――BtoCでは、手間がかからず早く契約締結ができる価値、BtoBではプラスアルファで電子化やデータ化が瞬時にできる価値が提供できますね。
ヒアリングをしてみると、店舗側が紙の資料に大変困っていることがわかりました。手書きで書いてもらった来店カードをスタッフがまとめてデータ化するのが大変だと。会社によっては、データベース化して、エクセルなどに転記しているケースもあり、それをもとに電話営業活動などもしていました。
クラウドサイン NOWであれば、そのままデータ化できますし、転記作業などの必要もありません。書いてもらった情報をAIがテキスト化して、顧客システムへの転記まで自動化できます。ここから顧客を抽出して、一括メールなどで追客も可能です。入り口をクラウドサイン NOWにするだけで、売上改善システムにまでつながるようになっています。
――不動産テックは突き詰めればデータが軸。米国では電子契約などがすでに進んでいるためデータ化できますが、日本はアナログの状態なので打ち込む作業が必要なため生産性が違うんですね。クラウドサイン NOWはこの部分を変えていけるサービスですね。
やはり「テクノロジーを使うとこんなに楽」と気づいてもらうことが大事だと思っています。よく、クラウドサインを導入すると、作業時間をどの程度削減できるかと聞かれますが、抽出してメール送信まで一括してできるので、時間コストの面では比べ物になりません。現在の業務をテクノロジーを使うことで劇的に楽になることをアピールしています。
加えて、クラウドサインの導入に踏み切れない人に向け、紙の契約書をクラウドサインに取り込む「クラウドサインSCAN」も用意しています。これは、スキャンからクラウドサイン上への書類情報の入力、データのインポートまでを代行するサービスで、箱に入れて書類を送っていただければ、スキャンした状態でお返しします。
地味な作業ですが、過去の契約をデジタル化することで、現在の状況がひと目でみられるようになるため、機会損失も防げます。例えば来月契約が切れる賃貸の部屋があれば、一括でアラートも出せますし、更新機能もあります。その部分から業務を改善していきたいと思っています。
――確かに不動産の契約書管理は大変ですね。100室単位で売ったり買ったりしていますから契約書がどんどん届く。この部分をデジタル化できると作業効率もかなり向上すると思います。導入企業は不動産以外にどの辺りでしょうか。
最も多いのがIT系で、建設や不動産会社にも浸透しています。そのほかは人材や金融系なども導入が進んでいます。今後踏み込んでいくべきは製造業界ですね。やはりFAX文化が根強く残っている業界は手強いという印象です。
――不動産業界もかなりFAXの割合が高いように感じます。
確かにFAXの使用率は高いですが、オーナーの方とのやりとりだけに使われていたり、全体の業務に占める割合は低下しています。ただクラウドサインは1件あたりの送信費用が200円なので、FAXに比べ、コストだけ比較すると高い。その辺りのコスト意識を超え、業務効率化へのシステム投資としては破格に安いという価値観をどう伝えられるかは今後の課題ですね。
今は、お客様の声を聞きながらサービスを開発していて、機能追加も、同様のスキームで進めていきたいと考えています。ただ今一番多くいただくお声は「早く普及してほしい」ということ。そのため、テレビCMもはじめましたし、三井住友フィナンシャルグループとの合弁会社「SMBCクラウドサイン」も設立しました。ここを入り口に三井住友銀行の営業拠点の方と協力して、日本中に浸透させていきたいと思っています。
こうしたお客様の声をいただきながらサービスを開発できるのは、クラウドサインならではと考えており、ここが競合他社にはない強みだと考えています。
――早く広めてほしいとユーザーから声が上がるサービスもめずらしいですね。今後の取り組みも普及活動がメインでしょうか。
クラウドサインを日本中に浸透させていきたいと考えています。ハンコを使っている国はもはや日本だけになりつつあります。上司や役員のハンコをもらう作業がなくなるだけで激的に生産性はあがるでしょう。デジタルトランスフォーメーションが叫ばれていますが、一番はこの部分の変革だと思っています。
不動産業界においては、賃貸を中心に展開していますが、将来的には売買にもリーチしていきたいと考えており、社会実験も始める計画です。海外展開については、現時点では予定していませんが、可能性はあると思います。
森ビルJリートの投資開発部長として不動産売買とIR業務を統括するとともに、地方拠点Jリートの上場に参画。太陽光パネルメーカーCFO、三菱商事合弁の太陽光ファンド運用会社CEOを歴任。クロージング実績は不動産や太陽光等にて3500億円以上。2016年に不動産テックに関するシステム開発やコンサル事業等を行なうリマールエステートを起業。日本初の不動産テック業界マップを発表するとともに、不動産テックに関するセミナー等を開催するほか、不動産会社やIT企業に対してコンサルティングを実施。自社においても不動産売買支援クラウド「キマール」を展開。2018年、不動産テック協会の代表理事に就任。早稲田大学法学部を卒業後、政治学修士、経営学修士を取得。コロンビア大学院(CIPA)、ニューヨーク大学院(NYUW)にて客員研究員を歴任。
大手システムインテグレーターを経て、2008年より現職。経営学修士(専門職)。IT業界の経験に裏打ちされた視点と、経営の視点の両面から、ITやテクロノジーを軸とした中長期の成長戦略立案・事業戦略立案や新規ビジネス開発、アライアンス支援を得意とする。金融・通信・不動産・物流・エネルギー・ホテルなどの幅広い業界を守備範囲とし、近年は特に不動産テック等のTech系ビジネスやビッグデータ、AI、ロボットなど最新テクノロジー分野に関わるテーマを中心に手掛ける。2018年より一般社団法人不動産テック協会の顧問も務める。
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