NTT Comとフィラメントが挑む新規事業創出プログラム「BI Challenge」 - (page 2)

別井貴志 (編集部) 阿久津良和2019年08月19日 07時00分

――失礼ですが、個人的にはNTTコミュニケーションズが新規事業創出に積極的に取り組む姿勢をお持ちだったことが不思議です。社員全員が前のめりだとは言いませんが、約20のチームがプロジェクトとして動いていることは驚きを隠せません。

渡辺氏:私も一番驚いている点です。(新規事業創出の)制度があっても取り組む人がいなければ意味はありません。その点でNTTコミュニケーションズは特異な例ですね。

大貫氏:確かに10年ほど前はコスト削減を重視した時代がありました。ただ、コスト削減に走ると(従業員の)気持ちも事業も小さくなり、優秀な人材が流出しかねません。20年前にNTTが再編成したときも、NTTコミュニケーションズは東西のような規制もなく、新規事業を生み出すところからスタートしました。私と同年代の社員も新規事業好きで、その下にいる若手も含め新規事業好きが集まっています。もちろん既存事業にもしっかりと取り組みますが、皆を驚かせるような事業に取り組もうという雰囲気はありますね。

佐藤氏:本来のDNAですかね。

大貫氏:そうですね。この1年は各種プログラムの立ち上げなど一気に進めてきましたが、これからは継続的な事業化や尽きることないアイデア創出など、継続性を問われるフェーズかと考えます。

――BI Challengeの仕組みをもう少しお聞かせください。20チームが生まれるまでの精査はどのように行われましたか。

大貫氏:資料などでのアイデア確認と面談の2つです。新規性や事業性などを鑑みつつ、取り組むメンバーが新規事業開発の本質を理解しているか、ピボット(路線変更)できそうか、今回のアイデアがNGでも次に挑戦できるかなどを重視しています。今回のドラフト候補生への呼び掛けでは、30弱の応募があり、7チームを選定しました。DigiCom参加が100数十チームですから少なく見えるかもしれませんが、説明会冒頭の講演にて角さんが「新規事業創出に必要なマインドなどを持ってない人は募集しないで」と述べたので、熱量の少ない人は引いたかもしれません(笑)。

佐藤氏:皆さん勉強熱心で事前に(新規事業創出に関して)学んでいらっしゃいます。質問も鋭いのですが、なかには“フレームワークマニア”のようなひともいて、「――のフレームワークと違う」といわれるケースもありました。それよりも、ふつふつと湧き出る熱量やピボットに耐えうる柔軟な思考を持ち、NTTコミュニケーションズというブランドとインフラを使って、スタートアップよりも素早く取り組めるという考え方を持った人の方がマッチします。フレームワークも重要ですが大事なのは思いですね。

大貫氏:フレームワークは読み書き・そろばんのようなもの。気持ちがこもっていれば勉強するのは当然です。その上で柔軟性や熱量、事業計画などを両輪として持たなければなりません。

――ビジネスイノベーション推進室が今後目指す方向性をお聞かせください。

大貫氏:現在は中核に既存事業があり、新規事業は外縁部に位置していますが、私としては、1つ先を上を目指し、明確に0→1(ゼロイチ)の役割を果たし、1→10の段階にて事業部などにしっかりじっくりとバトンを渡すことを強化したいですね、そのためには、新規事業もしっかり理解している事業部の中核にいる20~30年選手と連携がキーであると考えています。そしてこれを“BI Challenge Advance”とし、企業本丸として取り組みたいですね。

佐藤氏:僕もベテラン勢に含まれるので、NTTコミュニケーションズのベテラン勢が活躍できるプロセスが生まれるといいですね。

渡辺氏:ミクロ的視点ですが、BI Challengeを運営している事務局自ら新規事業を創出していることが特徴的です。この経験がないと斜に構えるフレームワークマニアの運営事務局になってしまいます。自分自身も、他のBI Challenge参加者に負けないよう、成長にどん欲になり、新規ビジネスを成功させると共に、参加者からも頼られるチームへ成長し続けたいと思います。

佐藤氏:参加チームの皆さんもリーダー1人の後を付いてくるのではなく、うまく回っているチームほど、全員が役割を認識して取り組んでいますね。

大貫氏:若手もいずれベテラン勢になるので、NTTコミュニケーションズには道筋があり、多様な取り組みが可能であることを示せば、企業強化にもつながります。創立30周年を迎える時代には、BI Challenge Advanceのような仕組みが当然になってほしいですね。

――最後の質問です。新規事業を作る上でもっとも重要なことは何でしょうか。

渡辺氏:やる気があった上での経験ですね。僕のような平凡な人間は読書だけではなく、失敗を重ねた経験が(新規事業創出に)生かされます。NTTコムウェア時代も1年間自由にやらせていただきましたが、今でも当時を思い返してどうすれば成功できたかを考えることが少なくありません。泥臭いですが、知識だけではなく失敗の経験が必要だと思います。

大貫氏:やはりリーン・スタートアップを中核に沿えて、デザイン思考、アジャイルな開発の三位一体を基礎とすべきだと。人材に置き換えれば中核はビジネスプランナー、そしてCX/UXデザイナーとアジャイルが分かるエンジニア。これを回せるメンバー/チームが揃っていることが新規事業の基本だと考えます。このメンバー/チームをコーディネートするのが当方のようなプロデューサーであり、これに、法務、知財、広報担当なども参加し新規事業チームを支える。これが必要だと私は信じています。

――同じく佐藤さんには違う角度から質問させてください。新規事業創出を生み出す人はどんな人でしょうか。

佐藤氏:僕は転んでも、転んでも立ち上がれる“失敗を受け入れられる人”だと考えます。失敗は大きな学びを得る体験です。転んでもピボットを重ねられるのが新規事業を生み出せる人だと思っています。一発で成功することはあり得ません。失敗を自身の糧として成長し、周りに知見をアウトプットする波及効果を持った人が理想的です。今回のメンタリングでも数チームにNGを出してきました。それは這い上がってほしいからです。早く失敗するのが重要ですね。

3人とも「フレームワークは重要だが大事なのは思い。柔軟性や熱量、事業計画などを両輪として持たなければならない」という信念を持ってプロジェクトを進めている。
3人とも「フレームワークは重要だが大事なのは思い。柔軟性や熱量、事業計画などを両輪として持たなければならない」という信念を持ってプロジェクトを進めている。

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