ドローン、エアモビリティ、自動運転、xMaaS--「スマートモビリティ」の最前線

 いま日本では、ドローン・エアモビリティの活用が急ピッチで進んでいる。2022年に「レベル4」と呼ばれるドローンの有人地帯における補助者なしの目視外飛行を実現し、翌2023年には「空飛ぶクルマ」の事業開始を目指すという野心的なロードマップも掲げられた。

 そうした中、10月にCEATEC 2019/東京モーターショー2019 リレーカンファレンス Mobility Summitが開催された。CEATECの会期中、千葉・幕張新都心で実証実験が行われた自律走行車両のリアルタイム中継も交えながら、スマートモビリティ社会実装の可能性について5名の登壇者がそれぞれの立場から発表した。

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 まず、千葉市総合政策局 国家戦略特区担当局長の稲生勝義氏が、幕張新都心を中心としたドローン・モビリティによる移動革命の進捗を紹介した。1970年代から開発が始まった幕張新都心。現在では日々23万人が活動している。その半数は来街者だが、海浜幕張駅と目的地施設との単純往復が多く回遊性が低い点は課題だという。

 国家戦略特区の千葉市では、ドローンをはじめとした先端技術の活用が多数進められている。2018年には楽天、三井不動産レジデンシャルと共同で、ドローンと地上配送ロボットを組み合わせた配送の実証実験に成功した。自動運転バスなどにも意欲的で、2019年8月には、ソフトバンク、MONET Technologiesと包括提携協定を締結。シェアサイクルや電動キックボードなどパーソナルモビリティの実証にも積極的だ。

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千葉市総合政策局 国家戦略特区担当局長の稲生勝義氏

 稲生氏は「都市設計の段階からMaaSを組み込む」重要性に言及。今後は、臨海部に物流倉庫が点在し、輸送ルートの大半が海上である同市の立地特性を生かして、中長距離ドローン配送を目指す。2023年には海浜幕張駅と新習志野駅の間に新駅を設置するという予定も発表された。

 千葉市の包括提携協定先であるMONET Technologiesは、トヨタ自動車とソフトバンクが新設した企業。オンデマンドモビリティサービスやデータ解析サービスなどを手がけ、国内シェア8割を占める同社が力を入れているのは、各地の地方自治体と連携した「xMaaS」の実証だ。

MONET Technologies事業推進部部長の上村実氏
MONET Technologies事業推進部部長の上村実氏

 例えば、長野県伊那市での「医療×MaaS」では、医師による診察を遠隔で受けられる移動診察車のサービスを「2019年中にお披露目できる」(上村氏)という。自動運転車両が出てくる2020年代半ばまでに、MONETプラットフォームユーザー向けにデータ、ノウハウ、オペレーションの整備を進める構えだ。

 千葉市のフィールドを活用して自動運転車両の実証をしたのはSBドライブ。月1回以上のペースで実証実験を実施し、試乗者数は1万2491人、走行距離は1万1390kmに達したという。カンファレンス中の自動走行リアルタイム中継では、フランス産の“ハンドルがない車”を走らせた。

SBドライブ代表取締役社長の佐治友基氏
SBドライブ代表取締役社長の佐治友基氏
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自動走行をリアルタイムで中継した

 「現状は既存の法律に当てはめて運用している」(佐治氏)。車内には運転手の代わりに運転責任者を配置。追い越し車両にセンサーが反応して急停車するなどの技術的課題もさることながら、アグレッシブな制度整備も必要だ。

 エアモビリティについて語ったのは、2018年のCEATEC AWARD 経済産業大臣賞をスタートアップとして初めて受賞したエアロネクスト。同社は“鳥と電波しか飛んでいない空域の経済化”をミッションに掲げ、ドローン・エアモビリティの重心制御技術を開発。エアモビリティの新たなコンセプト「空飛ぶゴンドラ」を発表した。

エアロネクスト代表取締役CEOである田路圭輔氏
エアロネクスト代表取締役CEOである田路圭輔氏
「空飛ぶゴンドラ」の試作機
「空飛ぶゴンドラ」の試作機

 スマートモビリティにおいて空の移動革命を担うエアモビリティは不可欠であるとしながらも、同社の代表取締役CEOである田路圭輔氏は、「世界でこれまで発表された150のエアモビリティに関するプロジェクトは、どれもかなり遠くのビジョンばかりを議論している印象。航空機とも自動車とも全く違う空の移動を浸透させるためには、空を安全かつ快適に飛ぶ体験を、観光やエンターテイメント領域で提供することを第一歩と据えるのが現実解では」と疑問を投げかけた。

 伊藤忠総研 産業調査センター主任研究員 Mobility Open Blockchain Initiative(MOBI)Advisorの深尾三四郎氏は、急速に進みつつある「Web3.0」に言及。ユーザーインターフェースが拡張現実へ、コンピューター環境は人工知能へと変わり、ブロックチェーンも再び脚光を浴びつつあると話す。深尾氏は、「2020年4月の法改正でトークンが有価証券として認められるようになれば、日本はブロックチェーン先進国となる」と話し、今後モビリティにおけるブロックチェーンの活用が進むことを示唆した。

伊藤忠総研 産業調査センター主任研究員 Mobility Open Blockchain Initiative(MOBI)Advisorの深尾三四郎氏
伊藤忠総研 産業調査センター主任研究員 Mobility Open Blockchain Initiative(MOBI)Advisorの深尾三四郎氏

 「モビリティ革命は誰のためか。」そんな議論も飛び出した。高齢者だけではなく、交通弱者、輸送弱者はさまざまだ。MONET Technologiesの先行事例のように、自治体ごとにどんなニーズがあるのかをすくい上げ、そのソリューションとしてバリヤフリーかつストレスフリーなモビリティを整備していくことが必要だ。

 また、年間3119万人の訪日客の存在は大きい。特にデジタルネイティブ世代には、シームレスなデジタル体験の提供が満足度向上の肝となるという視点も共有された。千葉市をはじめ地域と連携したスマートモビリティビジネスの可能性は大きく広がっている。

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