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汗センサーはヘルステックの次世代を担う?--自宅で検査できる未来へ

Jo Best (Special to ZDNet.com) 翻訳校正: 編集部2019年09月05日 13時25分
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 猛暑の日や何百人ものVIPの前でスピーチをする場合でない限り、おそらく汗についてあまり考えることはないだろう。汗によってせいぜい迷惑するか、最悪の場合は恥をかくかだ。だが、汗を不快に思うのも終わりになるかもしれない。新世代のセンサー技術により、汗が人間の健康やスポーツのパフォーマンスにまつわる謎の解明に役立つからだ。

 IT企業らと生化学の研究者らは長きにわたって汗の可能性に着目しており、病気の診断などに用いるために体液をモニタリングし解明するセンサーを開発し、アスリートのパフォーマンスの改善に役立てようとしている。人間の汗を分析できるセンサーは10年以上前に開発されているが、センサーの設計と技術における最近の進展により、システムは商用化に向けて急速に進んでいる。

 汗には水分の他に、体内で分泌されるありとあらゆる物質が含まれている。その中には、体臭の原因となる、バクテリアが食べる老廃物も含まれる。それらの物質が、健康状態にかかわらず、体内の仕組みを解明する機会をもたらすのに役立つ。

 スタンフォード大学の研究者らは、Science Advances誌に掲載された汗センサーに関する論文で以下のように述べた。「多くの体液の中で、汗は患者の健康状態に関する相当な量の情報を提供し、簡単に入手できるので、非侵襲型のウェアラブルのバイオセンシング(生体計測)に適している。汗には重要な電解質、代謝産物、アミノ酸、タンパク質、ホルモンが含まれているため、代謝性疾患や生理的状態、中毒レベルなどのモニタリングが可能になる」

 フレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクス(FHE)製造コンソーシアムのNextflexとGE Global Researchは、汗の量や成分を追跡することによって脱水症をモニタリングするセンサーの開発に取り組んでいる。「人間が汗をかく度合いと汗の濃度を同時に追跡できたら、われわれは体の水分状態がどのようなものかを実際に計測し始めることができる」と、Nextflexの戦略プログラムディレクターのScott Miller氏は述べている。

 このシステムは、米空軍の士官候補生を対象にテストが行われており、訓練中の水分状態を追跡している。「こうしたエンドユーザーと現場でやり取りするたびに、多くの興奮と新たな知識を得た。このケースでは、ある士官候補生から非常に好意的な反応があり、このデバイスを使うことの快適さと安心について述べてくれた。また、貴重な情報を収集したことにより、トライアルの後に作った新たなプロトタイプの性能を向上させることができた」と、GE Global Researchの主任研究者のAzar Alizadeh氏は述べた。

 汗センサーは身体的な健康以外にも役立つ可能性がある。スタンフォード大学のチームは、汗に含まれている「ストレスホルモン」として知られるコルチゾールを計測できるセンサーを開発した。そのようなセンサーは将来的にストレスのモニタリングに役立つ可能性を秘めているが、短期的に見ると、アジソン病クッシング症候群などのコルチゾールの濃度が低すぎることや高すぎることによる疾患の追跡に利用できる可能性が高い。

 汗センシングの医学的応用はすでに研究されている。例えば、糖尿病患者は血糖値を測らなければならない場合があり、指に針を刺して少量の血液を採血し、小型のモニターを使って血糖値を測定する。その侵襲的検査をバックグラウンドセンシングに置き換えることにより、糖尿病患者が自ら血糖値を測る負担が軽減される可能性があり、汗のモニタリングが1つの代替手段として検討されている。その例として、スタンフォード大学のチームは、3D印刷したフレキシブルなグルコース用バイオセンサーを開発した。このセンサーは汗の糖値をモニタリングするためのウェアラブルシステムに組み込むことができる。

 特定の病気の治療に対する反応のモニタリングと同様に、汗センサーは今後、嚢胞性線維症などの症状の診断の改善に利用できる可能性がある。嚢胞性線維症は寿命の短縮につながる遺伝性疾患で、すでに汗検査を通じて診断されている。だがこの検査は時間がかかり、結果が出るのに数日を要するため、手順がスムーズではない。従来の汗検査は、疾患の兆候として汗中の塩化物イオンの濃度を計測する。センサーベースの検査は同じ原理を用いるが、実施がはるかに容易で、結果を即時に出せる可能性がある。

 血液の分析は、人間の体内のさまざまな物質の濃度を計測する主要な医療手段だが、血液から分かることには限界がある。血液の分析により体の機能を断片的に知ることはできるが、分析に時間がかかり、採取には痛みが伴う。汗センシングにより、医師は採血で得られる1度限りの情報ではなく、電解質の濃度が1日のうちにどのように変化するかといったデータをより長期的に収集できるようになる。汗の分析に必要な電子機器は着実に小型化しているため、データ分析はリアルタイムに手首でできる可能性がある。

 ではなぜ汗の分析は医療においてそれほど普及していないのか。

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