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データ分析企業「Palantir」がSOMPOと新会社設立--創業者のピーター・ティール氏来日

山川晶之 (編集部)2019年11月18日 16時44分
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 SOMPOホールディングスとPalantir Technologiesは11月18日、ビッグデータ解析プラットフォームを展開するPalantir Technologies Japanを共同で設立したと発表した。

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(左から)SOMPOホールディングス グループCDO執行役常務の楢﨑浩一氏、ピーター・ティール氏、SOMPOホールディングス グループCEO執行役社長の櫻田謙悟氏

 Palantirは、PayPalの創業者でもあるピーター・ティール氏らが2004年に立ち上げたビッグデータ解析に特化した企業。米国政府をはじめ、世界25カ国の政府機関・大企業向けに解析プラットフォームを提供しており、国防など国の重要な組織にも導入されている。同社の製品は、民間向けの「Foundry」と公共向けの「Gotham」の2つがあり、データ解析による、サイバーセキュリティ、社内不正監視、マネーロンダリング防止といったリスク対策のほか、業務効率化にも使われ、組織のデジタルトランスフォーメーションを後押ししている。

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 新会社では、国内の企業や行政にもFoundaryとGothamを提供。Foundaryでは、社内外のデータを統合・分析して、的確な経営判断や事業モデルの発見を支援。製造・開発・生産・サプライチェーンの現場などに蓄積されているリアルデータ(インターネットからは取得できないセンサーなどで得られる実世界データ)をもとに、デジタルトランスフォーメーションの促進を目指す。Gothamは、オープンデータを含む公共データを統合管理・分析することで、公共サービスの抜本的な生産性向上を目指す。国内の幅広い企業にソリューションを提供するため、ジョイントベンチャーにはSOMPOの名前は入れなかったとしている。

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 両社とも同じテクノロジーがベースだが、取り扱うデータで分けているという。企業が持つデータは、自社特有の情報のためハンドリングしやすいが、データベースやフレームワークが分散している傾向にある。そういったものを統合するのに長けているのがFoundaryという。また、Gothamは個人情報保護により配慮するなど、応用のレイヤーでそれぞれ特化しているという。

 事例として、SOMPOホールディングス グループCDO執行役常務の楢﨑浩一氏は、クレディ・スイスとエアバスを紹介。クレディ・スイスでは、同社が持つ40億人の加入者の取引記録や従業員情報データの統合分析し、取引の検知などに使用している。マネーロンダリングの検知だけをとっても、従来と比較してコストが20分の1に削減できたうえで、検知率が2倍になっている。事業コストも大幅に下がったことで利益に貢献しており、世界の金融機関で導入が進んでいるという。

 また、エアバスでは、同社が持つ大量の製造プロセスデータ、納入先の航空会社が持つ運行データを統合する管理プラットフォームを構築。現在では、世界90社の航空会社が保有する6000機の機体がプラットフォームに登録されており、航空機の遅延が1割減少したほか、燃費を約1300万ドル(約14億円)削減することができたという。

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クレディ・スイスの採用事例
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エアバスの採用事例

ピーター・ティール氏「課題先進国として日本から学ぶものは多い」

 SOMPOホールディングス グループCEO執行役社長の櫻田謙悟氏は、データの活用について「介護のデータ、交通事故のデータ、災害のデータなど余りあるほどのリアルデータを持っているが、正直ここからどうやってバリューを見い出せばよいか、解が得られていない。自分の会社ではあるが、宝の持ち腐れといえる」として、「似たことが日本企業にも当てはまる。日本の強みはリアルデータの宝庫であることだが、これをベースにして世界に発信できるバリューやビジネスモデルはまだ持てていない」と課題感を説明。その上で、「パランティアの技術力は米国だけでなく世界的に評価されている。ツールを武器に、散財する武器から新たな価値を創出するのが得意。革新的なビジネスモデルを作ろうとしている会社・組織をもっとも強力にファシリテートできる」と評価。

 櫻田氏は、SOMPOのデジタル事業を、国内の損害保険、生命保険、海外事業、ヘルスケア事業に加えた5つ目の柱にしたいという。「ビジネスモデルとして、損害や事故に対して契約に従って保険金を支払う。これをソリューションとして提供したのが損害保険」とし、「(人々が)なぜ保険をかけるかといえば、本当は損害は起きてほしいものではなく、起きてもミニマムに留めるため。それを実現するためには、リアルデータを加工して、損害ダメージが起きないようにするためのソリューションが必要。サイバーテロも同様で、もし起きたとしても最小限に抑えられる仕組みや精度を予め提案し、それをビジネスとしてお客様に提供すれば、ずっと大きな価値になる。私としては、保険を超えて挑むことにチャレンジしたい。パランティアが持つ、リアルデータから新しい価値を提供する機能をなんとしても手に入れたかった」と述べた。

 ティール氏によると、パランティアは「人間の智をコンピュータが補完するもの」と語る。データ分析では、ディープレイヤー、ミドルレイヤー、サーフェイスレイヤーに分けられ、ディープ分野は量子コンピュータなどこれまでできなかったことができるようにする技術的革新、サーフェイスレイヤーは、UIなどを手がける。パランティアはミドルレイヤーに該当し、未来的なテクノロジーを組みあわせてさまざまデータベースを提供。プライベートやセキュリティの懸念上アクセスできなかったものに、それを配慮しつつアクセスできるようにするという。同氏は、パランティアをIA企業(Intelligent Augmentation)と定義。ミドルレイヤーを手がける企業はあまり多くなく、同社の優位性を強調した。

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 また、日本市場について「大変貴重で大事な市場」とし、「日本から多くのことを学べると思う。高齢化社会を迎え、他国よりも高齢化で一歩先を行っている。高齢化をどう解決し、技術をどう活用したらいいのか。日本に持ってくることができること、日本から学ぶことができること、双方向のことが学べる」とする。加えて、「デジタル変革がなくてもすべてがきちんとうまく機能している国。どれだけデジタル変革をしなければいけないのかという話になるが、日本の企業に“ちょっと良くなる”ものを提供するだけでは意味がない。『これは良いじゃないか』と思ってもらえる、潜在性を持ったものを提供しなければいけない。それこそがジョイントベンチャーでやること」と説明した。

 関心が高まっているプライバシーの懸念についてティール氏は、「哲学的な原則になるが、プライバシーを尊重しなければいけないと考えており、技術が過度に詮索してはいけない。いまよりももっと多くのことをできるのがテクノロジー。プライバシーを不当に侵さず分析できないといけない」とし、「もしテクノロジーを使わずに同じことをしようとすれば、よりプライバシーを犯さないといけなくなる」とも語った。また、櫻田氏も「(データを)スクリーニングしないほど、ソリューションの価値は上がるが、そこは気をつけないといけない。日本の強みは、現場、実験室、病院、事故、介護施設などのリアルデータ。すべてを殺すと効くかもしれないソリューションを殺してしまう。国が先頭に立って、データ利用のルールを敷いてほしい」。また、「角を矯めて牛を殺すことになる。GDPRや個人情報を意識しつつ、ルールを作って、そのルールに則ってビジネスをするのが大事」と述べた。

 パランティアという社名は、ロード・オブ・ザ・リングに登場する、世界で起きていることを見通せる水晶玉からインスピレーションを得て命名したという。ビッグデータを使い、知識・洞察を引き出していくことをミッションとしている。多くの国内企業が抱えるデータ活用、海外にも通用できるビジネスモデル構築を導く水晶玉となるか期待したいところだ。

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