分析のための汗の収集は容易ではない。全身の洗浄や吸収パッド、肌に吸着して小さなチューブで汗を収集する「Macroduct」など、いくつかの方法が過去に用いられている。精度や資金、人間が必要に応じて汗をかく方法、収集システムからの汗の漏出などの問題があるため、新世代のセンサー駆動システムが強く待ち望まれている。
汗の収集と分析には従来、時間と手間がかかるため、あまり研究が進んでいない領域となっている。汗センサーの到来とそれによって判明するデータにより、汗をより詳しく調べられるようになる可能性がある。
「実際に詳しく調べたことがある人はいないだろう。これまでは体から正確な量の混じり気のない汗を収集するのがあまり容易ではなかったからだ」と、ノースウェスタン大学で材料科学工学や生体工学を教えるJohn Rogers教授は述べている。同教授は伸縮性のある汗センサーの開発に取り組んでいる。
「生物学のレベルで不確実なことが多くあり、このデバイスはこれらの測定を非常にうまく行うことができ、それについては疑問の余地がない。われわれは、汗の生理学的に関連する範囲でこれらの濃度を数値化することができる。思うに最大の疑問は、汗の化学と血液の化学がどのように関連しているかだ」(Rogers教授)
これまでのところ、汗センサーの最適なあり方についての見解は一致していない。生化学分析に基づいているものもあれば、生体電気分析に基づいているものもある。前者が電解質の濃度の分析のために汗の電気伝導性を計測するのに対し、後者は汗の成分をじかに計測する。情報はマイクロコントローラーでそのまま分析されるか、もしくはNFCやBluetoothなどのワイヤレス標準規格を使って分析用の外部システムに送信される。他のシステムはスマートフォンアプリによってスキャンされるセンサーを使い、汗にさらされた際にセンサーの色がどのように変化するかに応じて電解質の濃度を測定する。
汗の分析には他にも問題がある。汗の成分は人によって異なり、個人でも食べ物などの要素によって変わる可能性があるため、システムは個人特有の汗のパターンに順応する必要がある。
また、技術的な問題もあり、医師や消費者が汗センサーを使用できるようにする前に対処する必要がある。長期的には、汗センシングシステムは可能な限りフレキシブルで伸縮自在で、あらゆる種類の皮膚に利用できるようになる必要がある。
「フレキシブルなデバイスは手首などの単純な曲面に巻き付けることができるが、体のさまざまな部位の力学的形状に合うデバイスを望むなら、曲がるだけでなくソフトで伸縮自在なものが必要だ。これらは、モニタリング用バイオセンサー技術と人体、特に皮膚との間に安定した微小なインターフェースを実現するための、重要な力学的特性だ」と、Rogers教授は述べている。
汗センサーを支える電子工学と材質科学にはまださらなる進歩が必要かもしれないが、自宅でウェアラブルパッチだけを使って医療検査ができるようになる未来は期待できる。さらに、消費者やプロアスリートが全く新しいデータソースに基づいてパフォーマンスを上げることも可能になるかもしれない。そうなれば汗センサー技術は普及が進み、注目する価値のあるものになる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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