革新的なゲノム編集技術「CRISPR」を採用した試験的治療により、遺伝性の血液疾患を持つ2名の患者に関して、初期段階ながら有望な結果が示されたことが判明した。「CTX001」と呼ばれるこの治療法は、CRISPR TherapeuticsとVertexが開発したもので、CRISPRを活用して人間の幹細胞を編集する。米国時間11月19日に発表された初期段階の成果に関する報告では、今回の治療で安全性に問題はないことが判明し、新たな治療法であるCTX001の臨床試験をさらに進める道が開かれたとしている。
2人の患者はそれぞれ別の種類の異常ヘモグロビン症(全身に酸素を運ぶ役割を持つタンパク質、ヘモグロビンに関する疾患)にかかっている。1人目の患者は米国在住で、鎌状赤血球症を患っている。これは赤血球の形状が通常と異なり、鎌形になる疾患だ。この患者は2019年4月に、CRISPRを用いた試験的治療を開始した。2人目の患者は欧州在住で、ヘモグロビン生成が著しく減少する疾患、βサラセミアと診断されている。こちらの患者は9カ月にわたりCRIPRを用いた治療を受けている。
鎌状赤血球症では、鎌状の赤血球が血管を塞ぐことにより、患者は激しい痛みを覚える疼痛発作に苦しめられる。一方、βサラセミアの患者は、ヘモグロビンのレベルを一定に保つために、常時輸血を行う必要がある。
今回の試験的治療により、1人目の患者は疼痛発作がなくなり、2人目の患者は輸血の必要がなくなったという。
CRISPR TherapeuticsとVertexは今後、それぞれの疾患について45名を上限に、米国、カナダ、欧州在住の患者に対し、CTX001を用いた治験を実施する意向だ。この治療の安全性を検証するため、治験対象となる患者は長期的に追跡調査される。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス