため、バッテリー切れの懸念は極めて少ないだろう。

 繰り返しになるが、AirPods Proより音質の良いイヤフォン、ヘッドフォンはいくらでもあるし、飛行機の中や長時間の作業においては、完全ワイヤレスというフォームファクターやバッテリー持続時間が裏目に出る。

 しかしそれでも、付属のイヤホンから付け替えると、外部音取り込みモードですら驚かされる新しい体験が待ち受けているのだ。

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