ソフトバンクは11月5日、2020年3月期第2四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比6.0%増の2兆3731億円、営業利益は前年同期比6.5%増の5520億円と、増収増益の決算となった。
この決算はヤフーを子会社化した影響を遡上して計算したものとなる。だが同日に開かれた決算説明会で、ソフトバンク代表取締役社長 執行役員 兼 CEOの宮内謙氏は、ヤフーの影響がなくても全ての事業が伸びていると強調。ヤフーの子会社化によって「よりダイバーシティが進み、収益源が多様化した」と話す一方、下期に新規事業などを準備していることから、業績の年間予想は据え置くとしている。
主力の通信事業に関しては、ソフトバンクやワイモバイル、LINEモバイルなどのコンシューマー事業の売上高が、前年同期比3.6%増の1兆3360億円、セグメント利益が前年同期比4.7%増の4016億円と好調を維持。3ブランドによるスマートフォンの累計契約数も、前年同期比で194万件増の2303万件となり、順調に契約数を伸ばしているという。
その一方で、10月から電気通信事業法が改正された影響から、「9月には例年にないインセンティブ競争が起きた」(宮内氏)とのことで、競争上販売手数料や広告宣伝費は増加したという。また10月に入ってからは、そうした競争の反動に加えて消費税も増税したことから、「ワイモバイルの低価格端末は順調だが、ソフトバンクの高価格ブランド品の端末販売は新規が少し減った。流動性が低下している」と宮内氏は現状について説明した。
現在力を入れている法人事業に関しては、売上高が前年同期比4.1%増の3141億円、セグメント利益が前年同期比7.6%増の546円と、こちらも好調に伸びている。特にクラウドやデジタルマーケティングなどのソリューション関連事業が好調で、売上高が前年同期比21%増の784億円に上るとのことだ。
一方で、台風15号・19号によって同社もネットワークに大きな被害を受けたことから、宮内氏は災害対策に関して改めて説明。ネットワークセンターや基地局の停電対策など設備面での備えに加え、台風15号では道路の封鎖などにより迅速な復旧が進められなかった反省を生かし、台風19号では2日前から台風が通過するエリアにネットワーク技術者を送り込んでおくことで、スピーディーな復旧が進められたという。
なお、同社代表取締役副社長 執行役員の宮川潤一氏は、今後に向けた課題として「災害規模が我々の想定を超えたものが続いている。有事の際にも3キャリアで連携していかないといけない」と回答。現在でも現場で物資を譲り合うなどの協力はしているそうだが、今後は災害時に各社のネットワークを相互開放する仕組みについても、検討していくべきだとしている。
また宮内氏は、10月にサービスを開始した楽天モバイルが、ネットワーク整備の遅れでサービス内容が限定的なものとなったことについて、「技術陣は全員知っていた」とコメント。ADSL事業の「Yahoo! BB」や、ボーダフォンの日本法人を買収して展開した携帯電話事業で、ネットワーク整備に長年苦労した歴史を振り返り、「一番コストがかかるのはタワーの建設や基地局サイトの交渉をして作っていくところ。楽天も長い年月をかけて頑張らないといけないのではないか」と話した。
今期より連結化したヤフーの業績は、売上高が前年同期比4.4%増の4841億円、セグメント利益が前年同期比3.0%減の757億円。新たにメディア事業に強みを持つヤフーの営業部門と、ソフトバンクの法人営業によって「ヤフービジネス推進部」を設立しており、データを活用した法人向けのデジタルマーケティングソリューションを提供するほか、ZOZOの連結子会社化や、スマートフォン決済サービス「PayPay」と連携した「PayPayモール」「PayPayフリマ」などでeコマース事業を拡大することによって、成長を推し進めるとしている。
そのPayPayに関しては、累計登録者数が1900万人、「最新の数字では1920万人」(宮内氏)に達しており、決済回数も10月には、前月の倍以上となる約8500万回に達するなど利用が急増しているとのこと。同月に実施された消費税増税や、それを受けて経済産業省が展開している「キャッシュレス・ポイント還元事業」の影響などもあって、「いま爆発的に伸びていて、一人勝ちの状況になりつつある」と宮内氏は自信を見せる。
利用者の拡大を受け、宮内氏は今後PayPayを「スーパーアプリとして育てていきたい」と話す。PayPayには公共料金の支払いや銀行口座への出金など新たな機能が次々と追加されているが、将来的には、少額ローンなどFinTech関連のサービスも提供していきたいという。
また、ソフトバンクはPayPayと同じ新規事業として、合弁で展開しているシェアオフィス事業「WeWork」にも力を入れている。しかし、その合弁先となるWeWork Companiesに不正会計などの問題が発覚して上場が延期され、ソフトバンクグループが追加出資して経営陣を刷新するなど、トラブルが相次いでいる。
宮内氏はこの件について「グローバルのことは言えない」と前置きしつつ、日本の事業に関しては好調に推移していると回答。日本ではすでに6都市・23拠点を設けており、「大半が顧客に待ってもらっている状況だ」と順調さをアピールした。
同様に、合弁で日本での事業展開を始めた「OYO HOTEL」に関しても、合弁先であるインドのOyo Roomsがインドで競争阻害の疑いがあるとして、調査が進められていると報道されている。しかし、宮内氏は、日本では2019年10月23日の正式サービス開始より前にプレサービスを開始しており、すでに全国39都道府県・5200室を超える部屋数を展開。平均稼働率が42%から80%超へと急速に伸びていると説明するなど、こちらも日本での展開が好調に進んでいるとアピールした。
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