「電子契約でない不動産会社は選ばれなくなる」--クラウドサインが描く“印鑑レス”の未来 - (page 2)

 不動産テックの領域は幅広い。クラウドサインのような電子契約のサービス以外にも、代表的なところである「取引仲介」の分野では、米国ではZillow、Opendoor、Redfin、Compassの4社が特に著名とされる。

 川戸氏はこのうちCompassに注目する。同社は高級感を押し出したブランディング、様々な業務支援ツール、充実したITサポート体制、優秀なトップエージェントの囲い込みなどが奏功し、2018年の売上高が1000億円を突破。全米3位の地位を確立している。

 同社が評価を高めたきっかけの1つとして、川戸氏は業務支援ツールの使いやすさを挙げた。その一例として「Compass Collections」は、ユーザーインターフェイスやビジュアル面で優れているだけでなく、買い手とその友人・知人らが複数同時に、チャットでエージェント(仲介代理人)と相談できるなどの特徴を備える。

米国の不動産テック業界の中でも、仲介の分野で名高い4社
米国の不動産テック業界の中でも、仲介の分野で名高い4社

 米国の仲介サービスを深く分析していくと、Compassのように業務支援ツールなどのテックを活用することで、顧客との時間や人間本来のパフォーマンスの最大化を追求したサービスだけでなく、テックを活用することで業務コストを下げ、手数料低減を標榜するサービスも多い。ただ、その双方がほぼ漏れなく採用しているのが電子契約サービスだと川戸氏は指摘。全米不動産協会は「公式電子署名サービスプロバイダー」として、電子契約大手のDocuSignを指定するなど、その浸透ぶりがうかがえる。

 もちろん、日本の不動産市場はここまでのレベルには達していない。橘氏は地方の不動産会社からのヒアリングなども行っているが、「ようやくExcelを導入した」というレベルの企業も見受けられるという。

 「米国での電子契約の普及率は80%とも言われるが、個人の肌感覚としては、日本は恐らく1〜2%。ただ日本も5年以内には取引の半分(にまで電子契約が使われるレベル)にまで行くのでは」(橘氏)

 日本では、例えば東京在住者が大阪の物件を買いたいという時、内見の1回はともかく、契約だけのためだけにもう1度現地へ足を運ばなければならないのが実情。ここへ電子契約が浸透していき、消費者に「1回行くだけで済む」という認識が広がれば、交通費の節約や、契約のためだけに1日空ける必要がなくなるなど、圧倒的なアドバンテージとなる。

 橘氏は、「電子契約に対応していない不動産会社は、消費者から選ばれなくなる。アメリカでは実際にそうなっているし、日本もいずれそうなる」と、対応が急務だと訴えた。

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米国の不動産契約では、電子契約が当たり前になっているという

 電子契約サービスの選定にあたっては、サインをする側(判子を押す側)に、「なんらかの事前登録作業が必要になるか」を1つの基準にすべきと橘氏はアドバイスする。当然、必要としないサービスの方が、利用の面では有利となる。

 また、契約書の送付先をメールだけでなくSMSにも指定できるか(若年世代を中心にメールを使わない層が近年増えているため)、本人確認用の書類をアップロードできるかなど、細かい機能面にも注目してほしいという。一方で、電子契約をせっかく導入しても、社内の担当者が退職してしまい、他の従業員が使いこなせないケースもままあるようだ。クラウドサインではサポート体制作りにも注力しているという。

不動産店の業務そのものを効率化

 同社では、まもなく新サービス「クラウドサインNOW」をリリースする予定。対面申し込みの店舗において、顧客自身による書類記入をiPadなどのタブレット端末から実行可能。顧客側はペンを使い、ほぼ紙の書類と同じ感覚で記入でき、また店舗側にとっては、手書きしてもらった書類を転記する手間無く、ダイレクトに顧客データベースへ登録できる。

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「クラウドサインNOW」の概要。「対面申し込み」に特化したクラウド電子契約(申請書)サービスという位置付け

 不動産店では、記入された紙の書類をデータベースへ転記・登録する作業が大きな負担となっている。このため、せっかく顧客情報を入手しても、顧客の年代や性別といった、ごく基本的な属性情報に基づいたマーケティング分析すら実行できていない現状があるという。また、顧客から見た場合、デジタル化が進んでいないと、アンケート、顧客情報登録、正式契約など異なる場面ごとに何回も個人情報を記載する手間が発生する。こうした状況の解決を狙って、クラウドサインNOWを開発したと橘氏は明かす。

 「スポーツジムのライザップの店舗運営が成功した要因として、Salesforceの活用がよく挙げられる。高単価な商材なので、1回来店した人が必ず契約するとは限らない。だから、どういったセグメントの顧客にアプローチすればよいかをきちっと分析してマーケティングに反映させる(ことで集客を実現)。こうした考えは不動産会社はもちろん、ウェディングや葬儀関連などにも応用できるのではないか」(橘氏)

 不動産の電子契約を巡っては2019年10月、賃貸借契約における「重要事項説明書(重説)」の電磁的交付を認める社会実験がスタートする。これにより、不動産取引にまつわる複数の書類のうち、その全てに電子契約の活用が認められるようになる。橘氏も、これが電子契約を後押しする爆発的要因になるのではないかと期待を示している。

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