三井不動産とプロトスターが、”大人起業家”の育成に乗り出す。9月25日、日本橋を中心に展開するプロジェクト「“E.A.S.T.”(イースト)構想」の新プロジェクトとして、企業に所属している社会人を対象とした起業家育成コミュニティ「Swing-By(スイングバイ)」を発表。35〜50歳程度をメインに据えた、起業家支援を始める。
“E.A.S.T.”構想は、ベンチャーコミュニティ「StarBurst」を運営するプロトスターと三井不動産のベンチャー共創事業「31VENTURES(サンイチベンチャーズ)」によるプロジェクト。2018年にスタートし、三井不動産も拠点を構える東京・日本橋エリアにおけるベンチャー企業の集積を目標としている。
三井不動産 ベンチャー共創事業部 塩畑友悠氏は「1年間実施してきて、交通利便性に優れ、大企業も数が多い。BtoB事業を手掛けるスタートアップにとって日本橋は好立地という認識が広まった。一方で、日本橋に拠点を置きたい、移転したいと考えるスタートアップに対し、オフィスの供給が足りないという課題がある。今後は、同様の物件を所有する企業と横展開しながら、エリア内にスタートアップを増やしていきたい」と今後について話した。
新プロジェクトとなるSwing-Byは、大企業が多いという日本橋の特性もいかし、「上場企業の中に優秀な人が埋もれている。レガシー産業に対し、内部構造を理解している人が起業できる状態を作る」(プロトスター 栗島祐介氏)を目的にスタート。「45歳以上の起業家は成功率が高い」という米国大学での調査結果も示し、大人世代の起業を促進させる考えだ。
ターゲットに据えるのは、大手企業内での勤務経験を持つ35〜50歳。「対象年齢は25歳以上としており、特定の領域における経験を十数年くらい持っていてほしい。50歳以上の方でもやる気さえあれば全く問題はない。ウェルカムな状態」(栗島氏)とする。
この世代は知識や経験も豊富で、すでに成功を収めている起業家もいるが「収入が安定しない」「家のローンや子供の学費が必要」など、金銭面でハードルが高いことも事実。そうした現状を受け、Swing-Byでは、起業せずにサイドプロジェクトから始め、軌道に乗った際は起業もしくは事業化までを支援する1年間のプログラム「Moonshot Program」と、すでに持っている能力を活かし起業家の仲間となるCxO(Chief x Office)を育成する「AWAKE Program」の2つを用意。
「起業後のリスク」を考え起業を思いとどまることなく、チャレンジしていける環境を整えていくため、起業家が開発したサービス、プロダクトを積極採用する企業が起業経験者との協業を前向きに検討するなどの”Challenger First“の文化を醸成する構えだ。
栗島氏は「大学生の起業家が増えているが、これは隣で勉強したり、遊んだりしている仲間が起業することで『俺にもできる』と考えるため。この流れを大人世代にも作りたい」とし、メンターや起業家が集まる「ディナーミーティング」を設定するなど、交流を促すようなプログラムを組む。
現在、コミュニティ参加者を受け付けており、12月上旬からコミュニティを開始する予定。目標プロジェクト数は10とし、栗島氏は「個人的な目標としては10社のうちで3社くらいは起業家が生まれる状態がいいと思っている。グローバルトレンドが生まれる状態にしたい」と意気込む。参加者の費用負担は基本的になく、プロジェクト自体は起業家と事業会社をつなげたり、支援をしながら収益化していく考えだ。
三井不動産 ベンチャー共創事業部事業グループ統括の光村圭一郎氏は「東京の東で起業したり、オープンイノベーションができるエコシステムを構築していきたい。渋谷を追い抜きたいとは思っておらず、渋谷でも日本橋でも、スタートアップが育つ環境を当たり前にしていくことで、東京の国際競争力を高めたい」とコメントした。
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