「自動化が進むほど、人間の力が試される」--トヨタ社長が語る未来のモビリティ社会

 トヨタ自動車は10月23日、同日開幕した東京モーターショー 2019のトヨタブースでプレスカンファレンスを開催した。同社代表取締役社長の豊田章男氏の登壇に先駆け、ディスプレイに登場したのは、Vチューバーの「モリゾウ」さんだ。モリゾウは、豊田氏がレースに参加するときの名称としても知られている。

Vチューバーの「モリゾウ」さんが登場しスタート
Vチューバーの「モリゾウ」さんが登場しスタート

 「私の表情に合わせて、笑顔になったり驚いたりする。たとえ離れていても、そこに私を感じることできませんか?」と語りかけ、人は大量の情報を瞬時に処理して判断できるからこそ、「いろいろな情報がつながると街も社会も、もちろんクルマも、もっと人中心になっていくはず」と語った。

トヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏
トヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏

 トヨタは同日、レベル4相当の低速自動運転を実現する東京2020オリンピック・パラリンピック仕様の「e-Palette」の詳細を発表。トヨタ初のAutono-MaaS専用EVとしてe-Palette(東京2020仕様)を十数台提供し、選手村内を巡回するバスとして選手や大会関係者の移動をサポートするという。前後対称の箱型デザインにより、タイヤを四隅に配置することで、広い室内空間を確保。色弱者にも配慮し色の明度差をつけた床・内装トリム・シートなど、快適な移動を実現するデザインとしている。乗員は20名、車いすの場合は4名+立ち乗り7名の乗車が可能だ。

トヨタ初のAutono-MaaS専用EV「e-Palette」に乗って登場した
トヨタ初のAutono-MaaS専用EV「e-Palette」に乗って登場した

 豊田氏はe-Paletteに乗って登場し、「ゆくゆくはe-Paletteがオフィスになったり、お店になったり、ホテルになったり、さまざまなサービスに移動していく」と語った。

2020年に発売されるクルマがブース内に1つもない理由

 本来であれば、2020年に発売予定のコンパクトカー「ヤリス」や日本で一般に初公開されるトヨタの次期燃料電池車「MIRAI Concept」、AIや自動運転機能を持つコンセプトカー「LQ」などは目玉としてトヨタブースに展示されるはずだ。しかし、今回のトヨタブースには、2020年に発売予定のクルマは一つもない。キーワードは「PLAY THE FUTURE!」で、2030年の未来に振り切った展示となっている。

トヨタブースでは、ヒューマノイドロボット「T-HR3」がお出迎え。カメラを向けるとピースしてくれる
トヨタブースでは、ヒューマノイドロボット「T-HR3」がお出迎え。カメラを向けるとピースしてくれる

 年々、来場者が減少している中で「東京モーターショーもモデルチェンジが必要」と明言してきた豊田氏。自社ブースも従来から大きく“モデルチェンジ”している。

「e-RACER」。未来の個人のクルマは、このようなスポーツカーに置き換わるか?
「e-RACER」。未来の個人のクルマは、このようなスポーツカーに置き換わるか?

 未来のモビリティにより、クルマは個人が所有するものではなくなるのか──。むしろ、共有するモビリティがあるからこそ、人はよりパーソナルなモビリティを所有することになると語る。かつて、クルマの誕生によって馬がクルマに置き換わったが、競走馬は残ったと例に出し、「皆さんの車庫にあるクルマは、全部このe-RACERのようなスポーツカーになる。馬は人と心を通わせることができる。馬は乗る人にとって、かけがえのない存在。クルマもAIの進化によって、人と心を通わせる存在になり得る。未来のクルマはまた馬のような存在になると思う」と語り、未来のモビリティ社会は、馬車と愛馬が共存する社会になるとした。

空飛ぶ魔法のほうきをモチーフにした「人機一体」モビリティ「TOYOTA e-broom」。ローラースケートのような靴を履いて乗る
空飛ぶ魔法のほうきをモチーフにした「人機一体」モビリティ「TOYOTA e-broom」。ローラースケートのような靴を履いて乗る

自動化社会への不安に対するトヨタのアンサーとは

 昨今の社会は「人工知能」「ロボティクス」など、自動化に向かって急激に進んでいる。「人間がロボットに使われる時代がくるのでは」という不安の声も聞こえるが、こうした時代の変化にトヨタはどうしていくのか。トヨタ生産方式にそのヒントがあると説明した。

急速にIoTや自動化、人工知能、ロボティクス化が進む社会
急速にIoTや自動化、人工知能、ロボティクス化が進む社会

 トヨタのルーツは、豊田佐吉氏が発明した自動織機にある。その発明の最大の特徴は、糸が切れたら自動的に止まること。不良品を出さないということはもちろん、人間を機械の番人にしないという考え方がベースにある。これをトヨタでは、「ニンベンのついた自働化」と呼び、クルマづくりに挑戦した豊田喜―郎氏は、さらに「必要な時に必要なものを必要なだけ作る」という“ジャストインタイム”の考え方を加えた。

 ニンベンのついた自働化とジャストインタイムに共通するのは、人を中心に置くということ。「自動化が進めば進むほど、人間の力が試されることになると思う」とし、「このブースで表現したかったものは、ヒューマンコネクティッド。それは人間同士がつながる社会。人のぬくもりや優しさを感じることができる社会」と説明した。

自働化とジャストインタイムに共通するのは、人を中心に置くということ
自働化とジャストインタイムに共通するのは、人を中心に置くということ

 なお、ヤリスはお台場 VenusFortに展示。また、ミライはMEGA WEBの「FUTURE EXPO」2階に、トヨタ自動車のコンセプトカー「LQ」は1階に展示されている。

ヤリスはお台場 VenusFortに展示。色違いが2箇所にある
ヤリスはお台場 VenusFortに展示。色違いが2箇所にある
 MEGA WEBの「FUTURE EXPO」2階に展示されているトヨタの次期燃料電池車「MIRAI Concept」
MEGA WEBの「FUTURE EXPO」2階に展示されているトヨタの次期燃料電池車「MIRAI Concept」
「FUTURE EXPO」1階にはトヨタ自動車のコンセプトカー「LQ」も展示。AIや自動運転機能を持ち、有機ディスプレイを搭載している。オリンピックで先導車としても導入予定
「FUTURE EXPO」1階にはトヨタ自動車のコンセプトカー「LQ」も展示。AIや自動運転機能を持ち、有機ディスプレイを搭載している。オリンピックで先導車としても導入予定

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